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現役サラリーマンのスキルアップのための読書まとめ

日本人というリスク 橘 玲

『日本人というリスク』(橘 玲*1講談社,2013年5月1日)を読了。

日本人に生まれてきたことを誇りと思うのではなく,日本人ということはリスクであるという衝撃的なタイトル。

会社は社員を守らない,国家は国民を守らない,リスクをすべて押しつけられた個人は,この斜陽の国でいかに生きるべきなのか――,がテーマ。

新型コロナウイルス感染拡大で露呈した日本の弱みは多い。日本人の弱みを捉えておけば,グローバルで戦うことを諦め,日本では十分に立ち回れると思う。

「資本主義」とは,複利レバレッジによってバランスシートを拡張していく運動(位置 No. 347)

資本主義の社会に生きているからには,複利レバレッジをうまく活用しよう。

私たちがこの世界で生きるために富を獲得する方法は,次のふたつしかありません。(位置 No. 619)

  1. 人的資本を労働市場に投資して,労賃を得る。
  2. 金融資本を金融市場に投資して,利子・配当や譲渡益を得る。

1. を実践している人は多いが,2. を実践していない人が多い。

金融資本を金融市場に投入しないことによる機会損失は,非常に大きい。

総量規制は,「日本人は金銭の自己管理すらできない愚かな民族だ」ということを世界に公言するものですが,”自虐史観” を批判する愛国者はいくらでもいますが,この "自虐政策" に反対するひとはなぜかほとんどいません。(位置 No. 909)

金銭の自己管理すらできない日本人は,世界から取り残されてしまうのではなかろうか。

株式投資がプラスサムなのは,ひとびとの「すこしでもゆたかになりたい」という欲望によって市場が拡大していくからです。私たちは,いちど手にした生活水準を手放したくないと強く思うので,市場には強固な下方硬直性があります。すなわち,いったん拡大した市場はめったなことでは縮小しません。(位置 No. 1001)

2021年5月時点においても,市場は拡大し続けている。ただし,その市場の拡大はリアルが牽引しているのではなく,バーチャルが牽引しているように思う。

とりわけ高齢者は,円預金と年金以外に生きていく術がないのですから,それが価値を失う恐怖はとてつもないものがあります。そのため彼らは既得権を守ろうと必死になりますが,それによって政府の財政健全化計画は頓挫し,ますます国家破産のリスクが高くなるという悪循環が起きています。(位置 No. 1432)

既得権を守ろうとすればするほど,悪循環が起きるのであれば,既得権の価値を低下させてしまえばよいのではないだろうか。その一つの方法が,インフレへの転換か。

私たちはさまざまな才能(知能)を遺伝として受け継いで生まれてきます。しかし「知識社会」では,そのなかで高く評価されるのは言語的知能と論理数学的知能だけで,音楽的知能や身体運動的知能は飛び抜けて秀でていなければ市場価値は持ちません。(位置 No. 1698)

言語的知能と論理数学的知能は,少しずつでもよいので,伸ばしく努力を続けよう。

自分と家族の生活を守ることができる最低限の金融資本を持つことを,「経済的独立」というます。アメリカのフィナンシャルプランニングの本は,このような例を挙げて経済的独立の大切さを説くものばかりです。そこにあるのは,「経済的な基盤なくしては自由は手に入らない」という徹底したリアリズムです。(位置 No. 1814)

私は自分の生活を守ることができる最低限の金融資本を持っているから,自由を手にしていると言える。

私がこころから残念に思うのは,この 20 年間,日本政府がどうでもいいことに資金を垂れ流し,莫大な債務を積み重ね,いちばん大事なときに財政に余裕がなくなってしまったことです。国家の債務は公共事業や社会保障費として(平等ではないとしても)国民に配られたのですから,これは私たち一人ひとりの責任でもあります。(位置 No. 2279)

2020年からの新型コロナウイルス対策にも,日本政府や地方自治体はお金を垂れ流している。そんなお金の垂れ流しを見ていると,日本という国に,自分の将来の生活を託そうという気になれない。

しかし,日本人である以上,いくら泥船の日本であっても下船することは許されず,泥船の中でうまく立ち回る方法を模索していくしかない。

日本人というリスク (講談社+α文庫)

日本人というリスク (講談社+α文庫)

  • 作者:橘玲
  • 発売日: 2013/05/02
  • メディア: Kindle
 

更新履歴

  • 2021年5月7日 新規作成
  • 2021年10月16日 加除修正
  • 2022年3月16日 前書きを追加

*1:1959年生まれ。日本の男性作家。早稲田大学第一文学部卒業。