石井代蔵の「千代の富士一代」(文春文庫)を読了しました。
優勝回数史上2位の31回を誇る昭和の大横綱・千代の富士の入門から引退までを描いた小説であります。千代の富士だけにスポットを当てるのではなく,千代の山,北の富士という二人の師匠の生き様,若き日の千代の富士に多大な影響を与えた貴ノ花にもスポットが当てられております。
千代の富士は,大鵬,北の湖といった昭和の大横綱と比較して,晩成型の横綱であるというのが印象的です。肩の脱臼癖を筋肉の鎧をまとうことで克服したり,投げにこだわる相撲の取り口を左で前褌を取り,一気に攻める相撲に変貌させることで,強くなっていったのです。
他の横綱では全盛期は20代後半にあろうかと思われますが,30歳を過ぎてからの優勝が多いというのは特筆すべきことです。 現在の横綱である白鵬,日馬富士,鶴竜はいずれも20代後半であります。彼らが30歳を超えたとき,横綱であり続けられるのか非常に興味があります。
白鵬が30歳を超えても活躍できるようであれば,大相撲の記録のほとんどを塗り替えてしまうのではないかという期待ができます。
日馬富士は怪我が多く,30歳を超えて活躍するのは若干難しい気がします。
また,新横綱である鶴竜は晩成型と言えます。現在は横綱や大関との対戦では負け越しが多いですが,徐々にそれを克服して,優勝を重ねていくという期待もできます。