Masassiah Blog

現役サラリーマンのスキルアップのための読書まとめ

ザ・グリッド 次の「打ち手」を決める意思決定のフレームワーク

『ザ・グリッド 次の「打ち手」を決める意思決定のフレームワーク』(マット・ワトキンソン,ダイレクト出版,2022年2月10日)を読了した。本稿では,意思決定に関する重要な示唆を整理する。

よりよい決断を下すためのフレームワーク

本書の狙いは,目標が何であれ,その達成に向けてよりよい決断を下せるように,あなたを導くことにある。(p. 1 - 2)

本書は,意思決定の質を高めるための体系的なフレームワークを提示している。よりよい決断を下すためには,状況を構造化し,判断の基準を明確にすることが不可欠である。

ビジネスを「全体として」捉える重要性

意志決定者がビジネスを全体としてとらえることができ,同時に全体としての成功につながる行動を特定できるものでなければならない。(p. 9)

ビジネスを部分的に見るのではなく,全体として捉えることで,今取るべき行動が明確になる。局所最適ではなく,全体最適を志向する姿勢が意思決定者には求められる。

権力は「他者に目を向ける」ことで得られる

権力とは,他者に目を向けることによって得られるものであり,維持できるものである。権力が与えられるのは,他者の生活を向上し,社会に貢献した人である。(p. 207)

権力は自己中心的な行動によって得られるものではない。他者の生活を向上させ,社会に貢献することで初めて得られ,維持されるものである。意思決定者としての姿勢を考えるうえで重要な視点である。

 

マッキンゼーが予測する未来 ―― 近未来のビジネスは,4 つの力に支配されている

『マッキンゼーが予測する未来 ―― 近未来のビジネスは,4 つの力に支配されている』(リチャード・ドッブス,ジェームズ・マニーカ,ジョナサン・ウーツェル 著,吉良直人 訳,ダイヤモンド社,2017年1月26日)を読了した。

本稿では,印象に残った論点と電力業界との関連について整理する。

変化への対応を阻む「慣性」とバイアス

人類の持つ工夫力,発明力,想像力のすべてをもってしても,変化への対応が遅くなる傾向が私たちにはある。行動経済学者は「リーセンシー・バイアス(最近の事象を重視する傾向)や「アンカリング」(自身の経験に引きずられる)といった用語で説明し,物理学者は「慣性」の強力な力を原因に指摘する。(p. 27)

電力業界においても,変化への対応が十分であるとは言い難い。リーセンシー・バイアスやアンカリングによって,組織としての慣性が強く働いている可能性がある。

今後 10 年で巨大な破壊力を示す 12 の技術

以下に示す 12 の技術は,今後 10 年の間に巨大な破壊力を示す可能性が高い。(p. 74)

  1. 次世代のゲノム科学
  2. 新素材の開発
  3. エネルギーの貯蔵
  4. 石油とガスの採掘,回収技術の進歩
  5. 再生可能エネルギー
  6. ロボット工学の進展
  7. 自律的あるいは自律的に近い自動車
  8. 3-D プリンティング
  9. 携帯機器によるインターネット
  10. IoT : モノのインターネット
  11. クラウド技術
  12. 知識作業のオートメーション化

2017 年時点の予測であるが,現代でも十分に通用する内容である。特に,AI の巨大な破壊力を当時どこまで予見できていたかは興味深い。

データ爆発と生成 AI の登場

「今後 5 年間に全人類は,過去 5 千年の間に生み出したデータよりも多量のデータを生み出すだろう」と,マイクロソフトの製品管理シニア・ディレクターであるイーロン・ケリーは述べている。(p. 77)

実際に膨大なデータが生成され,その結果として生成 AI が登場した。データ量の爆発が,新たな技術革新を生み出す典型例である。

新しい製品やサービスを生み出す難しさ

マーケティング,製品,サービスをテーラーメイドのものに変えていくだけではなく,企業や組織機構はイノベーションを追求し,まったく新しい製品やサービスを思いつくことが必要である。スティーブ・ジョブズがかつて語った,「消費者には,自分が何が欲しかったのか,私が現物を見せるまでわかっていなかった」という有名な言葉がある。(p. 133)

