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グリッドで理解する電力システム 岡本 浩

2021年2月18日

『グリッドで理解する電力システム』(岡本 浩*1日本電気協会新聞部,2020年12月9日初版第1刷)を読了。

以前からある地域の電力会社(旧一般電気事業者)が「発電・送配電・小売」を 1 社で担う体制,これを「Utility 1.0」と呼んでいます。経済成長に伴い,とにかく産業や生活に必要な電気の量が増え,それに応えていく時代には,非常に効果的なシステムだったといえます。

そして 2020 年 4 月からの送配電部門の法的分離後,今の時代を「Utility 2.0」と位置付けます。送配電システムという電力ネットワークも含めて,よりオープンな電気事業の姿へ変貌する変革期です。電力供給における機能を分解し,新たに市場で取引をしていく仕組みも順次導入されます。技術革新を背景に新たなビジネスが出現し,電気事業のビジネスモデルも多様化するなかで,「電力システムについて正確に理解すること」は,以前に増して重要となります。(p. 18)

送配電部門の法的分離後,どれだけ電気事業はオープンになっただろうか。電力システムについて,世間はどれだけ正確に理解しているだろうか。

電力系統は複雑な流通システムですが,量の過不足なく電圧や周波数の安定した電気を送り続けることを「電力の安定供給」と呼んでいます。安定供給を日々全うしていくことが,一般送配電事業者の最も大切な使命です。(p. 47)

安定供給は,一般送配電事業者にとって大切な使命かもしれないが,一般の人にとって,安定供給は当たり前になりすぎている。

最新の EV であるテスラモーターのモデル 3 は,大容量(75 kWh)のバッテリーを搭載し,航続距離は 580 km とされています。平均的な家庭の 1 日の電力使用量を 10 kWh 程度(月間使用量 300 kWh)とすれば,約 1 週間分の電気に相当し,停電時でも EV を非常用電源として活用できることがわかります。(p. 50)

冷静に,EV のバッテリー容量を考えると,電気の地産地消は近い将来に実現できるかもしれない。そうなれば,電力ネットワークそのものの価値は下がっていくことは明らかだ。

(安宅 和人)「電気の流れが双方向に」という話はインターネットメディアでのソーシャルネットワーク台頭に似ています。SNS の出現は,消費者がジェネレーター(生成者)になるという,メディアにとっての根本変容でしたから。(p. 182)

双方向になる電気を,いかにコントロールできるか。しかも,設備を増やすなどお金をかけることなく,という条件が加わる。相当,高いハードルだと思う。

(岡本)太陽光発電システムとセットで一般の家庭に蓄電池をどんどん置いていく。家庭用の蓄電池と産業用などの大型電池もネットワークで相互に繋ぎ,ソフトウェア上のプラットフォームで自動的に電力を取引できるようになる。今,思いつくとしたらそこでしょうかね。

(安宅)なるほど,テスラも単独でやるより,東電のような既存の事業者と組んだ方が良いですよ。ものすごい未来を感じます。(p. 188)

テスラは,送配電会社を組むに値する相手と考えるだろうか。

それと,いろいろと明るい将来像を構想したり,課題をどのようにブレークスルーしていくかなどをあれこれ考えたりしていると,結局は「人」の問題に帰着すると感じています。どんな人材を育てていけるか……若い世代には,是非がんばってもらいたいですね。(p. 197)

未来を創造するのは,人でしかない。

グリッドで理解する電力システム

グリッドで理解する電力システム

  • 作者:岡本浩
  • 発売日: 2020/12/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

*1:東京電力パワーグリッド株式会社 取締役副社長