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原発ゼロで日本経済は再生する 吉原 毅

2020年10月1日作成

原発ゼロで日本経済は再生する』(吉原 毅,角川oneテーマ21,2014年4月10日発行)を読了。

「海外からの化石燃料への依存度が高くなっている現実を踏まえると,そう簡単に『原発をやめる』と言うわけにはいかない。再稼働の状況などを見極め,できるだけ速くエネルギーのベストミックスの目標を設定していきたい」(2014年1月28日,安倍晋三首相)(p. 10)

責任ある首相が言う「原発をやめる」と言うわけにはいかない,という言葉は重い。
一野党の党首が「原発ゼロ」を簡単に口にするのとは,わけが違う。

「エネルギー基本計画」に向けたパブリックコメントに対する日本商工会議所の意見 (p. 15)

  • 原子力を「基盤となる重要なベース電源」と位置づけていることを高く評価する
  • 安全が確認された原発の早急な再稼働が必要である
  • より安全性の高い原子炉へのリプレイス(建て替え)などの実施が重要である
  • 安全が確認された原子炉について40年を超えて稼働させることも重要である

原子力を推進する日本商工会議所の意見を,マスコミでも取り上げて,しっかり発信する。

アメリカのロナルド・レーガン大統領の経済政策レーガノミクスにちなんだアベノミクスは,次の「三本の矢」を柱としている。(pp. 42-44)

  1. 大胆な金融政策
  2. 機動的な財政出動
  3. 民間投資を喚起する成長戦略

アベノミクスにより,景気がよくなったのか。
それとも,ただ歴史の巡りあわせで景気がよくなったのか。

金融の世界には「融資の基本五原則」がある。(p. 90)

  1. 安定性(融資が期日に確実に回収されること)
  2. 収益性(リスクに見合った適正な利潤を確保すること)
  3. 成長性(企業の健全な成長に資する融資であること)
  4. 流動性(継続・反復して行われ,資金が流動的に回転すること)
  5. 公共性(社会的に問題があるような融資は行わないこと)

「融資の基本五原則」は,株式投資にも当てはまる。

「富士山の秀麗な姿には誰しも目を奪われるが,白雪に覆われた気高い頂は大きく裾野を引いた稜線があってことそびえる。日本の経済もそれと同じで,大企業を富士の頂としたら,それを支える中小企業の広大な裾野があってこそ成り立つ。その大切な中小企業を支援するのが信用金庫であり,その役割は大きく,使命は重い」(城南信用金庫 第三代理事長 小原)(pp. 144-145)

大企業ばかりでは,経済は成り立たない。
裾野となる中小企業があってこそ,経済は成り立つ。

 自己責任とは欺瞞に満ちた言葉だ。売った側は責任を負わないという無責任原則ということで,一種のまやかしである。売った側,買った側の双方に責任が発生するのが本来の良識ある人間社会だが,金融自由化は日本が大切にしてきた文化やコミュニティーを喪失させるという副作用を持っていたのだ。(p. 182)

自己責任という言葉で,弱い者を切り捨ててしまうというのも手ではないか。

 17世紀のフランスの哲学者であり,数学者としても有名なルネ・デカルトを祖とする近代合理主義哲学は,抽象的な概念である「数」を通じて世界を支配することを命題としている。デカルトは神の存在を証明したいと欲し,神学から哲学を解放させるために幾何学を駆使。著書『方法序説』(1637年)において有名な命題「我思う,ゆえに我あり」を残している。しかし,自らが主体となることを強く望み,欲望を実現させるための道具として数を生み出していった過程で,人間の心にはある種の思い上がりが生じてくる。(p. 184)

「数」を通じて世界を支配することはできるのか。

 アメリカの心理学者ダグラス・マグレガーが提唱した「XY 理論」は非常に興味深い。マグレガーはまず人間を性悪説と,性善説に基づいて二つのモデルに分類する。

X理論「怠けたがる生き物で,責任を取りたがらず,放っておくと仕事をしなくなる」

Y理論「進んで働きたがる生き物で,自己実現のために積極的に問題を解決する」

X と Y では,圧倒的に X の方が多いだろう。
私は X と Y のどちらに分類されるだろうか

 学問とは人々がよりよき社交をして,よりよき社会をつくるためにある。日本が多くの外国と対等に付き合い,よりよき国際社会をつくる。我が日本国は独立国として,世界と対等な立場で共存共栄するためにいま,学問をしなければならない,と。(福澤 諭吉『学問のすすめ』の要約)(p. 232)

学がなければ,対等な立場で語ることはできない。

原発ゼロで日本経済は再生する (角川oneテーマ21)

原発ゼロで日本経済は再生する (角川oneテーマ21)

  • 作者:吉原 毅
  • 発売日: 2014/04/08
  • メディア: 新書