2020年3月21日更新
『ブロックチェーン × エネルギービジネス』(江田健二著,株式会社エネルギーフォーラム,2018年6月20日 第一刷発行,2019年2月21日 第四刷発行)を読了。
自宅での電気利用が少なく,電気が大量に余る家庭であれば,近隣の家や地域の家庭に電気を販売したいというニーズが自然と生まれるでしょう。つまり,2030 年ごろには,200 万以上の各々異なった事情やニーズを持つ小さな小さな発電所が日本中に出現します。(p. 42)
家庭で電気をつくり,貯められるようになったとき,電気の地産地消が実現する。
負の連鎖に陥る送電網(pp. 42 - 43)
利用率低下,託送収入の減少 → 電力網整備費用の枯渇 → 託送料金の値上げ → 利用者離れの加速,自宅での発電
送電網が必要であれば,負の連鎖に陥らないような仕組みが求められる。
エネルギー業界特有の壁(pp. 68 - 73)
- 規制・ルールの壁
エネルギー業界は,非常に重要な社会インフラであるため,多くの細かな規制やルールが存在- 自己矛盾の壁
ブロックチェーンという仕組みを維持していくには非常に大量の電力を必要- 心の壁
電気が「いつでも,どこでも,好きなだけ」利用できるようになる,今までできなかったことが実現する,自分の生活が便利になり豊かになるという将来をしっかりと伝えることで,心の壁を越えていく必要
まずは,「規制・ルールの壁」を乗り越えていきたいが,最もハードルが高そう。
このころになると電気は,電気単体ではなく,さまざまなサービスとパッケージで販売されています。例えば,EV や家電,ロボットを購入すると,3 年間割安で充電できるパッケージ。外出中にどこでもスマートフォンやパソコンを充電できる月額ワイヤレス充電プラン。自分の生活スタイルに合った電気の購入をサポートしてくれる AI 搭載の蓄電池とのセット販売などです。電気を売ったら終わりの時代から,売ってからも継続して消費者との関係を持つことで課金していくビジネスに変化していきます。(pp. 108 - 109)
電気の売り方が変わってくる未来。
どんな売り方がよいか。
将来的には,電気を売らない電力会社が現れます。彼らは,プロシューマ―と協力し,電力が足りない人と余っている人をマッチングする電力会社です。つまり,電気の発電と消費の両方を行うプロシューマ―同士,最適に電力を融通し合えるよう支援することを事業とするので,「販売も発電もしない電力会社」なのです。この新しい形態のエネルギー会社は,電気に関する専門知識と,ブロックチェーンなどのデジタルテクノロジーを活用して,電気の流れを効率的に最適化することをビジネスとしています。電気を販売して収益を得るのではなく,最適化したい家庭や企業から会費,手数料収入を得るビジネスモデルです。(pp. 130 - 131)
発電しなくても,電気が足りない家庭と電力が余っている家庭を,マッチングできれば,ビジネスが成り立つか。
地域におけるピアツーピア取引を実現する「Brooklyn Microgrid」を実施しています。ユーザーが余剰電力を直接近隣の人たちに売ることができるマイクログリッドを展開し,再生可能エネルギーの地産地消の実現を目指しています。(p. 140)
再生可能エネルギーの地産地消のパイオニアは「Brooklyn Microgrid」。
現在の託送料金制度は,中央集中型電源を前提としており,数メートル離れた隣家に電気を融通するために,数百キロ離れた発電所から送配電するときと同じ託送料金を払う仕組みになっているため,同一地域内での電力融通が経済的には有利になりません。(p. 155)
中央集中型電源から分散電源へシフトしたとき,託送料金制度も大きく変わらなければならない。
本書の「はじめに」で,エネルギーが「いつでも,どこでも,好きなだけ」使える“空気”のような存在になることが大切だと述べました。ここに少し,付け加える必要があります。
それは,「世界中の誰もが」です。なぜなら,日本にいる私たちは,電気についてあまり気にせず生活ができる,非常に恵まれた環境にいるからです。第 2 章でも紹介しましたが,電気のない生活をしている人は 10 億人以上に及び,日本の人口の約 10 倍です。(p. 193)
電気のない生活をしている人は 10 億人いることを心に刻んでおく。
世界中の誰もがエネルギーを「いつでも,どこでも,好きなだけ」利用できる時代がいつごろ実現するのかは,私たちひとり一人の手に委ねられています。世界の人口は約 75 億人。日本だけの「75 分の 1 の視点から 75 分の 75 の視点へ」と目線を上げていくことが大切です。(p. 194)
日本だけの視点ではなく,世界の視点で考える。