2020年5月19日更新
『パラサイト・シングルの時代』(山田 昌弘,ちくま新書,1999年10月20日発行)を読了。
このように,学卒後もなお,親と同居し,基礎的生活条件を親に依存している未婚者を日経新聞紙上で「パラサイト・シングル」と読んだ(1997年2月8日夕刊)。そのネーミングは,当時「パラサイト・イヴ」という恐怖映画がロードショーにかかっていたので,あやかったものである。(pp. 11 - 12)
敢えて「寄生独身者」と訳さない。
お気づきだと思うが,パラサイト・シングルは,子どもと大人の立場の「いいとこ取り」をしている。子どもとしての保護を受ける権利を保ちながら,大人の自由を享受している。(p. 53)
子どもと大人の立場の「いいとこ取り」ができるメリットを知れば,そこから抜け出せない。
近年では,男性のパラサイト・シングルに対し,「こどおじ」という言葉が用いられる。
この二つの事実を合わせて考えると,パラサイト・シングルは未婚化の結果であると同時に原因であるということができる。これは,パラサイト・シングルがスパイラル的に「自己増殖」する存在であることを示している。(p. 56)
実際に,パラサイト・シングルがスパイラル的に「自己増殖」しているのではないか。
パラサイト・シングルが未婚化の結果であり,原因であることは正しいようだ。
日本では,パラサイト・シングル同士が付き合うと,気軽にセックスする場が,日常生活の場にはない。お金にも余裕があるので,いわゆるラブホテル,モーテルに行かざるをえないし,行くお金があるのである。(p. 94)
ラブホテルの件数が,パラサイト・シングルの活動を示す指標になっている。
これは,経済学者ケインズの合成の誤謬を想起させる。ケインズは,「個人を富ます貯蓄は全体を貧しくする」という有名な命題で,個人について成り立つ命題が,個人の集合社会全体については成り立たないことを示した。(p. 103)
個人の貯蓄を減らすためには,どうすればよいのか。
貯蓄しなくとも,何とかなる世界を政府が用意するしかないのか。
メリットクラシーとは,能力主義と訳されたりする。自分の能力によって社会的地位が決まるという理念である。つまり,(ある分野で)能力がある人が,(当該分野での)高い地位を占めるということであり,「機会均等」の理念と結びついている。すべての人に機会が開かれ,能力のある人が実力を発揮すれば,上の地位に就くことができるという考え方である。(p. 118)
メリットクラシー(能力主義)は,能力を高めるモチベーションとなる。
若者を親から引き離し,自立させ,競争に負けた若者に対してセーフティーネットや敗者復活のチャンスを用意し,かつ,依存症にならない程度に政府が支援する方法を考えなくてはならない。(p. 190)
若者を親から引き離すことで,生まれるデメリットがあるのではないか。
分割非効率により,消費を促そうということか。