空前絶後の七冠を達成した日本屈指の天才が明かす,その思考のすべて。『羽生善治 闘う頭脳』(羽生 善治,文春文庫,2016年3月10日発行)を読了。
私は「理解」という言葉を使っていますが,局面をより良くするアプローチの仕方や,局面の良し悪しを判断する方法を知ることで,思考の中から余計なノイズが取れます。そうなると,状況がよりクリアに見えるようになるので,新たなひらめきが浮かびやすくなるのです。(p. 46)
局面の状況を「理解」することで,新たなひらめきが生まれる。
羽生の記憶力は棋士間でも驚かれることが多いが,その秘密は図形認識の聡明さと,徹底した予習・復習にあるといわれている。盤面(図形)を見て,画面とマウスでなく手先で実際に盤駒を動かし,確実に覚える。駒の重みは,身体に深く刻み込まれていく。手順は,盤面のイメージのみならず,必然の理論からメロディのように印象づけ,記憶していく。(p. 72)
記憶力は,手を動かすことで,身体に深く刻み込まれていく。
簡単に記憶として残るものではないからこそ,しっかりと予習・復習をしなければならない。
羽生善治の出現は将棋界にとって一滴の血も流れない何の音も聞こえてこない,しかしそれは確実な革命であった。将棋界には羽生以前,羽生以後といっていいくらいの大きな変革がもたらされた。将棋界の勢力図が一変したばかりではない,それまでの棋士たちの価値観は瓦解し,将棋への考え方からライフスタイルに至るまで,羽生を旗頭とする天才集団に席捲されていったといっていいかもしれない。(p. 222)
「羽生以前,羽生以後」といわれるほどの革命は 30 年続いている。
2022年2月4日,羽生善治九段は第80期 名人戦 A 級順位戦 8 回戦で永瀬王座に敗れ,B 級 1 組への降級が決まった。
羽生善治の革命の終わりを迎え,藤井聡太による新しい革命が始まるのか。