まったく新しい製品やサービスを思いつくことは容易ではない。しかし,企業はイノベーションを追求し続ける必要がある。

新興国市場で勝つ企業の 4 つの傾向

こうした尋常ではない多様化した新興国市場での競争に勝てる企業には,共通した次の 4 つの傾向がある。(p. 184)

  • 次の成長機会を考えるときに,国や地方といった大まかな単位ではなく,もっと詳細な都市や都市の集積で考え,それに従って資本や人材の再配分を行う。
  • 現地の好みやニーズに合わせて製品と価格設定をカスタマイズし,速く低コストのサプライチェーンを築き,さらにコスト競争力があって幅広い層にアピールする価格帯をカバーできるよう,ビジネスモデルの革新を図る。
  • 市場にいたる複数の販売ルートを設計し,コントロールし,それに沿ってブランド,マーケティング,および販売戦略を再考する。
  • 組織機構,人材戦略,事業運営の慣行を,新興国を重点市場とするシフトを反映させて,全面的に変更する。

私の勤める企業には当てはまらない傾向である。すなわち,新興国市場で競争する姿勢を持っていない。

再生可能エネルギーの競争力向上

20 世紀後半のほとんどの期間,再生可能エネルギーは贅沢な高級品であり,既存の発電技術に比べて競争力がないと考えられてきた。ところが,グローバリゼーション,技術革新,それに規模拡大のもたらした増幅効果により,こうした算術が成り立たなくなっており,いくつかの例では再生可能エネルギーの有効性が決定的となっている。(p. 230)

再生可能エネルギーの発電量が増えることで,燃料費は削減できているはずである。しかし,設備投資に見合う削減効果があるかは慎重に見極める必要がある。

ダッシュボード公開がもたらす透明性

一般大衆の誰もが見ることのできる,リアルタイムでの実績の進捗状況を示す「ダッシュボード」を公開することには,透明性を確立し,公共サービスをどのように改善すればよいのかという市民の会話を促進する大きな効果がある。(p. 342)

ダッシュボードの公開は,市民の理解を深めるだけでなく,為政者自身の気づきにもつながる。透明性は,組織運営の改善に不可欠である。

さいはての彼女

『さいはての彼女』(原田マハ,KADOKAWA,平成25年2月25日)を読了した。本稿では,心に残った言葉とその背景について整理する。

最悪の事態に直面したときの「一時間後の自分」

最悪の事態に直面したとき,一時間後に立ち直っている自分を想像できるか。それができる人は,一年後,十年後,必ず成功する人です。

昨日の講演会で,そういうふうにビジネス哲学を披露したんだ。(位置 No. 107)

最悪の事態に直面しても,「一時間後には立ち直っている」と思えるなら,人は前に進める。この言葉は,作品全体を貫くテーマのひとつである。

父親が娘に伝えた「線を越える」教え

ナギ。そんな「線」は,どこにもない。もしあるとしたら,それは耳が聞こえる人たちが引いた「線」じゃない。お前が勝手に引いた「線」なんだ。

いいか,ナギ。そんなもん,越えていけ。どんどん越えていくんだ。越えていくために,父さんがいいことを教えてやる。(位置 No. 577)

耳の聞こえない娘に対して,父親が語りかける場面である。
「線」は他者が引いたものではなく,自分が勝手に設けた制限であるという指摘に強く心を動かされた。

ビジネス哲学の伏線回収

最悪の事態に直面したとき,一時間後に立ち直っている自分を想像できるか。それができる人は,一年後,十年後,必ず成功する人です。

ナギは,まさしくそういう人だった。(位置 No. 635)

冒頭で語られたビジネス哲学が,物語の後半でナギの姿を通して回収される。
作品としての構成が巧みである。

人生は調子の良いときほど危うい

思ったとおりに人生を生きていける人間が,いったいこの世の中にどのくらい存在するだろうか。そして,なぜ自分はそのごく限られた中のひとりなんだと信じることができたのだろうか。

