Masassiah Blog

現役サラリーマンのスキルアップのための読書まとめ

電力改革――エネルギー政策の歴史的大転換

『電力改革――エネルギー政策の歴史的大転換』(橘川武郎講談社,2012年2月20日)を読了。

原発の今後のあり方を論じる際に最も重要な点は,「反対」,「推進」という原理的な二項対立から脱却し,危険性と必要性の両面を冷静に直視して,現実的な解を導くことである。(13 ページ)

2023年,「反対」,「推進」という原理的な二項対立から脱却し,危険性と必要性の両面を冷静に直視して,現実的な解を導けているだろうか。2012年の時点より,少しは前進しているが,二項対立は続いているように思われる。

電力業は公益性の高い産業であるが,わが国の場合には,国営化や公営化の途を選んだ多くのヨーロッパ諸国と異なり,民営で電力業を営むという方式を選択した。つまり,民有民営の電力会社が企業努力を重ねて,「電気を安く安定的に供給する」という公益的課題を達成する,民間活力重視型の方針を採用したわけである。(43 - 44 ページ)

民有民営の電力会社が企業努力を重ねて,「電気を安く安定的に供給する」というシステムがうまくいっているとき,それを当たり前と感じる。そして,電力会社の企業努力とは別の次元(例えば,燃料費の高騰)で電気を安く安定的に供給できなくなったとき,電力会社の企業努力が足りない,という人が一定数いる。それは悲しいことだ。

石油ショックのトラウマ」により安定供給至上主義が浸透する一方で,電気料金は上昇し,「低廉な電気供給」は過去のものになった。電力会社は,「お役所のような存在」になり,民間活力は後退した。1990 年代半ばから始まる電力自由化を必然化するような状況が形成されていったのである。(54 ページ)

電力会社の民間活力が後退したから,電力自由化で刺激を与えたのか。その刺激により,電力会社は民間活力を取り戻したか。

日本電力業が長いあいだ「民営公益事業方式」を採用してきたことを考え合わせれば,日本電力業発展のダイナミズムは,民有民営の電力会社が企業努力を重ねて,「電気を安く安定的に供給する」という公益的課題を達成しようとする民間活力に求めることができる。(62 ページ)

これからも民有民営の電力会社の民間活力に期待してもよいか。

歴史的経緯をふまえると,日本の電力産業にとって電力自由化は,経営の自立性を再び構築する,貴重な機会だと言うことができる。つまり,電力自由化のいっそうの進展は,電力会社による経営の自律性の再構築を促進し,ひいてはエネルギー・セキュリティの確保に資するわけである。(124 ページ)

電力自由化は,電力会社による経営の自律性の再構築をどこまで促進できたか。電力・ガス取引監視等委員会をなくすくらい,自由にやらせてみてはどうだろうか。

電源開発面から見て,日本の電力業は,

  1. 石炭火力発電中心(1887年~1990年代)
  2. 水力発電中心(1910年代~1950年代)
  3. 石油火力発電中心(1960年代~1973年,1960年代初頭は石炭火力中心)
  4. 原子力発電を中心に LNG 火力発電と海外炭火力発電を加えた電源の脱石油化(1974年以降)

という,四つの大きな時代を経験してきた。(172 ページ)

2011年の福島第一原子力発電所の事故以来,(無理やり)再生可能エネルギー電源開発を行ってきた。原発事故がなければ,今日の電源構成はどうだったのか気になるところ。