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現役サラリーマンのスキルアップのための読書まとめ

決定版 リブラ 世界を震撼させるデジタル通貨革命

2019年6月,リブラ(Libra)*1の構想が発表されたとき,単純にすごい発想だな,と驚いた。今のところ,リブラは実現していないが,そのときの衝撃を思い出すべく『決定版 リブラ 世界を震撼させるデジタル通貨革命』(木内登英東洋経済新報社,2019年12月26日)を読了。

リブラ計画によって,従来の金融の世界をひっくり返す,いわば「パンドラの箱」は既に開けられてしまったのであり,そのデジタル金融の新たなムーブメントを逆行させることはもはやできない。我々がいま真剣に考えなければいけないのは,それを現在のシステムにどのように受け入れていくかだけなのだ。(5 ページ)

パンドラの箱は開けられたが,まだ,ムーブメントは続いている。

ホワイトペーパーの中でフェイスブックがことさら強調しているのは,リブラが金融包摂(ファイナンシャル・インクルージョン)に貢献する,という社会的な意義だ。金融包摂とは,金融サービスを受けられない人々に,新たに金融サービスにアクセスできるような環境を整えることであり,世界銀行は,「全ての人々が,経済活動のチャンスを捉えるため,また経済的に不安定な状況を軽減するために必要とされる金融サービスにアクセスでき,またそれを利用できる状況」と定義している。(30 ページ)

リブラを初めて聞いたとき,金融包摂に貢献する社会的な意義は,非常にいいものだと感じたことを覚えている。

2012 年にフェイスブックは,5 つの経営理念を高々と発表している。影響力を重視(FOCUS ON IMPACT),迅速に行動(MOVE FAST),大胆であれ(BE BOLD),オープンであれ(BE OPEN),社会的価値を築く(BUILD SOCIAL VALUE)の 5 つだ。(33 ページ)

2012 年から今日まで,フェイスブックは色々と苦難もあったが,5 つの経営理念は生きているか。

金利用に関わるコストの範囲は極めて広いものだが,直接的なコストに限ってみれば,紙幣・硬貨を製造する費用,それを保管,輸送する費用,また現金を取り扱う人件費,現金を出し入れする ATM(現金自動預払機)の製造費及び維持費,などが挙げられるだろう。(69 ページ)

現金の利用を減らすことで,直接的なコストはいくらかは削減できそうだ。

フェイスブックに代表されるように,プラットフォーマーは,自らは「場」を提供するのがビジネスであり,利用者が投稿するコンテンツの内容には関知しないというのが当初の基本姿勢だった。(100 ページ)

コンテンツの内容を関知するためには,相当なコストがかかると想像できる。

プラットフォーマーによってひとたびエコシステム(複数企業が商品開発や事業活動などで協力関係を結び,業界の枠や国境を越えて広く共存・共栄していく仕組み)が形作られると,競争相手がそれに競合するようなエコシステムを作ることが非常に難しくなる。そして,市場支配力を高めたプラットフォーマーは,ネットワーク効果により,市場シェアをさらに拡大していくと共に,新規参入の障壁を一気に高めてしまう。(141 ページ)

国を超えたデジタル通貨のエコシステムができれば,エコシステムを提供するプラットフォーマーの影響力はすさまじいものがある。

第 2 に,中央デジタル通貨の発行は,マイナス金利政策の有効性を高めることができる,としばしば指摘されている。ハーバード大学教授のケネス・ロゴフ教授は,犯罪防止という観点に加えて,実効性の高いマイナス金利政策を導入するという目的から,漸進的に現金を廃止していくことを主張している。ロゴフ教授は,紙幣の廃止は,中央銀行金利の非負制約(金利がマイナスにならないこと)を逃れてマイナス金利政策を導入するのに,間違いなく,最も簡単で,最もエレガントな手法であると説く。(179 ページ)

中央デジタル通貨で,金利を調整することで,景気をコントロールできる,と考えられなくもないが,デジタル通貨を使うのは人である以上,そんなにうまくいくか,とも思う。

大手プラットフォーマーの新たな金融サービスと,既存の金融サービスとが共存し,新たなイノベーションが導入されてユーザーの利便性が一段と高められる――。それこそが,2025 年の望ましい金融予想図だ。それをなんとしてでも実現することが,各国の金融当局者に課せられた大きな使命である。(268 ページ)

金融サービスの利便性が高められたという実感はわかない。

*1:2020年12月1日に Diem と改称。2022年1月31日にサービス提供の断念が発表された。