2020年2月2日更新
『2030年の世界地図帳』(落合陽一*1,SB クリエイティブ株式会社,2019年11月22日 初版 第 1 刷,2019年12月9日 初版 第 4 刷)
安田*2 今後はエネルギーの中心を占める電力を環境負荷の低い形でまかなえるようになり,再生可能エネルギーの単価が下がる。また,蓄電池も耐久性が上がり生産コストが下がるでしょう。エネルギーがほとんどタダ,かつ環境への負担もないとなれば,環境に関するサスティナビリティは概ね解決です。そこまで持っていけるかどうかが唯一の焦点。(p. 126)
再生可能エネルギーと蓄電池が広く普及したとき,現在の電気事業者はどうなってしまうのだろうか。
環境保護意識の高さはシリコンバレーの IT 企業も同様で,グーグルはデータセンターの省電力化による二酸化炭素排出量の抑制を宣言しています。また,アップルもハードウェアの製造過程における二酸化炭素の排出を大幅に抑制する取り組みや,炭素を使わないアルミニウム精錬工程の開発への投資を行っています。(p. 236)
多くの企業が,環境保護の意識に芽生えたとき,電力消費はどれほど低下するのだろうか。
さらに,社会や産業のソフトウェア化によって限界費用がゼロに近づくと,やがてその矛先はエネルギー産業へと向かうかもしれません。なぜなら,無料で提供されているソフトやサービスの限界費用をさらに下げようとすれば,コンピュータやデータセンターの電力コストの削減に行き着くからです。限界費用ゼロを完全な形で実現するには,資源採掘に依存しにくくコスト低下が今後も見込まれる再生可能エネルギーの導入が必然的に求められると考えられます。(p. 248)
電気をほとんどタダで使える仕組みが必要となる。
宇留賀*3 日本独自でいかに自分たちのエネルギーを確保していくのかは最重要テーマといえるでしょう。今も化石燃料を調達するときには「ジャパンプレミアム」といって,アメリカなどよりも高い価格で原油を買わされています。(pp. 267 - 268)
外に依存しない,エネルギー確保が,日本の課題。
宇留賀 実際,分散型エネルギーにかかる買取価格はグッと下がってきています。たとえば,太陽光発電は 1 kWh(キロワットアワー)にかかる発電コストが 10 円から,2025 年には 7 円まで安い価格になると見込まれている。(pp. 270 - 271)
太陽光発電のシンギュラリティは,そう遠くない未来に訪れてしまう。
そのとき原子力発電などの大容量電源は,不要となってしまうのか。
たとえばコンピュータ開発を例に考えてみましょう。近年,脱炭素の機運が高まるにつれて,コンピュータが消費する炭素量にも厳しい目が向けられるようになってきました。特に電力消費が激しいのが,ハードウェアとしてのスーパーコンピュータのような高電力消費のものや,あるいはソフトウェア手法としてのディープラーニングやマイニングなどの長時間の高負荷処理によって価値を生むものです。ディープラーニングの最新モデルの学習に必要なエネルギーを二酸化炭素排出量に換算した場合,一般的な自動車の約 5 倍に及ぶという論文も発表されています。(p. 309)
コンピュータの稼働台数は増え,その電力消費も増え続けていくのか。