振り返ってみると,人間という生き物は,調子のいいときには調子のいいこと以外,まったく考えないものだとわかる。ほんのささいな出来事をきっかけに,うまくいっていたすべてのことが,ドミノ倒しのように連鎖して反対側に倒れていくことなど,ちらりとも想像できないのだから。(位置 No. 760)

人生は,ちょっとしたきっかけでうまくいかない方向へ傾くことがある。その危うさを意識しておくことが大切である。

目の前の 50 メートルを駆け抜ける

人生の成功者と言われなくても,目の前の 50 メートルを全力で駆け抜けるのだって,十分気持ちいいじゃないか。

そんなふうに思えるようになった。

まだまだ遠くにあった 40 歳も,気がつけば目前に迫る。それはそれとして,とりあえず,もう少し。

人生を,もっと足掻こう。

ナガラの誘い文句は,私の胸にいつまでも心地よい和音を残した。あの日のメールの,最後にひょこっと添えられていたひと言。

あれからずっと,私のささやかな人生を照らす,微かな,けれどあたたかな明かりになっている。(位置 No. 847)

周囲の目を気にせず,自分が気持ちよく走れる方向へ進むことの大切さを感じた。

人生の「午後三時」を旅する感覚

人生の真昼と黄昏を,それぞれに,笑って旅している。

私はひとり,座席の肘掛けに頬杖を突いて,人生の真昼でもなく黄昏でもない,けだるい午後三時あたりを,いまこうして旅している。(位置 No. 953)

人生を一日に例えるなら,私自身も「けだるい午後三時」を旅しているのかもしれない。
その曖昧で,どこか落ち着かない時間帯をどう過ごすかが,人生の味わいになる。

大それたことも,誰かの想像から始まる

「どんな大それたことでも,誰かがそう考えるところから始まるんじゃないかな」

天羽さんは微笑して言った。

「おんなじですよ,このサンクチュアリだって。この世から消えかけた風景を残そうと,立ち上がった個人がいた。それが大きなうねりになったんですから」(位置 No. 1654)

大きなことも,最初は誰かの「そう考えるところ」から始まる。
その一歩が,やがて大きなうねりになるのだ。

お客が集まるオンライン・コンテンツの作り方

『お客が集まるオンライン・コンテンツの作り方』(アン・ハンドリー,C. C. チャップマン,ダイレクト出版,2013年9月25日)を読了した。

オンライン・コンテンツ作成の 11 のルール

11 のシンプルなルール(p. 38 - 44)

  1. 自分が出版社であることを受け入れる。
  2. 洞察が独創性を刺激する。
  3. 行動を促す。
  4. 人間らしい言葉で語る。
  5. 再利用ではなく再発想する。
  6. 共有か解決か。売り込みはしない。
  7. 言葉だけでなく,具体的に見せる。
  8. 予想外のことをする。
  9. キャンプファイアーの火は絶やさない。
  10. 翼と根っこを与える。
  11. 自分の強みを生かす。

オンライン・コンテンツを作るための基本原則として,この 11 のルールを知っておきたい。

「1-7-30-4-2-1」発行スケジュールの考え方

ワシントン州ラングレーに拠点を置くフュージョンスパーク メディア社のラッセル・スパークマンは,彼が「1-7-30-4-2-1」と呼ぶ発行スケジュールを提案している。(p. 98)

毎日,毎週,毎月,四半期ごと,半年に 1 回,年 1 回というリズムでコンテンツを制作することを勧めている。具体例が示されており,実践的で参考になる。

コンテンツ・クリエイターに求められる 6 つの資質

少しばかり売り込みのセンスも持ったジャーナリストやコンテンツ・クリエイターの資質(p. 132 - 133)

  1. ストーリーに鼻がきく。
  2. デジタルの知識。
  3. アマチュアの情熱。
  4. 売り込みもできる社交家。
  5. 偏見がない。
  6. ADOS*1

これらの資質を身につけることで,より魅力的なコンテンツを生み出せるようになるはずである。

ブログを書くための 12 のガイドライン

ブログを書くための 12 のガイドライン(p. 203 - 204)

