2020年5月9日更新
『フェイスブック 若き天才の野望 5 億人をつなぐソーシャルネットワークはこうして生まれた』(デビッド・カークパトリック著,滑川海彦・高橋信夫訳,2011年1月27日 第 1 版 第 3 刷)を読了。
「われわれは人々が世界を理解する方法をより効果的なものにしようと試みています。われわれの目的はサイトの滞留時間を最大にすることではない。われわれのサイトを訪問している時間を最大限に有効なものにしようと努力しているんです」(2006 年夏,マーク・ザッカーバーグ)(p. 1)
フェイスブックを訪問している時間を有効なものにできるように,さまざまな工夫がほどこされている。
「同級生,同僚,友だちといった現実世界での知り合いとの交流を深め,スムーズにするためのツールになることを意図してフェイスブックを開発している」(p. 4)
フェイスブックがあれば,現実世界の知り合いの日常が見えてくる。
「大学では理論を習う。つまり理論的に考える習慣がつく。それに大学というのは理想主義的な場所だ。風土は非常にリベラルだ。だからリベラルで理想主義的価値観に囲まれて暮らしている。世界は民衆によって支配されるべきだ,とか。こうした価値観がぼくの人格形成に大きく影響した。フェイスブックが目指しているものもこういう理想だ。(p. 8)
Google や Facebook は大学で生まれた。大学には,そういうものを生み出す土壌があったのだろう。
「彼はあのホワイトボードが大好きだったね。彼はどんなアイデアでも――わかり切ったことでもいちいち図に描いてみないと気がすまないんだ」(p. 14)
ホワイトボードに図を描くことで,頭の中のコネクションを強固なものにしていたのか。
「われわれは世界を変えるんだ」とザッカーバーグがよく口にしていたのを,ブラックは覚えている。「ザ・フェイスブックは世界をもっとオープンな場所にできる」。後年,彼はこの言葉を何度も何度も繰り返すことになる。(p. 53)
「われわれは世界を変えるんだ」という強い信念は,フェイスブックは大きくなれた理由の一つだろう。
内気で童顔な見かけにもかかわらず,ザッカーバーグは断固たる絶対的なリーダーだった。ザ・フェイスブックのすべてのページの下部に小さな文字で,「マーク・ザッカーバーグ製作」の 1 行が入っていた。ザ・フェイスブックの「このサービスについて」のページでザッカーバーグの肩書は「創立者,船長,国家の敵」となっていた。(p. 67)
2019 年 12 月現在,ザッカーバーグは本当に国家の敵として扱われているか。
「ぼくは,自分がプロジェクトに参加もしなかったことに満足している。これこそが組織をつくる時に誰もが望むことだから。会社の価値にぴったり合った物を,自分が何も言わなくてもつくってくれる人たちがいるなんて」(p. 408)
ザッカーバーグがいなくても,プロジェクトが成立する。フェイスブックが組織として成熟してきた瞬間か。
「もっとオープンになって誰もがすぐに自分の意見を言えるようになれば,経済はもっと贈与経済のように機能し始めるだろう。贈与経済は,企業や団体に対してもっと善良にもっと信頼されるようになれ,という責任を押しつける」
「本当に政府の仕組みが変わっていく。より透明な世界は,より良く統治された世界やより公正な世界をつくる」(p. 420)
このような思いが,リブラ*1を着想するきっかけとなったか。
彼は少々世間知らずかもしれないが,同時に怖いもの知らずで負けず嫌いで,この上なく大胆で生意気でもある。彼はグーグルを恐れていない。まだ少し心を奪われているが。彼は本心からページにフェイスブックを気に入ってほしかったが,それを聞くと何が起こるかも見たかった。(p. 464)
怖いもの知らず,負けず嫌い,大胆,生意気,これらの要素があったからこそ,グーグル,アップル,アマゾンの一角にフェイスブックが食い込めたのだろう。
将来,現実世界とデジタル世界の境目は,曖昧なものになるかもしれない。
誰も電気会社やガス会社には文句を言わないが,多くの人は検索エンジンや広告ネットワーク,そして自分の個人情報が一社に寡占されることを手放しで喜びはしない。(p. 512)
2019 年 12 月現在では,電力会社への風当たりは強い。
フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた)
- 作者: デビッド・カークパトリック,小林弘人解説,滑川海彦,高橋信夫
- 出版社/メーカー: 日経BP
- 発売日: 2011/01/13
- メディア: 単行本
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