わたしは戦後の新憲法のうち,ほんとうの意味で重要なのは第九条だけだと,十年以上前から主張し書いたりしてきた。その理由は,この第九条だけが世界中のどの「資本主義」国や「社会主義」国の憲法の軍事規定よりも圧倒的に優れているし,未来性をもっているからだ。(p. 42)
第九条は理想的なものかもしれないが,現実に合っているのか。
著書が発売されたときの天智天皇の評価と,今日の天智天皇の評価は,大きく変わっている。
わたしはかつてオウム真理教の麻原彰晃の宗教家としての力量を評価すべきだ。短絡して凶悪殺人鬼とその集団として片づけることで真の問題を見失い,世論をとんでもない方向に誘導すべきではないと再三述べてきて,マスコミの攻撃とデマにさらされた。(p. 102)
短期間で,信者を増やし,あれだけの組織をつくり上げた麻原彰晃の宗教家としての力量は,確かにすごいかもしれない。
わたしだったら逆に,大いに引きこもれ,と言いたい。この世に引きこもらないで専門的になり得るような職業は何一つ存在しないからだ。(p. 117)
引きこもって,考えて,考え抜かなければ専門家は生まれない。
小さな乏しい希望だということが,いつの時代でも守るに値するのだとも言えるからだ。(p. 133)
小さな乏しい希望を守ることで,人類の希望を語ることができる。
―――起こった事象を伝えるだけでは「事件の報道」として視聴者は満足しない。もう一皮むいて報道しなければ,すべての事件は善玉と悪玉に二分されてしまう。(p. 156)
善悪二元論ではなく,もっと踏み込んで考える。
そしていまも憲法は無傷なまま,いまでも護憲などと言っている。この鈍感さはどうしようもないし,運用論だけで憲法の非戦の事項をつぎつぎに変えてしまう日本人の性格に根ざした政治家や知識人の狡さもどうしようもない絶望感にかられる。(p. 183)
鈍感な日本人が多い。なぜ,護憲なのか。
吉本隆明のメディアを疑え―あふれる報道から「真実」を読み取る法 (プレイブックス・インテリジェンス)
- 作者: 吉本隆明
- 出版社/メーカー: 青春出版社
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