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現役サラリーマンのスキルアップのための読書まとめ

ロングテール――「売れない商品」を宝の山に変える新戦略

クリス・アンダーソン著『ロングテール――「売れない商品」を宝の山に変える新戦略』(早川書房、2006年9月20日刊)を読了した。

本書は、ヒット商品中心の従来型ビジネスから、ニッチ商品が集積する「ロングテール」型ビジネスへの転換を論じた一冊である。

ヒット商品は「選択肢の少なさ」から生まれる

ヒット商品が必要とされるのは,提供できる品数が少ないからである。もし商品棚や電波に少ししかスペースがなければ,いちばんよく売れるものだけを並べるのが賢いのであり,そしてほかに選択肢がないなら,人々はそれしか買わない。(p. 18)

ヒット商品は,売り手側によって生み出される。

ロングテール」という概念の誕生

統計学では,そうした曲線のことを「ロングテールド・ディストリビューション(裾の長い分布)」と呼ぶ。曲線の裾[テール]がてっぺん[ヘッド]に比べて長いからだ。僕は曲線のテールの部分に注目し,正式名に用いることにした。「ロングテール」の誕生である。(p. 20)

ロングテールは,クリス・アンダーソン氏が名づけたのか。

アマゾンを支える見えないインフラ

アマゾンでの買い物を可能にしてくれる,インターネット以外の要素を考えてみよう。宅急便,ISBN(国際標準図書番号),クレジットカード,リレーショナル・データベース,バーコードだ。(p. 57)

様々な要素を掛け合わせて,アマゾンでの買い物が可能となる。

オープンソース集合知

誰でもプロジェクトに貢献できる「オープンソース」ソフトウェアの世界では,「みんなで見ればどんなバグでもささいなことさ」というのが決まり文句のようになっているが,天文学もそうなのだ。みんなの目がたくさん集まれば,新しい小惑星が見つかって名前がつけられる。しかも地球に向かってきそうなら早めに対処できる。(p. 81)

どんばバグもささいなことさ。バグは直せばよい。

評判という新しい「通貨」

作家のダニエル・ピンクがこう書いている。

ウィキペディアは地位の確立した権威ではなく,徹底した分権化と自己組織化に信を置くもっとも純粋な形のオープンソースだ。ほとんどの百科事典は紙に印刷された瞬間から化石になっていくが,ウィキのソフトと人手があれば,自己修復をつづける生きた辞典ができる。一風変わった製造モデルだが,スピードが速く流動的で,しかも修正可能な無料の製品を生み出している。(p. 87)

変化が激しい領域で,ドキュメントをまとめるなら,ウィキが最適だろうか。

いっぽうテールでは,生産と流通のコストが(デジタル技術の民主的な力で)低く抑えられ,利益はしばしば二の次とされる。創造の目的は自己実現,楽しみ,実験などさまざまだ。経済的な動機があるとすれば,現金とおなじくらい人を動かせる貨幣の存在だろう。「評判」という貨幣である。評判は商品の注目度の高さで測られ,仕事,保有権,顧客などあらゆる類の価値と交換することができる。(p. 96 - 97)

ページビューが数十に満たないページを作るモチベーションは,「誰かの役に立ちたい」という思いだろうか。

参入障壁を下げるテクノロジー

自分と同程度の才能の人間が人気を集め,新しいことを楽しそうにやっているのを見たらみんな自分もやりたくなる。経済用語を使えば,パンク・ロックは生産への「参入障壁」を低くしたと言える。(p. 108)

生成AIなどの技術は、プログラミングやコンテンツ制作への参入障壁を下げ、誰もが創造に参加できる環境をつくり出している。

ヤフーの評価づけ,グーグルのページ順位,マイスペースの友達,ネットフリックスのユーザー・レビュー。これらはすべて集合知 (wisdom of the crowd) を利用している。(p. 137)

Web ページをよりよくするため,集合知を利用することを考えてみよう。

スタージョンの法則と情報の選別

ウェブの世界だけではなくどこにでもクズはある。「なべてこの世は九割がガラクタ」というのはスタージョンの法則(SF 作家のシオドア・スタージョンに由来)だ。(p. 151)

情報の洪水の中で価値あるものを見極める力が求められる。会社のハードディスクに眠るデータの多くも、実は不要なものである可能性が高い。

オントロジーと情報整理の技術

情報科学では,何をどこに置くかという難しい問いのことを「オントロジー」問題という。オントロジーという言葉の意味は分野によって異なるが,図書館と IT 業界の人たち(それと自覚はないかもしれないが店長たち)にとっては,物事を体系化して整理する方法のことを指す。(p. 200)

体系化して整理したい物事は,いくつか思い浮かぶ。

「サティスファイス」のすすめ

現代の豊穣さが持つこうしたマイナス面の処方箋としてシュワルツがすすめるのは,消費者が社会科学用語でいう「マキシマイズ」(完璧を求める)をしないで「サティスファイス」(そこそこで満足する)することだ。つまり,もっと他にいいものがあるかもしれないと思うより,手元にあるものを受け入れた方が幸せだということだ。(p. 217)

手元にあるもので,満足を感じるならそれでいいではないか。

テクノロジーが個性を奪う危険

自分で何もかも管理できるという幻想を抱かせるテクノロジーは,新鮮なものに驚く能力を私たちから奪う危険がある。趣味が洗練されるどころか,一つのことに固執して同じことを繰り返し,結果,感覚が麻痺してしまう。テクノロジーでつくりあげた小さな自分世界に閉じこもり,生まれ持った個性を生かすことは逆に難しくなっていく。(p. 242)

個性を生かすためには,小さな世界から飛び出そう。

ロングテール・ビジネス成功の鍵

ロングテール・ビジネスを発展させるコツは,まとめると次の二点になる。(p. 276)

  1. すべての商品が手に入るようにする。
  2. 欲しい商品を見つける手助けをする。

コツがわかったとしても,ロングテール・ビジネスの覇者 Amazon に対抗するのはやめた方がよさそうだ。

成功するための九つの鍵

ロングテールの集積者として成功するための九つの法則(p. 277 - 285)

  1. 在庫は外注かデジタルに
  2. 顧客に仕事をしてもらう
  3. 流通経路を広げる
  4. 消費形態を増やす
  5. 価格を変動させる
  6. 情報を公開する
  7. どんな商品も切り捨てない
  8. 市場を観測する
  9. 無料提供を行う

Web コンテンツを提供する者として,成功するための参考にする。

おわりに

ロングテールは、売れない商品が無価値であるという常識を覆す概念である。

ニッチな価値を集積し、評判や知識を通じて新たな経済圏を築く可能性を示してくれる。

個人の創造や情報発信においても、十分に応用可能な考え方である。