Masassiah Blog

現役サラリーマンのスキルアップのための読書まとめ

マネジメント信仰が会社を滅ぼす 深田 和範

2020年7月3日更新

『マネジメント信仰が会社を滅ぼす』(深田 和範,新潮新書,2010年12月20日発行)を読了。

 私は経営コンサルタントをしているが,この 10 年間,経営者や管理職がマネジメント信仰を強め,理論や手法にこだわりすぎるようになったためにビジネスが弱体化し,業績不振に陥ってしまった企業を数多く見てきた。(p. 5)

マネジメントは,利益を生み出さない。
利益を生むためにはどうすればよいのか,考えることこそがビジネスである。

「絵に描いた餅」にすぎない事業計画の策定に多大な時間と人を割く。自分達で構築した複雑な情報システムや人事制度の運用に振り回される。しかし,業績回復のためにやらなければならないことには着手せずに目をつぶる。業績回復という困難な課題に触れたくないために,マネジメントにこだわって,現実逃避や時間稼ぎをしている傾向が強くなっている。(p. 16)

「絵に描いた餅」を策定すれば,何かやっている感じになるが,実際には何も成し得ていない。
計画はあってしかるべきだが,真の課題にぶつかっていくことこそが,壁を破る近道なのではないか。

 マネジメント信仰に陥った経営者や管理職は,何でもかんでも消去法によって判断する傾向が出てくる。その傾向が続くと,大胆な策を講じることができなくなり,また,面倒くさい判断を避けるようになってしまう。このような状態になった企業は,ズルズルと業績を悪化させていくことになる。(p. 38)

無難な選択では,ビジネスに勝ち抜くことはできない。
大胆な理想を語ってみることが大事なのではないか。

「都合のよいことばかりを考える」傾向の典型的な症状
「あるべき論」や「雰囲気」で方向性が決まる。一度決まると,その方向性に沿うような都合がよいことしか考えない。
様々な計画にそれを策定する人の「見栄」や「保身」が感じられる。ありきたりなことでも重大なことのように取り繕った計画が作られる。あるいは,実現できないような計画や目標が策定される。
現実的な厳しい話を嫌い,甘い話にしか興味を示さなくなる。地道な仕事は損という感覚が広がり,目立つ仕事に多くの人が群がり,その奪い合いをはじめる。
反対意見が出ることを嫌う。満場一致で決めようとする。これは,仮に失敗しても「満場一致で決まったのだから仕方がない」ということになり,責任の所在を曖昧にすることができるからである。(p. 54)

自分が所属する組織を考えると,典型的な症状が全て当てはまる。
都合のよいことばかりを考えないで,現実を見て,愚直にそれを改めていくしか道はない。

「ウチの会社の常識は世間の非常識」と冗談半分で言う人がいる。しかし,このようなことが本当に生じてきたのであれば,会社の論理と社会の価値観との間に何らかのズレが生じている証である。それを放っておくと,「顧客よりも組織を重視する」傾向が強まり,最後には社会から淘汰されることにもなりかねない。(p. 78)

会社の常識と世間の常識のギャップに気がつくことができたのならば,それはおかしいことで,改めていかなければならない。

 不祥事を防ぐには,マニュアルを整備するとか,チェック体制を厳しくするなどのマネジメントを強化するのではなく,社員一人ひとりが顧客や市場の目を意識してビジネスに対する倫理観を持つようにすることこそが重要である。マネジメントを強化したところで,不祥事が発生した場合に「当社は厳格なマネジメントをしていました」という弁解ができるぐらいで,本当の不祥事防止策を講じたことにはならない。(p. 86)

社員一人ひとりの意識は,果たしてどのレベルにあるのだろうか。
アンケートなどで,過去に比べて意識がどうなっているのか,調べる必要があるのではないか。

 多くのルールや制度がある会社ほど,経営がしっかりしていて,業績も安定しているものと思い込みがちだが,実際はそうでもない。むしろ,このような会社では,経営者や管理職がルールや制度を運用することばかりを考えて,ビジネスへの取り組みが疎かになっているため,業績が低迷していることが多い。(p. 120)

ルールを守ること,制度を運用することが仕事になっているが,それらは利益を生み出すだろうか。いかに効率良く,仕事をこなしていくかを考えなければならない。

 学校教育において私達は,自分の意志を持つのではなく,一般的に正しいとされる考え方や方法を知識として持ち,それに基づいた意見を述べ,行動をするように仕向けられている。だから,今さら「自分の意志を示せ」と言われても対応できなくなっている。(p. 152)

考えることができない人が増えているという。
学校教育のあり方が,今日の日本の停滞を招いていることを,教育関係者はしっかり自覚すべきである。