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現役サラリーマンのスキルアップのための読書まとめ

経営リーダーのための社会システム論~構造的問題と僕らの未来~

『経営リーダーのための社会システム論~構造的問題と僕らの未来~』(宮台真司,野田智義,光文社,2022年2月22日)を読了。

グローバル化は,とりわけ先進諸国の内部において,新たな構造的問題を生み出しています。そこで起きているのは,資本移動による国内産業の空洞化にともなう中間層の崩壊と,それにともなうソーシャル・キャピタル(人間関係という資本)の減少です。その結果,経済的に没落した人々の間に,不全感や劣等感や孤独が広がっていったのです。(位置 No. 521)

経済的に没落した人々が持つ,不全感,劣等感,孤独が暗い影を落としている。

共同体には必ず維持コストがかかります。メンバーの間で時間と手間をかけて合意形成をしなくてはなりませんし,互いのまなざしを意識せずに生きられないという不自由を受け入れなくてはなりません。共同体からいいものだけを引き出し,コストをかけないという「いいとこ取り」はできません。つまり,「絆には絆コストがかかる」のです。(位置 No. 844)

共同体の維持コストを考慮すると,共同体を持たない選択もありうる。

生活世界とシステム世界には,それぞれプラス面とマイナス面があるが,厄介なのは,社会が「つまみ食い」を許さないということだ。では,僕らは未来に向けてどんな社会を選択しうるのだろうか。本書の問題意識もそこにある。「昔はよかった」という「三丁目の夕日」症候群的なノスタルジアに浸るのではなく,「いいとこ取り」というありえもしない楽観に逃避することもなく,未来を選択する。それが,僕らの本書で掲げる挑戦にほかならない。(位置 No. 975)

いいとこ取りは,ありえない。現実に向き合って,未来を選択する。

「人々がシステム世界(市場と行政)に頼るほど,人を頼らなくなって自動的に感情が劣化する」と説いていますが,これはスミス→マルクスウェーバーという流れの上にあるオーソドックスな思考なのです。(位置 No. 1744)

完全に頼ることができるほど,市場や行政のシステム世界が,しっかりしているとも思えない。

国民の間に仲間意識があれば,一緒に助け合います。でも「われわれ意識」が失われた社会では,金持ちが貧しい人の暮らしを見ても,「あんな自堕落なやつらに財産を分けたくない」と思うのが自然です。その結果,累進課税制度や国民皆保険などの再配分メカニズムを継続できなくなります。加えて,国民同士が仲間ではないので,経済的弱者が互いに連帯できず,逆に「お前が俺の食い扶持を減らしている」と足を引っ張り合うようにもなります。(位置 No. 1800)

今日の日本に「われわれ意識」は,どれほどあるか。

「あんな自堕落なやつらに財産を分けたくない」「お前が俺の食い扶持を減らしている」という声が聞こえてきそうだ。

新反動主義者たちは,民主主義の立て直しなどという「制度による社会変革」をできるだけ早く頓挫させ,「テクノロジーによる社会変革」に一気に移行しようと考えるのです。彼らは,人びとが民主政に絶望するような出来事を期待しており,それで社会が混乱すれば,不安を感じた人々がテクノロジーへの依存を強め,自分たちが理想とする未来がより早く実現すると信じています。(位置 No. 2377)

人間だけでは社会変革は実現できないことは,時代が証明してくれる。時代を超えるためには,テクノロジーへの依存を高めていく。