  1. 目的を決める。
  2. 実行可能なスケジュールを設定する。
  3. 変化を持たせる。
  4. 文章以外の要素も含める。
  5. 長さにも留意する。
  6. 読者を引きつける見出しのつけ方を学ぶ。
  7. デザインを重視する。
  8. 読者に行動を促す。
  9. コメントの承認機能を考慮する。
  10. すべてのものを分類しタグ付けする。
  11. 話し言葉で書く。
  12. 考えすぎない。

マンネリ化しつつある自分のブログに,このガイドラインを取り入れてみたい。

プレゼン資料は脚本から作る

クリフ・アトキンソンは『Beyond Bullet Points(仮邦題 : 箇条書きを超えて)』の中で,「キーポイントや論理的な流れを考える前にパワーポイントのプレゼンテーションを作り始めるのは,映画監督が脚本を手にする前に俳優を雇って撮影を始めるようなものだ」と書いている。(p. 224)

プレゼン資料を作成するときは,まず脚本を作り,その後にパワーポイントを立ち上げるべきである。

コンテンツ作りで盗める 6 つのアイデア

ここから,あなたが盗めるアイデア(p. 318 - 319)

  • 集中,集中,集中,(とにかく集中)。
  • 訪問者が理解する言葉で優れたコンテンツを作る。
  • コンテンツを自由に解き放つ。
  • 自分をエキスパートと呼ぶことを恐れない。
  • 量より質。
  • 忍耐心を持つ。

コンテンツを作るときは,普段の自分ではない自分を解き放ち,質を重視して取り組みたい。

 

*1:これは「あれこれ目移り (Attention Deficit) ……おお (Ohh),輝けるものよ (Shiny!)」を意味する。

日産自動車極秘ファイル2300枚 「絶対的権力者」と戦ったある課長の死闘7年間

『日産自動車極秘ファイル2300枚 「絶対的権力者」と戦ったある課長の死闘7年間』(川勝宣昭,プレシデント社,2018年12月24日)を読了した。

労組の首領「塩路天皇」との戦い

当時,40 歳前後で,日産自動車広報室の課長職にあったわたしは,仲間の課長たちとともに,日産に君臨する「塩路天皇」と呼ばれた労組の首領と熾烈な戦いを続けていた。

その名を塩路一郎といった。日産を中心に系列部品メーカー,販売会社の労働組合を束ねた大組織である日本自動車産業労働組合連合会(自動車労連)の会長の職にあった。(p. 11)

労組の首領と呼ばれる存在は,今後も生まれてくるのだろうか。

ゴーンの言葉はなぜ嘘になったのか

カルロス・ゴーンが日産の新しい主人として着任する。発した言葉は,次のようなものだった。

「どれだけの犠牲が必要か,痛いほどわかっている。私はルノーのためではなく,日産のために来た」(p. 13)

カルロス・ゴーンが発したこの言葉は,いつしか嘘になってしまった。

「組合は会社以上に会社のことを考えている」というおごり

「組合は会社以上に会社のことを考えている」とは塩路一郎の組合至上主義の常套文句であり,ゆえに「組合に反対するものは会社の敵である」と見なすと。(p. 32)

「組合は会社以上に会社のことを考えている」というのは,おごりとしか思えない。

川又社長が残した負の遺産

社長在任中,日産は高度経済成長期のモータリゼーションの波に乗り,大きく発展した。そのため,川又社長は「中興の祖」と讃えられ,長期にわたりトップの座に就き,経営陣のなかでは圧倒的な発言力を有したことから,「川又天皇」とも呼ばれた。社長就任五年目に神奈川県横須賀市に追浜工場が新設されたときには,構内に銅像が建てられたほどだ。

川又社長は確かに日産の発展に貢献したが,次の世代に残した "負の遺産" も大きかった。労使協調の行き過ぎで,労組による事前協議の既得権化とその自己増殖を許し,経営への介入を許容してしまったことだ。(p. 49)

川又社長時代,労使協調によって成しえたこともあったが,結果として労働組合の力を増すことにつながった。

トヨタ・ホンダ・日産の企業理念の違い

トヨタは企業理念に「よい品よい考」を謳い,効率至上経営を標榜していたし,後に世界的に有名となる「かんばん方式」の原型をつくりつつあった。二輪から四輪への脱皮を目指すホンダは,本田宗一郎のリーダーシップのもと,開発型企業の企業カルチャーを目指し,「技術の前に上下なし」をスローガンに掲げた。

