2020年4月21日更新
『データレバレッジ経営 デジタルトランスフォーメーションの現実解』(ベイカレント・コンサルティング*1,2019年6月17日 第 1 版,日経 BP)を読了。
DX はもともとデジタルによる日常生活の変革を意味していた。その言葉が企業目線で解釈され,現在では「デジタルによる事業構造の変革」の意味合いで使われている。
DX(≒「デジタルによる事業構造の変革」)が,求められている。
データを分析・活用することで,何を実現したいのか。顧客にどのような価値を,いつ,どのタイミングで提供していくのか。そうした目的を明確に設定して取り組まなければ,データが真の価値を発揮することはない。
目的を明確に設定して,データの価値を発揮させる。
データサイエンスの定義
「大量のデータから何らかの示唆を導き出すスキル」
データサイエンスのスキル
- データアナリティクス力
- コンピュータサイエンス力
- 問題解決力
データサイエンスのスキルを身につければ,どんな分野であっても求められる人になれるだろう。
経営上の目的を実現するために,自社のデータに外部のデータを加え分析アルゴリズムでテコを効かせる。それが自社のデータを価値に変え,その価値を最大化するのだ。
この考え方を「データレバレッジ」と名付ける。
データにテコを効かせなければ,価値は生まれない。
「データを収集・蓄積しておけば何か発見がある,新しい価値につながる」といった発想でデータ収集に取り組むのはやめるべきだ。
自ら収集するデータは自社事業に付随したデータに絞り込むことが賢明だろう。それが他社が収集できないデータであれば,自社の製品やサービスの強みの源泉ともなるほか,他社に提供することで利益を得ることも可能になる。
「データを収集・蓄積しておけば何か発見がある」というデータ収集神話になっていないか。
GAFA は,大胆なアイデアを次々と創出している。そこには,失敗に対する考え方が影響している。
アマゾンのジェフ・ベゾスは,アマゾンを世界一失敗している企業と語っている。失敗と発明は切っても切り離せないものであり,失敗を受け入れ,時には喜ぶ。この失敗が大きな見返りにつながると信じている。
失敗がなければ,成功は生まれない。
失敗を過剰に恐れてはならない。
エラーハンドリングの対象に,オペレーションリスクがある。この領域では,機械学習によるリスク予測が現実化してきた。リスクの発生確率を予測するだけでなく,リスクを生じさせる因子を特定して,影響の度合いまで判定し始めている。
それによりリスクが「いつ」高まり,そのタイミングで「何に」気を付けるべきかがわかるようになった。「いつ」「何に」が分かることが,リスクマネジメントにおいては革新的である。リスクが高まるタイミングに合わせて,最も影響が大きい因子に絞り込み,ピンポイントで対策を打つこともできる。事前に決めたリスク対応策を実行するだけでなく,柔軟に変更していくことも可能になったのだ。
リスクマネジメントの革新は,そんなに簡単に実現できるだろうか。
従来サービスを凌駕する CX を提供するとなると,誰も考えたことのない画期的なアイデアが不可欠だと思いがちだが,大きな誤解である。仮に世界中で誰も考えたことのない,驚くようなサービスを思いつく人がいれば,今すぐ大企業を飛び出して自ら起業したほうがよい。世界中のデジタル部門が新たなビジネスの創出に取り組んでいる今,誰も考えたことのない画期的なサービスを思いつける確率は極めて低い。
必要なのはデジタルを活用し目的を実現し得るように,従来のサービスを改良し新たな CX を提供する考え方だ。現にこれまで変革を起こしてきたデジタルサービスのほとんどは,従来のサービスをデジタルによって改良したものであった。
「誰も考えたことのない画期的なアイデアが不可欠」というのは,大きな誤解。
誰も考えたことのない画期的なアイデアではなく,デジタルを活用し目的を実現することを考えていく。