2021年6月16日
『Winny 天才プログラマー金子勇との7年半』(インプレス R&D,2020年4月24日)を読了。
弁護団にとって Winny の技術的立証をどうするかは,ずっと懸念の問題であった。なんとか人づてに紹介してもらえたのが,慶應義塾大学の村井 純 教授であった。事前に打ち合わせをしたのだが,村井教授は予想を遥かに上回る漢であった。
「その理屈だったら,日本にインターネットを引いてきた俺が幇助じゃん」
「Kazaa っていうボロ Winny ですら Skype を生んだんだ。Winny が何を生み出すかを見たかったんだよ,俺は」(位置 No. 1159)
技術を正しく理解し,使いこなし,そして新しい何かを生み出したい。
もし「Winny の技術」を手にすることがあれば,まえがきを見てほしい。そこにはこう書かれている。
「ネットワーク社会の未来が,明るいものであることを祈ります」
最後のさりげない一言が,Winny に込められた真意だったのかもしれない。(位置 No. 1284)
ネットワーク社会の未来が,明るいものであれば,きっとワクワクする未来だろう。
人は最初,それは誤っていると言い,次に,それは無理だと言い,そして,それは誰でもできたと言う。
しかし,何かを成し遂げるのは実際に何かをした者だけである。(位置 No. 1995)
それは誤っている,それは無理だ,それは誰でもできた,という言葉は使わない。
検察は上告趣意書で,「誰か 1 人でも悪いことをするかもしれないと認識していれば,幇助犯が成立する」という主張を始めていた。検察官が幇助の理論を明らかにしたのは,実はこれが初めてなのである。(位置 No. 2082)
このような幇助の理論では,包丁も作れない。