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現役サラリーマンのスキルアップのための読書まとめ

失敗の科学

『失敗の科学』(マシュー・サイド 著,ディスカヴァー・トゥエンティワン,2016年12月25日)を読了。

「クローズド・ループ」「オープン・ループ」はもともと制御工学で用いられる用語だが,本書では意味が異なる。ここでいう「クローズド・ループ」とは,失敗や欠陥にかかわる情報が放置されたり曲解されたりして,進歩につながらない現象や状態を指す。逆に「オープン・ループ」では,失敗は適切に対処され,学習の機会や進化がもたらされる。(位置 No. 243)

失敗をオープンにすれば,学習の機会や進化がもたらされる。

失敗は,予想を超えて起こる。世界は複雑で,すべてを理解することは不可能に等しい。だから失敗は,「道しるべ」となり我々の意識や行動や戦略をどう更新していけばいいのかを教えてくれる。

何か失敗したときに,「この失敗を調査するために時間を費やす価値はあるだろうか?」と疑問を持つのは間違いだ。時間を費やさなかったせいで失うものは大きい。失敗を見過ごせば,学習も更新もできないのだから。(位置 No. 545)

失敗に学ぶ,というのは至言。

ハドソン川の奇跡」の数カ月後,あるテレビ番組のインタビューで彼(サレンバーガー機長)は我々に貴重な知恵を授けてくれた。

「我々が身に付けたすべての航空知識,すべてのルール,すべての操作技術は,どこかで誰かが命を落としたために学ぶことができたものばかりです。(中略)大きな犠牲を払って,文字通り血の代償として学んだ教訓を,我々は組織全体の知識として,絶やすことなく次の世代に伝えていかなければなりません。これらの教訓を忘れて一から学び直すのは,人道的に許されることではないのです。(位置 No. 665)

血の代償として学んだ教訓は,次世代に伝えていく。

我々は外発的な動機より,自尊心を守りたいという内発的な動機のほうに支配されやすい。たとえ負け株を持ち続けて大きな損を出すことになっても,自己正当化を続けてしまうのだ。(位置 No. 1508)

私も自尊心を守りたいがため,塩漬けしている負け株がいくつもある。

進歩や革新は,頭の中で美しく組み立てられた計画から生まれるものではない。生物の進化もそうだ。進化にそもそも計画などない。生物たちがまわりの世界に順応しながら,世代を重ねて変異していく。(位置 No. 1772)

神ではないのだから,最初から美しく組み立てることなどできるはずがない。

完璧主義の罠に陥る要因はふたつの誤解にある。1 つ目は,ベッドルームでひたすら考え抜けば最適解を得られるという誤解。この誤解にとらわれると,決して自分の仮説を実社会でテストしようとしなくなる。ボトムアップよりトップダウンの方式に重点を置くと生まれやすい問題だ。

2 つ目は,失敗への恐怖。ここまで見てきたように,人は自分の失敗を見つけると,隠したり,はじめからなかったことにしたりする。しかし完璧主義者はいろんな意味でさらに極端だ。失敗をなくそうと頭の中で考え続け,気づけば「今欠陥を見つけてももう手遅れ」という状態になっている。これが「クローズド・ループ現象」である。失敗への恐怖から閉ざされた空間のなかで行動を繰り返し,決して外に出て行こうとしない。(位置 No. 2004)

自分の頭の中を紙に描いて,誰かにぶつけてみる。一人で悩むだけでは物事はよくならない。

イギリスの著名な政策アナリスト,デイヴィッド・ハルパーンは次のように指摘する。

「行政分野の多くでは,この種の検証(RCT)はまったく実施されていません。直感や勘,個人的な思い入れに頼っているんです。行政分野以外でも,状況は変わりません。何が効果的で何がそうでないのかよくわからないまま,当てずっぽうでやっているようなものです。正直言って実に恐ろしい状況です」(位置 No. 2320)

行政分野でも RCT を導入して,少しずつ妥当な方向へ進んでいく。

実は,我々の脳には一番単純で一番直感的な結論を出す傾向がある。この傾向には「根本的な帰属の誤り」という堅苦しい名前がついている。簡単に説明するとすれば「人の行動の原因を性格的な要因に求め,状況的な要因を軽視する傾向」だ。(位置 No. 3081)

世の中はそんなに単純ではない。

失敗から学べる人と学べない人の違いは,突き詰めて言えば,失敗の受け止め方の違いだ。成長型マインドセットの人は,失敗を自分の力を伸ばす上で欠かせないものとしてごく自然に受け止めている。

一方,固定型マインドセットの人は,生まれつき才能や知性に恵まれた人が成功すると考えているために,失敗を「自分に才能がない証拠」と受け止める。人から評価される状況は,彼らにとって大きな脅威となる。(位置 No. 3506)

私は成長型マインドセットの人でありたい。

互いの挑戦を称え合おう。実験や検証をする者,根気強くやり遂げようとする者,勇敢に批判を受け止めようとする者,自分の仮説を過信せず真実を見つけ出そうとする者を,我々は賞賛するべきだ。

「正解」を出した者だけを褒めていたら,完璧ばかりを求めていたら,「一度も失敗せずに成功を手に入れることができる」という間違った認識を植え付けかねない。複雑すぎる社会では,逆にそうした単純化が起こりがちだ。もしその間違いを正すことができれば,我々の生活に革命が起こると言っても過言ではない。失敗に対する自由な姿勢は,企業,学校,政府機関などほぼすべてのあり方を変える。もちろん簡単なことではないし,抵抗も受けるだろう。しかしその壁を乗り越えていくだけの価値はある。(位置 No. 3818)

失敗する人を称える。その失敗を正していくことができれば,革命につながる。

更新履歴

  • 2022年1月19日 新規作成