対する日産は,どうだったか。(p. 68 - 69)

これらの理念が,今日のトヨタ,ホンダ,日産の姿に繋がっている。

マルクス主義を掲げる労組の論理

マルクス主義を標榜する労組は,「労働者を裏切って管理職になった連中がその作業を行うのは当然だ」と勝手な論理をかざした。(p. 143)

マルクス主義を標榜する労組がある中では,管理職にはなりたくないと思ってしまう。

「鉄サビ」を除去するのは内部の人間である

錆は鉄より生じて,やがて鉄そのものを滅ぼす――といいます。

日産という企業内に生じた塩路会長という鉄サビは,我々日産人が除去しなければ,誰も取り除いてくれないのです。

そのことを肝に銘じて,明日から,生産現場に向かおうではありません。(p. 157)

日産人の心を動かした檄文である。

現場の部課長が担うべき業務

会社が会社としてやるべきことを会社の意志で(組合の同意なしで)行える体制を実現すること。又,これにより,現状の労使関係を少なくとも正常と呼べる状況に再構築すること。

現状の労使関係が会社の発展を著しく阻害していることから,少なくとも,現場の部課長をはじめとする会社の組織が整々粛々と業務(人事異動,任命,業務改善,生産遂行,原価低減等)を遂行できる体制だけは早急に実現させる必要がある。(p. 209)

現場の部課長の業務は,人事異動,任命,業務改善,生産遂行,原価低減等である。これは今日でも変わらない。

顧客志向に徹した会社への転換はできたのか

日産の体質をもっとも知悉しているマル労のメンバーで再度プロジェクトを組んで知恵を出し合い,プログラムの骨子をつくり上げた。

その第一のポイントは,「効率至上主義のトヨタとも,開発型企業のホンダとも違う,顧客志向に徹した会社に生まれ変わる」というものだった。顧客志向の欠如が日産のもっとも悪しき体質の一つだったからだ。(p. 257 -258)

果たして,日産は顧客志向に徹した会社に生まれ変われただろうか。

日産は「餓死した貴族」だった

領地をたくさんもっているが,ひどく困窮している貴族がいた。領地から上がってくる利益はわずかにもかかわらず,貴族であるがゆえに領地を手放すことができず,もち続けた。そして,最後は餓死してしまった。餓死した貴族が日産だった。

日産の経営者たちは,その貴族と同じように,やるべきことをやらなかった。そして,ルノーから来たゴーンが,それをやってのけたのだった。(p. 272)

ゴーンは外部から来たからこそ,しがらみなく改革を断行できたという一面はある。

塩路一郎の権力が続いていたらどうなっていたか

もし,塩路一郎が強大な権力を握ったまま,経営を壟断し続けていたら,日産はもっと早い段階で重大な局面を迎えていただろう。久米,辻,塙という戦わない経営者のもとでは,特異な労使関係は温存された可能性は高いので,生産性でも,開発力でも他社に圧倒的な遅れをとり,早晩,激しいグローバル競争のなかでは,淘汰されていただろう。(p. 277)

塩路一郎の権力がなくなって数十年,日産は激しいグローバル競争のなかで淘汰されそうになっている。

[rakuten:book:19402683:detail]

 

画狂老人卍 葛飾北斎の数奇なる日乗

『画狂老人卍 葛飾北斎の数奇なる日乗』(白蔵盈太,文芸社,2022年5月1日)を読了した。

描きかけで終わらせず,必ず仕上げる

「描きかけの絵を途中でやめるな。絶対に最後まで仕上げて人に見せろ」

この一年,弟子である常次郎がはっきりと北斎から教わったことといえば,この一点だけかもしれない。北斎は口を酸っぱくして常次郎に何度もこう言う。

「途中で放り投げる癖を一度でもつけちまったら,そいつはもうダメだ。

下手な絵は下手でいいんだ。下手なりに完成させて,ほかの人から『下手だなあ』と笑われて,自分でも『下手だなあ』と落ち込んで,どこがまずいのかなぁと必死で考え抜いて,それでやっと,次はほんの少しだけいい絵が描けるようになる。」(位置 No. 227)

