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「憲法九条」国民投票 今井 一

2020年4月24日更新

『「憲法九条」国民投票』(今井 一,集英社新書,2003年10月22日発行)を読了。

「きっぱり,はっきり」を避ける日本人について「曖昧の美学」「曖昧の強み」を説く人がいる。否定はしない。だが,世の中には曖昧にしていいことと,よくないことがある。「軍隊を持つのか,持たないのか」,この選択は国民の生活に多大な影響を及ぼし,生命をも左右する。にもかかわらず,私たち日本人はこれをうやむやにしたまま半世紀もの間やり過ごしてきた。(pp. 15-16)

曖昧にしておくことができない問題もあることを知るべき。

 今こそ,国民は主権者としての自覚を強め,重大な国家意思の決定に関わらなければならない。私は,正当な手続きと公平なルールに則り,「憲法九条」に関する国民投票を実施することを提唱したい。(p. 19)

重大な国家意思の決定に,国民は正しい判断ができるだろうか。

天皇ヲ以テ現御神トシ且日本国民ヲ以テ他ノ民族ニ優越セル民族ニシテ,延テ世界ヲ支配スベキ運命ヲ有ストノ架空ナル観念ニ基クモノニモ非ズ」(p. 44)

人間宣言

イタリア(憲法 第11条 戦争の否認・主権の制限)
「イタリアは,他の人民の自由を侵害する手段および国際紛争を解決する手段としての戦争を否認する」(p. 108)

ドイツ(基本法 第26条 侵略戦争の禁止)
「諸国民の平和的共同生活を妨げ,特に侵略戦争の遂行を準備するのに役立ち,かつそのような意図をもって為される行為は,違憲である。」(p. 108)

ポーランド憲法 第33条)
「宣戦についての決定は,ポーランド人民共和国に対する軍事攻撃が行われたとき,または条約に基づき侵略に対する共同防衛の必要が生まれたときだけに,採択される」(p. 109)

侵略戦争を禁止することが基本。ポーランドは,自国が軍事攻撃された場合と共同防衛の必要が生まれたときのことも規定している。

憲法九条=仮の改正案
 日本国民は,他国を侵略し征服することを目的とした戦争を永久に放棄し,正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求する。
 日本国民は,自らの平和と独立を守り,その安全を保つことを目的とした自衛のための軍隊を保持する。
 二,前項の軍隊の最高の指揮監督権は,内閣総理大臣に属する。(pp. 137 - 139)

侵略戦争はしない。ただし,自衛のための軍を持ち,その指揮監督権は内閣総理大臣にある。シンプルであるし,実態にも即している。

……国会に議題として提出される前に,一体日本人としてのイニシアチブがどれほどあったかということを歴史的に検証すれば自明なことだと思う。占領下という特異な状況下でも,私たちの自律性や意思がほとんど反映されていない限り,国家の基本法としての歴史的レジティマシーはない。by石原慎太郎 (p. 156)

自国の憲法は自国民の手で作らなければならない。それもまた基本である。

日本が侵略戦争をしなかったのは――できるわけもないが――憲法九条のおかげもあるといってもよいかもしれないが,他国が日本を戦争に巻き込まなかったのは平和憲法のせいではない。(『戦争論 暴力と道徳のあいだ』西部邁)(p. 168)

憲法九条があれば,日本が侵略戦争をしない,ということには効力を発揮する。しかし,日本が侵略されるということについては,全く効力を発揮しない。

 ……大切なことは,一人一人が,今,本当に自衛隊が必要か否かを考えることです。必要なら,自衛隊をきちんと認め,憲法の中で国軍として位置づけていくことが大事だと思います。必要でなければ,マッカーサーが偽りの報告を本国に送ってまでつくった憲法を守り自衛隊をなくしていく,あるいは縮小していくことです。(『憲法とはなにか』櫻井よしこ)(p. 174)

侵略戦争はするのか,しないのか。自衛のための軍隊は必要か否か。シンプルに問いかけてみてはどうか。

 ……憲法九条をめぐる神学論争に終止符を打つべく,憲法改正の声を日本国中に広めようではないか。いまや,うしろ向きの憲法九条の解釈論争に明け暮れている時代ではない。(提言『民間憲法臨調』「二十一世紀の日本と憲法有識者懇談会)(p. 222)

憲法九条の解釈について,論争をする場合ではない。解釈が難しいのならば,実態に合うように憲法を変えればいいではないか。

「憲法九条」国民投票 (集英社新書)

「憲法九条」国民投票 (集英社新書)

  • 作者:今井 一
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2003/10/17
  • メディア: 新書