Masassiah Blog

現役サラリーマンのスキルアップのための読書まとめ

日本型プラットフォームビジネス 小宮昌人

2020年4月26日更新

『日本型プラットフォームビジネス』(小宮昌人*1・Yang Hao*2・小池純二*3著,日本経済新聞出版社,2020年1月24日 1 版 1 刷)を読了。

  • 1 章 立ち遅れる日本が取るべき戦略
  • 2 章 セグメンテッド・プラットフォーム戦略
  • 3 章 連携戦略 1 ――チャネル活用
  • 4 章 連携戦略 2 ――顧客化
  • 5 章 連携戦略 3 ――アプリケーション・機能連携
  • 6 章 プラットフォーム時代に日本企業に求められるもの

ウーバーは自社のタクシーや車両を,エアビーアンドビーはホテルなどのアセットを持たない。提供したいプレイヤーと,サービスを受けたい顧客をマッチングすることのみをビジネス領域としている。このため,いかに需要者と供給者のネットワークを数多く確保できるかが重要になる。(p. 25)

アセットを持たず,マッチングのみに焦点を当てたことがよかったのか。

そのため,彼ら*4と同じレイヤー(階層)で戦うのではなく,自社が競争力を持てる領域,メガ企業とのすみ分け領域を定め,戦略的に展開していくことが求められる。メガ企業は世界規模での効率的な事業拡大を目指すため,個々の産業分野や地域などにカスタマイズした,最適なプラットフォームを展開できるとは限らない。ここに,メガ企業以外が参入し,事業を展開できる可能性が存在する。(p. 53)

個々の産業分野や地域は,ニッチかもしれないが,痒い所に手が届くプラットフォームができるかもしれない。

メガ企業とのすみ分けの方向性としては,大きく 6 つの方向性が考えられる。(pp. 54 - 55)

  1. 統合型
  2. 業界特化型
  3. 顧客層特化型
  4. プロセス特化型
  5. 地域先行型
  6. オフライン・エッジ型

メガ企業と真っ向から勝負するのではなく,すみ分けできるような方向性から切り込んでいく。

プラットフォーム展開を検討する際には,既存の戦い方の延長線上ではなく,いま一度自社の顧客は誰なのか,その顧客に対してどのような価値を提供する企業なのか,既存プラットフォームも含め誰と連携しエコシステムを形成するのか,どのようなポジションで展開・差別化を図っていくのか,などを再定義しなければならない。(pp. 64 - 65)

 プラットフォーム展開するためには,考えることがたくさんある。

(1)他社プラットフォーム上でのアプリケーション展開(p. 173)

ポイント1 自社の隠れたノウハウ・技術力をアプリケーション化し,外販せよ

ポイント2 IT ノウハウ・リソースは外部を活用できる。重要なのは現場感にもとづく課題・ノウハウ

ポイント3 コアノウハウを磨き上げることで,エコシステム内での差別化をせよ

(2)自社展開アプリケーションのプラットフォーム連携

ポイント4 プラットフォームとの連携により自社アプリケーション/サービスの利便性を向上させよ

ポイント5 プラットフォームが提供する機能を徹底活用し,新たなビジネスモデルを効率的に試行せよ

プラットフォームが提供する機能を活用したビジネスモデルを志向する。

住宅などの建設現場は,顧客にとってオープンにされておらず,ブラックボックスとなっている部分が大きい。着工から竣工までのプロセスを可視化することで,顧客の満足度を高めることを目指して,アプリの開発に着手した。アプリでは現状の出来高/進捗/スケジュール,図面/工程表,工事現場写真が見られるとともに,担当者と顧客のコミュニケーションツール,書類管理ツールなども提供されている。(pp. 183 - 184)

今まで見えなかったものを見えるようにする価値を提供。

日本企業がデジタルプラットフォーム時代において競争力を発揮していくために求められるポイントは,以下のとおりである。(p. 200)

ポイント1 プラットフォーム時代をチャンスと捉え,自社の展開ポジション・提供価値を見定める「QCD*5 から,VPS*6 への競争軸の変化」

ポイント2 ビジネスモデル変革に向けたトップのコミットメント「意思決定ができる体制と判断と仕組み」

ポイント3 ビジネスの形を常に組み替え続ける「すみ分けと連携のマルチ展開」

ポイント4 デジタル「技術」そのものにとらわれすぎない「既存機能活用・他社連携を前提とする」

 いきなり,メガ企業に対抗するデジタルプラットフォームを目指すのではなく,自分たちの仕事のやり方を変える手段ととらえる。

日本型プラットフォームビジネス

日本型プラットフォームビジネス

 

 

*1:野村総合研究所 グローバル製造業コンサルティングコンサルタント。1989 年生まれ。専門はデジタル化・プラットフォーム戦略,IoT・インダストリー 4.0 対応支援,イノベーション創出支援,グローバル事業戦略,M&A 戦略など。

*2:野村総合研究所 グローバル製造業コンサルティングコンサルタント。1990 年生まれ。専門はグローバル事業開発,新興国の参入支援,スタートアップ立ち上げ支援など,これまで素材・化学・製薬・自動車業界向け業務に従事。

*3:野村総合研究所 グローバルインフラコンサルティングプリンシパル。1977 年生まれ。専門は新興国市場向け事業戦略,参入支援など。

*4:(Masassiah 註)グローバルでの巨大プレイヤーである GAFMA や BAT

*5:Q(品質の高い製品・サービス),C(低価格での提供),D(顧客接点・サプライチェーン

*6:V(自社独自の提供価値),P(プラットフォーム展開/連携),S(エコシステムとのシナジー