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電力系統進化論

『電力系統進化論』(山口 博,次世代系統懇話会,日本電気協会新聞部,2023年10月31日)を読了。

電力系統は生物のように成長し続ける。これは,学生時代に教わった電力系統の特徴の一つである。(p. 3,横山明彦)

電力系統は生物のように成長し続ける,これは言い得て妙。

交流の電力系統を安定運用するために,次のような工学的な要件を満足させる必要があり,これが満足されない場合は,電力取引市場が成立しない。(p. 19)

  1. 送電線や変圧器等の設備の熱容量を超過させない
  2. 周波数を維持する
  3. 電圧を維持する
  4. 系統安定度を維持する
  5. 短絡・地絡故障電流を設備能力以内に維持する

交流の電力系統を安定運用するための要件は,確実に満足させる必要がある。

「全社を挙げて効率化を進めているのに,”無効電力”とは何ごとかー?」

電力経営トップが真顔で怒ったというエピソードがまことしやかに伝わるほど,”無効電力” は理解されがたい。(p. 160)

業界以外の人に無効電力のことを説明するのは,大変難しい。

システムとしての電力系統には,まずもって,

  1. 電力系統は電気エネルギーを大規模に貯蔵できない(生産と消費が同時)
  2. 電力系統の動的特性は全体的であると同時に局所的でもある(電力系統は有効電力と同時に無効電力も過不足なく供給できなければならない)

――という特徴がある。(p. 210 - 211)

電力系統はシステムとして理解する。

次世代系統懇話会では,脱炭素化社会に向けた電力系統の次世代像について「集中電源と DER との統合型のエネルギーシステムであり,その役割は『送る・配るというバリューチェーン』から『電気の価値(キロワット時,キロワット,デルタキロワットと非化石価値など)の多様な取引が行われるプラットフォーム』に変容していく」と想定する。(p. 243)

送配電会社は,送る・配るだけでなく,電気の価値を実現するプラットフォーマーとしての役割を担っていくのか。

「電力系統は発送変電から配電,需要設備に至るまでが有機的に一体となったシステムであることから,基幹系統,需要地系統がそれぞれ独自に振る舞うのではなく,系統一貫の協調が取れた計画・設計・運用・保守の下で最高度のパフォーマンスを発揮し,社会的便益(S + 3E)を最大化することが必要である。これが電力系統を『システムで捉える』ことの真骨頂といえる」(p. 248)

電力系統の進化に貢献できる人でありたい。