2020年11月15日作成,2021年3月28日更新
2020年11月場所,大相撲の横綱 白鵬と鶴竜は休場することになった。
先場所に引き続き,2 場所連続で初日から横綱不在となる。
日本相撲協会によると,番付に 2 人以上の横綱がいて,その全員が 2 場所連続で初日から休場するのは,史上初めてのことであるそうだ。
白鵬,鶴竜の休場について,一部では「休みすぎ批判」が出ており,進退*1を問う声も出ている。
「進退を懸けて出てこなければ駄目じゃないですかね。それぐらいの気持ちを持って、次(初場所)は出てくることになるんじゃないですか」(2020年11月8日,スポーツニッポン『尾車事業部長 白鵬、鶴竜に苦言「次は進退懸けて出てこないと」』)
貴乃花は 2001年7月場所から 2002年7月場所まで,7場所連続で休場(7 場所連続で全休)していたではないか。稀勢の里は 2017年5月場所から 2018年7月場所まで休場(うち 4 場所は全休)していたではないか。
定性的ではなく,定量的に白鵬と鶴竜の休場について評価するため,昭和の大横綱と平成の横綱の横綱休場率を調べてみた*2。
その結果を下図に示す。赤線は休場率の平均値を示している。
鶴竜の休場率
鶴竜の休場率は,平成の横綱の中では,短命横綱*3として知られる稀勢の里,若乃花に次いで高いことがわかる。
さらに,鶴竜は2020年11月場所を全休すると,貴乃花が横綱在位中に休場した 201 を超えて,202 となる。
鶴竜は,確かに休みすぎていると考えられる。
白鵬の休場率
白鵬の休場率は 0.148 であり,平成の横綱の中では,朝青龍に次いで低い。
また,昭和の大横綱である大鵬,千代の富士の横綱在位時の休場率と比べても同等である。
白鵬の横綱皆勤場所は 64 場所で,北の湖の 51 場所を大きく引き離し,歴代 1 位である。
また,横綱連続皆勤場所も 48 場所(2007年7月場所-2015年7月場所の 8 年間)で,北の湖の 43 場所(1974年9月場所-1981年9月場所)を引き離し,歴代 1 位である。
しかし,そんな白鵬も 2018 年以降は,断続的に休場している。
そして,2020年7月場所(10勝3敗2休)から11月場所(全休)は,初めて 3 場所連続の休場である。
休みが多くなったという印象を持たれても仕方がないような気もする。
所感
もし,白鵬と鶴竜が引退すれば,1993 年 1 月場所以来,横綱空位*4となってしまう。
そうなる前に,新たな横綱が誕生してほしい。
若くて強い横綱のことを語りたいのは,私だけではないはずだ。
11月23日追記,横綱審議委員会の決議
2020年11月場所終了後の11月23日,日本相撲協会の諮問機関である横綱審議委員会は定例会合で,11月場所を全休した白鵬と鶴竜に対し,横綱審議委員会の内規に基づく「注意」を全委員の総意として決議した,と報じられた。
横綱審議委員会の委員長である矢野 弘典 氏は「休場が多いので注意を与えて奮起を促すこととした。来場所には覚悟を決めて備えてもらいたい」と話した。
本稿での考察を踏まえると,矢野委員長の「休場が多いので注意」という発言は,いささか短絡的な気がする。
茂木 健一郎 氏も公式ブログにおいて,横綱審議委員会のメッセージが精神論,印象論に偏っていることを指摘している。
いちばんまずいと思うのは、横審の出すメッセージが精神論、印象論に偏っていることである。白鵬、鶴竜がサボっているから「注意」ということなのかもしれないけど、ほんとうにサボっているのかどうかはわからない。そもそも、どのような怪我なのか、医療的なデータを参照しないで、どうして判断が下せるのだろうか。
12月8日追記,横綱審議委員会決議後,鶴竜のコメント
2020年12月8日,横綱 鶴竜は陸奥部屋で稽古を行い,横綱審議委員会の「注意」決議後,初めて心境を語った。
自分のやることに集中するだけです。成績次第では進退を問われることについて気にしないよう,しっかり目の前の相撲に集中してやることが大事
(参考)NEWS ポストセブンの記事に関する私見
NEWS ポストセブンにおいても,白鵬と鶴竜の休場について,述べられている。
下記の記事における考察によると,白鵬が引退できない理由は「年寄株」を持っていないこと,鶴竜が引退できない理由は「日本国籍がなく,日本相撲協会に残れないこと」とされている。