資料づくりやアプリ開発も同じである。途中で投げ出さず,最後まで仕上げて人に見せることが重要である。

世間の要求に応えてこそ価値が生まれる

「世間様は,絵師の描きたいもんなんて知ったこっちゃねえんだよ。自分の描きたいもんなんかキッパリ捨てて,ひたすら世間様が欲しがるもんを描いてこその浮世絵師だろうが」(位置 No. 629)

資料やアプリも同様である。作っただけでは価値は生まれない。世間の要求に応えてこそ価値が生まれる。

理想はほどほどにしておく

「その失敗で,俺はほとほと思い知ったんだ。客が絵を買うのは,絵に描かれた美人や役者や景色を見たいからじゃねえ。絵をきっかけにして,自分の中にある理想の美人や役者や景色を頭の中で形にしてえのよ。

で,実はその時,絵ってのは必ずしも正確に表してなくてもいい。むしろ正確すぎると,現実に引き戻されて醒めちまうってのもあるしな」(位置 No. 1458)

理想の美人を頭の中で形にした結果,現実に醒めてしまうこともある。理想はほどほどにしておくのがよい。

現代の枕絵はアダルトビデオなのか

「いいか。客が枕絵を眺めてる時,客が見てるのは魔羅の絵じゃねえ。夢だ。

絵を通して客が見てるのは,ありえねえほどのでっかい魔羅で,いい女を悶えさせて気をやりてえという『夢』なんだ」(位置 No. 1479)

現代の枕絵であるアダルトビデオでも,人は夢を見ているのだろうか。

「馬鹿者」で思考停止しない

馬鹿者だとか理解できないとか,そんな風に分かりやすい結論を出してバッサリと考えるのを止めるのは確かに楽だ。だが,それで失うものの大きさを知る慶賀としては,彼らの誤解をなんとか解いてやりたかった。(位置 No. 1499)

「馬鹿者」「理解できない」と切り捨てて思考を止めない。その先にこそ得られるものがある。

日々の努力が人を感動させる

「根拠ぉ?そんなもん,絵を見りゃあ一発で分かるわ。

こんなすげえ絵を描く奴らなんだぞ。そりゃあ毎日,死ぬほど絵を勉強してなきゃおかしいだろ。で,死ぬほど絵を勉強している奴なら,自分のいまのこの描き方でいいのかな,もっと面白い描き方はねえのかな,っていつも悩んでるに違えねえんだ」(位置 No. 1539)

日々の努力の積み重ねが,人を感動させる。

壺中天という自分だけの世界

壺中天というのは,北斎が好んで使う言葉である。

――誰もが心の中に壺を持っていて,その壺の中にせっせと自分一人だけの世界をこしらえているもんだ。その壺の中に入って一人で見上げる天は,誰も邪魔することのできねえ,そいつだけの天なんだ。

おめえらは自分の壺中天を大事にしろ。あと他人の壺中天を軽い気持ちでのぞき込むのはご法度だし,もし見ても絶対に笑うんじゃねえぞ。

他人から見たらどんなに馬鹿馬鹿しくてくだらないものでも,その壺の中から見上げる天は,そいつにとっては人生の支えであって,唯一無二の宝物なんだ――(位置 No. 1884)

私も心の中に壺を持っている。その壺の中は,誰にも覗き込まれたくない。

呼吸するように描く,という境地

ただひたすらに,描くことが楽しくて呼吸するように描いている。

だから,描いたものが人に評価されようがされまいが,内容を批判されようが禁止されようが,売れようが売れまいが,この人には微塵も関係ない。なぜなら本人は,絵を描くという行為さえできていれば,ただそれだけで満足だからだ。(位置 No. 2267)

楽しくて呼吸するようにできることを,徹底的にやり抜きたい。

自分が納得していれば,それは素晴らしい作品である

「おめえの絵はおめえの絵だ。誰かが評価したから値打ちが上がるとか,誰かにけなされたから値打ちが下がるとか,しゃらくせえんだよそういうの。

おめえが精魂込めて描き上げて,その仕上がりにおめえ自身が満足してるんなら,そいつは誰がなんと言おうと素晴らしい絵だし,どんなに褒められようが飛ぶように売れようが,描いた本人が納得してねえならそいつは駄作なんだ」(位置 No. 2914)

