『結界(上)』(津谷一,ダイレクト出版,2022年8月5日),『結界(下)』(津谷一,ダイレクト出版,2022年8月5日)を読了。
結界(上)
今の若者の多くは,佐々木自身の世代も含めて,ひたすらに ”醒めて” いる。必要なものはすべて周囲にあふれているのに,いや,むしろそのせいなのだろうか,夢や希望,あるいは何かを成し遂げたいという強い欲求が最初からほとんどないのだ。無痛空間の時代,とでも表現すべきだろう。(位置 No. 1157)
なぜ,若者から夢や希望,何かを成し遂げたいという強い欲求が失われたのだろうか。
「あそこに美しい蓮の花がたくさん咲いているだろう。あれは決して透き通った水から咲くわけじゃないぞ。あの下は,一寸先さえ見えない汚れた世界なんだ。蓮は,その汚泥の中をまっすぐに抜けて水上に顔を出して,あの美しい花を咲かせるんだぞ」(位置 No. 3595)
美しい花の下には,汚れた世界がある。
長岡,新潟,上越,富山,そして佐渡全域で大規模停電です!こちらの監視網がすべて機能しなくなります。これは完全なる軍事攻撃です!(位置 No. 4041)
日本の電力系統を考えると,長岡,新潟,上越の停電に富山が加わるのは違和感。
この「ディープ・ステート」という言葉に,佐々木はひそかに反応していた。最近,この言葉をたまに聞くようになってはいた。主に陰謀論者たちが好んで使う用語だが,つまり今のアメリカ政府が,実はアメリカ国民の代表ではなく,巨額資金を持つ国際金融資本という名の銀行家たちや,軍産複合体,さらには大手メディアといった,一握りの既得権益層によって操られていると説明されるときに使用される。(位置 No. 4463)
既得権益層に操られるような政治家でよいのか。
結界(下)
「これで諸外国の若者が,日本の若者と同じくらいにナヨナヨになりゃあだな,それはもう,敵をも無力化する完全な兵器や。そうやって,世界全体が仲良くなりゃあええ。つまりこのアニメ文化,オタク文化というのは,日本が誇るべき安全保障戦略上の『秘密兵器』なのや」(位置 No. 32)
アニメ文化,オタク文化が世界平和の切り札となるか。
「そもそも,中国の拡張主義に直面している今の日本にとって一番大切なのは,何とかアメリカの強大な軍事力を,日本にとってまったく有利な形で西太平洋から極東地域に引き続き張り付けさせることだ。それを考えた時,アメリカを敵に回すことは何の利益にもならない」(位置 No. 2232)
アメリカを敵に回すことは現実的ではない。
「去勢をすると,牛というのはとにかく性格が穏やかになって,他者への反抗は考えなくなるんですよ。征服欲もなくなる。人間に転じれば,去勢すると人口も減りますわな。これは今のニッポンとまったく同じです」(位置 No. 2967)
今のニッポンは,去勢された牛と同じなのか。
「今の日本人はほとんどみんな不甲斐ないんだわ。自分の命をかけて誰かのために戦うことをみんなが忘れている」(位置 No. 3755)
命をかけて誰かのために戦わざるを得ない環境になったとして,日本人は甲斐性を取り戻すだろうか。