Masassiah Blog

Masassiah のブログです。主に読書で得た気づきをまとめています。

デジタルグリッド 阿部 力也

2020年12月16日作成

『デジタルグリッド』(阿部 力也,エネルギーフォーラム,2016年11月1日)を読了。

総括原価主義では,残存簿価に事業報酬率をかけたものが利益ですから,利益を増やしたいと思うと高価な設備の方が望ましくなります。高価なものの方が頑丈で長持ちするはずという点ではよいはずですが,一方で安くて良いものを作ろうという意識が働きにくいことも確かです。

また,新技術を取り入れることは,コスト競争力を高めるうえで必要不可欠な投資のはずですが,総括原価主義で地域独占であれば,競争力を高めようというインセンティブは働きにくくなります。(p. 59)

何十年間も総括原価主義で守られてきた会社が,コスト意識を持つことは難しいだろう。

ハイブリッドな構造をしているセルグリッドシステムは,このような連鎖性を断ち切り,非同期に接続しているため,連鎖停電はなくなります。どこか 1 カ所で不具合が生じても,それはその場で影響が途絶え,すぐにバックアップされ,他の系統にも被害を及ぼすことがありません。

このハイブリッド構造は極めて頑健(ロバスト)で,電力のやりとりは柔軟(フレキシブル)で,どこかにトラブルがあっても,多様なバックアップが可能(リダンダント)な仕組みとなります。(p. 118)

電力系統をインターネットのように使うということ。
電力系統の設備をうまく活用して,そんなことができるのだろうか。

スマートメーターという遠隔で電力消費量を 30 分ごとに読み取る電力量計がやっと整備されるようになりはじめましたが,10 年に一度の更新という約束事ができています。これでは柔軟な仕様変更ができません。今の時代に 10 年間技術革新のない IT 機器というのは使い物にならなくなってしまうでしょう。(p. 159)

スマートメータといいながら,それほどスマートではないのが残念。
「スマート」と名付けたことで,スマートフォンくらいのスマートを期待される宿命を負ってしまった。

日本でも同様の見直しは,いずれ必ず発生します。歪んだ託送料金体系は,必然的に自家発の普及を促し,それにより販売電力量が減少し,送配電網の維持が困難になります。販売電力量が減少すれば料金単価を挙げざるを得ず,料金単価が上がればますます自家発が優位になるという悪循環が起きます。(p. 177)

電力の地産地消がうまく機能すれば,電力系統が不要となってしまう。

しかし残念ながら,クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」で明らかにされたように,優良な大企業であればあるほど合理的な判断を下し,それによれば,現在のビジネスモデルをより洗練された利益率の高いものにしていくことが,最も正しい選択肢であるということになります。そして不確実性の高い,市場規模も全く想定できない異質なビジネスには手を出さないという判断がなされます。場合によっては,そのような異質なビジネスが台頭してきた段階で,それを潰すということが自分たちを守る最もよい道だということになります。

検討に検討を重ねた結果,本業を効率化することが最善の策だという結論になってしまうのです。(p. 231)

電力会社(送配電会社)に,イノベーションは生まれるのだろうか。
イノベーションのジレンマを読む限り,イノベーションが生まれる未来は,なかなか想像できない。

ジェレミー・リフキンは前出の「限界費用ゼロ社会」で,社会の経済生活を形作る財やサービスの多くが次第に限界費用ほぼゼロに向かってじりじりと進み,資本主義の命脈とも言える利益が枯渇する様を精緻に描き出しています。

これはある意味では,資本主義が目指した生産性の効率性が極限まで上がったことを意味しています。資本主義が成功するということは,その結果として,資本主義が崩壊することを意味しているのです。(p. 262)

限界費用ゼロ社会で,生きるために必要なことは何か。
しっかり考えておかないと,時代に流される人になってしまう。

デジタルグリッドの本質は,「基幹系統の信頼性に関する負担を大幅に軽減し,自立可能なセルグリッドとの共存により信頼性を大幅に高め,多様な参入者により劇的なコスト削減を実現し,化石燃料依存から再エネ依存に転換することにある」と言えます。(p. 312)

化石燃料から再エネへの波は来ている。
その波に乗り切る手段の一つはデジタルグリッドか。

現代は,技術革新も社会構造も大変なスピードで変化しつつあります。企業が単独でこれらをキャッチアップするのは,とても困難になってきました。(p. 332)

一つの企業だけで,デジタルグリッドを実現するのは到底無理だろう。
色々な企業と共創することで,実現するしかない。

デジタルグリッド

デジタルグリッド

  • 作者:阿部力也
  • 発売日: 2016/11/01
  • メディア: 単行本