自分の作品は,自分が納得していれば素晴らしい。ただし,値がつくかどうかは別問題である。

実務で役立つ ログの教科書

『実務で役立つ ログの教科書 基礎知識から収集方法・分析手法・トラブルシューティング・パフォーマンス最適化・機械学習での活用まで』(増井 敏克,翔泳社,2025年11月25日)を読了した。

本書は,ログの基礎から収集方法,分析手法,トラブルシューティング,パフォーマンス最適化,さらには機械学習での活用まで幅広く扱う実務書である。

ログを扱うすべてのエンジニアにとって,体系的な知識を得られる一冊である。

ログの 3 つの主要目的

ログは大きく分けて次の 3 つの目的で使われています。(位置 No. 195)

  1. システム管理 : システムの利用状況を調べる,トラブルの原因を調べる
  2. セキュリティ : 攻撃の兆候を調べる,不正を抑止する
  3. ビジネス : 利用状況を調べる

私の場合,ログは主に「利用状況の把握」に用いることが多い。アクセスログや利用ログは,サービス改善のための重要な材料である。

ライフログという概念の広がり

企業で使うログ以外にも,個人の日常生活に関するあらゆるデータを記録したものとしてライフログがあります。食べたもの,行ったところ,会った人などの行動だけでなく,体重や体脂肪率,心拍数のような健康状態,感情や気分,目標やタスクなどあらゆることを記録していることから,膨大なデータを分析できます。(位置 No. 497)

大学生のころにライフログという概念を知り,非常に憧れた記憶がある。
スマートフォンやスマートウォッチが普及した今日では,ライフログは誰でも簡単に取得できる身近な存在となった。

ログ管理のガイドライン:NIST SP800-92

ログ管理に関するガイドラインとして,NIST(米国国立標準技術研究所)が発行している SP800-92 (Guide to Computer Security Log Management) という文書を参照する方法があります。これは日本の IPA (独立行政法人情報処理推進機構)が「コンピュータセキュリティログ管理ガイド」として日本語訳を公開しています。(位置 No. 685)

ログ管理の基礎を押さえるためにも,コンピュータセキュリティログ管理ガイド は一度目を通しておきたい。

Web ビーコン型のログ取得

Web ビーコン型(位置 No. 839)

Web ページ内に JavaScript や画像ファイルを埋め込んで,その呼び出しログを取得する,もしくは JavaScript から特定のプログラムを呼び出して記録する方法です。細かな制御ができ,便利なサービスが提供されていることから最近はこの方法がよく使われています。

私の Web ページにも JavaScript を埋め込んでおり,ページ改善のためのデータ取得に役立てている。
細かな制御が可能であり,現代の Web 解析では一般的な手法である。

アクセスログはビジネスの重要資源

ビジネスの視点からログを扱うとき,マーケティング部門などでよく使われるのがアクセスログです。Web サイトや Web アプリを運用している企業などでは広報担当者が使うことが多く,アクセスしてきた利用者がどのようにページを遷移したのか,どのような属性の利用者がいるのか,Web サイトをどう改善すればいいのかを分析しています。(位置 No. 2761)

私は 20 年以上アクセスログに触れてきたが,もっと早くから体系的に学んでおけばよかったと感じる。
アクセスログは,利用者の行動理解や Web サイト改善に欠かせない。

ログの世界は実践してこそ深まる

ログの世界は非常に奥が深く,知識を得ただけで運用できるものではありません。実際にシステムから出力されるログを見て,適切に管理し,活用していくことを考える過程で,さらに多くの気づきが得られます。ぜひ,本書で得た知識を土台にして,実際のシステムや仕事の現場でログに触れ,経験を積んでいただければと思います。(位置 No. 3880)

ログの収集・分析は,実際に手を動かしてこそ理解が深まる。
本書で得た知識を土台に,現場でログに触れ続けることが重要である。

[rakuten:rakutenkobo-ebooks:25683165:detail]