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成熟日本への進路――「成長論」から「分配論」へ 波頭 亮

2020年3月11日更新

『成熟日本への進路――「成長論」から「分配論」へ』(波頭 亮,ちくま新書,2010年6月10日発行)を読了。

ちなみに,日本人の寄付金の額は世界一少ない。貧困による自殺者の数も世界一である。
寄付はしない。弱者を救う必要はない。今,大事なのは経済成長だ。ダム建設は続行しろ。空港をもっと造れ。
日本はこんなことで本当に大丈夫か。(p. 11)

自分さえよければいい,という日本人が多い。
私もその一人であるが。

  1. 日本が成長フェーズから成熟フェーズに移ったために,従来型の国家ヴィジョンと実現のための方法論は無効化した
  2. 現在,新しい国家ヴィジョンが示されていないが故に,政策はダッチロールし,国民は将来に向けての見通しが立たず,不安ばかりが増大している
  3. 今の日本が最も必要としているのは,成熟化フェーズにあって国民が豊かで幸せな生活を送ることができるような社会のしくみと運営のあり方を示す新しい国家ヴィジョンである(p. 25)

成長戦略ではなく,成熟戦略こそ国家ヴィジョンとして示されるべき。

企業も国家も「成長は全てを癒す」と言われるが,「成長が止まると,全ての問題が吹き出す」のである。成熟社会における経済政策の舵取りは,成長社会のそれよりもはるかに難しい。それまでの常識が通用しないことが多く,全く違った政策を採用しなければならない局面が多々存在するのである。(p. 87)

「成長は全てを癒す」そんな時代に生きてみたかった。

アメリカ,イギリスがレーガノミクスサッチャリズムの名の下に行った規制緩和政策によって,沈滞していた米,英の経済は久しぶりの経済成長を果たすことができ,規制緩和政策の有効性が実証された。「ケインズ経済学が終わった」後の経済政策の主流は「規制緩和」になったのである。(p. 99)

例えば,電力業界を規制するのではなく,緩和してみるのはどうだろう。

その事態(アメリカ経済の没落)を受けて当時のレーガン大統領のとった政策が「Nation at a risk(危機に立つ国家)」と題する大統領教書によって宣言した“教育の徹底的強化”であった。大統領の指示によって“ゆとり教育”は廃止され,小中学校の授業時間数の大幅増から大学の教育カリキュラムのレベルアップに至るまで,教育全般にわたる徹底的な強化がただちに実行された。(p. 170)

レーガン大統領の時代,アメリカ合衆国ではゆとり教育が廃止されたのに,その後,日本でゆとり教育が導入されたのはなぜか。

緻密で強固な日本の官僚システムを構築している特長的な四つのファクターについて紹介していこう。四つのファクターとは,

  1. 行政裁量権とデータの独占による「実質的な政策決定権
  2. 人事自治権と共同体ルールによる「組織的結束力
  3. ブラックボックス化した特別会計による「莫大な資金力
  4. メディアの掌握による「プロパガンダ機能

である。(p. 201)

官僚システムを解体することは難しい。
いかに官僚をうまく使うか,政治家にはそれが求められている。

なのに,何故ほとんどの共産主義国で国民が安心して幸せに暮らせる共産主義社会を作り上げることができなかったのか,という原因についてあれこれ話し合ってみたのだ。意見が収斂したのは次の二点である。
人間は天使ではないからということと,貧しかったからということである。(p. 252)

人間は天使ではない,というのは非常によくわかる。
共産主義は天国ではなかった。

ちなみに,本書の執筆に入る直前にさる思想家の方との対談があった。その方が対談の中で「日本の言論者はコンプリヘンシヴ(comprehensive:総括的に分かっていること)でない。だからスペシフィック(specific:局所的であること)な正しいことは言えても,社会のあるべき姿とか,時代が進むべき方向性を見定めることができない」とおっしゃったことが強く心に響いた。(p. 203)

今の日本には,言論者に限らず,総括的な人材が求められている。

成熟日本への進路 「成長論」から「分配論」へ (ちくま新書)

成熟日本への進路 「成長論」から「分配論」へ (ちくま新書)