Masassiah Blog

現役サラリーマンのスキルアップのための読書まとめ

「自分」の壁

2019年12月24日更新

『「自分」の壁』(養老孟司新潮新書,2014年6月20日発行)を読了。

自分の書いた論文のことを「排泄物」と表現する人がいます。それも自分の脳の中にあるうちは,自分自身として「えこひいき」していたのですが,外に出したとたんに,見たくないものになったのでしょう。私も自分の書いた本を読み返したいとはあまり思いません。(p. 25)

私の読書メモも,書き終わると読み返したいとは思わない。
ただ,時を経てから読み返すと,当時は何に興味があったのか,何を考えていたのかが垣間見られるかもしれない。

「個性を伸ばせ」「自己を確立せよ」といった教育は,若い人に無理を要求してきただけなのではないでしょうか。身の丈に合わないことを強いているのですから,結果が良くなるはずもありません。(pp. 31 - 32)

「自己を確立せよ」は,高校生~大学生にかけては主たる命題だった。
しかし,今も昔も自分は自分のままで,私の根幹はあまり変わらない気がする。

赤と青の錐状体細胞が感じる光の波長のピークは,変化する人間の顔色のピークと合致していた。つまり,人の顔色の変化の細かいところまで判別するために,他の哺乳類とは別の細胞を持っているというのです。(pp. 44 - 45)

人間は顔色を伺うことを宿命づけられている。

20 世紀の終わりに,多くの科学者を対象にした調査をまとめた『The End of Science(科学の終焉)』という本が出版されました。ここで科学者のほとんどが「科学はすべてを解明しない」と答えてます。
アインシュタインの時代には,こんな考え方はほとんどありませんでした。しかし,すでに科学自体が行き詰まっていることを科学者も自覚しているのです。(p. 72)

科学はこれからも発展していくだろうが,全てを解き明かすことはない。
未解決な問題はいつまでも残り続ける。

参議院を国政のアドバイザーのような位置づけにするのです。議決をせずに,意見を送付するだけでいい。一見地道でも,そういうことを継続して何十年もやっていれば,そのうち「参議院の意見は長い目で見れば正しい」と理解されるようになるでしょう。(pp. 75 - 76)

長期ビジョンを描く企画グループが国にも必要。
枝葉の議論ではなく,日本が進むべき道を示す機関があればよい。

なんでもオープンにして議論すればいいのだけれど,そうはならない。すぐに対立構造ができてしまう。こうなると,結果として責められる側は情報をオープンにできなくなる。オープンにしないことを正当化しているのではありません。ただ,人間の心理としては当然そうなる,ということです。(p. 86)

対立構造が生まれるのはいいとしても,その対立をいかに乗り切るか。
例えば,経済を重視する人と環境を重視する人では,対立を克服できるのか。

要するに,貧乏とは絶対的なものではなくて,周りに金持ちがいるときに強く感じるものだということでしょう。(p. 102)

金持ちと貧乏は相対的なもの。

日本人同士がお互いに信頼していた時代には,不信から生じるコストが低かった。そのことは案外,見過ごされやすいのだけれども,日本の成功の要因だったのではないかな,という気もします。(p. 114)

極端な例として,日の目を見ない資料ばかりを作成することになる。

原発でもダムでも空港でも何でもいいのですが,「絶対反対」と「絶対賛成」の二項対立という構図になると,コストがかかるし,具体的な話ができなくなります。原発問題に関しては,この対立の構図が安全対策を結果的に遅らせることになってしまったわけです。(p. 116)

「絶対反対」と「絶対賛成」の二項対立を克服することは容易ではない。
大局的な立場に立つ者が判断するしかない。
例え,世論とは違う判断だとしても断行すべき。

言葉が動かすことができるのは人の考えだけです。その結果,その人が具体的に動いたときに,はじめて現実が動く。だから現実が厳しくなってきたときに,言葉に誠実すぎる人は結構まずいことをする。現実よりも,言葉に引きずられるからです。(p. 122)

私は言葉に誠実な人間かもしれない。
現実を見る意識を肝に銘じておく。

今の政治で気になるのは,どの政党にも大きな構図,ビッグピクチャーがないという点です。言うことが細かすぎる。本人たちは大きな話をしているつもりかもしれませんが,瑣末な話がほとんどです。(p. 127)

目先の問題ばかりを取り上げて,人気取りをするのはやめてほしい。
日本の 10 年後,50 年後,100 年後の未来を語ってほしい。

「自然破壊反対」「脱ダムだ」といった理念だけでは現実は動きません。この話は「原発反対」ともつながります。廃止は,エネルギー政策全体にかかわることです。原発に限らず,どこかを止めればどこかで不都合が生じる。そうしたことを全部解きほぐしていかないと,原発即時廃止という結論は出てこないはずです。(p. 147)

賛成,反対の意見を持つためには,問題をしっかり解きほぐさなければいけない。
その意味においては,一般市民が賛成,反対の意見を持つことは本来はできないはず。

社会が暗くなった,閉塞感で覆われている,と感じている人の中には,ニュースを見すぎ,読みすぎというケースもあるのではないでしょうか。(p. 195)

暗いニュースではなく,明るいニュースを取り上げることはできないのか。
ワイドショーのコメンテーターが訳知り顔で暗いニュースに対するコメントをするのは飽き飽きである。

「由らしむべし,知らしむべからず(民を治めるにあたっては,施策に従わせることはできるが,その道理を理解させることは難しい。つまり,施策に従わせればよく,その道理を民にわからせる必要はない)」(pp. 196 -197)

施策はしっかり示すが,その道理の細かい点まで,わからせる必要はない。 

「自分」の壁 (新潮新書)

「自分」の壁 (新潮新書)

  • 作者:養老 孟司
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2014/06/13
  • メディア: 新書