Masassiah Blog

現役サラリーマンのスキルアップのための読書まとめ

日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学

日本社会のしくみに課題がありそうだ,と思っている。その課題に立ち向かうため,『日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学』(小熊英二講談社,2019年8月1日)を読んでみた。

(1) 何を学んだかが重要でない学歴重視,(2) 一つの組織での勤続年数の重視,という二つが,「日本社会のしくみ」を構成する原理の重要な要素と考えられる。(p. 4)

私が勤めている会社でも,学歴と勤続年数が重視されている。日本社会の会社にふさわしい。

海老原嗣生によれば,企業は新卒採用者の選抜にあたり,卒業大学のランクを重視している。企業がそれによって評価しているのは,「地頭のよさ」「要領のよさ」「地道に継続して学習する力」といった「ポテンシャル(潜在能力)」だという。この三つの能力があれば,どの部署に配置してもまじめに努力し,早く仕事を覚え,適応することが期待できるからだ。(p. 62)

「地頭のよさ」「要領のよさ」「地道に継続して学習する力」を持つ人は,どの部署に配置されても,うまくやっていることが多い。そう考えると,卒業大学のランクを重視するのは,理に適っている。

どこの社会もそうなのだが,その社会で「あたりまえ」であるような慣行ほど,本や論文を調べてもよくわからないことが多い。その社会の人にとっては当然のことなので,体系的に書いたりはしないからだ。(p. 103)

当たり前のことでも,体系的に文書化しておくと後世のためになるかもしれない。

企業が重視するのは,大学や大学院で何を学んだかよりも,どんな職務に配置しても適応できる潜在能力である。その能力は,偏差値の高い大学の入学試験を突破したことで測られる。他国にもこうした潜在能力を評価する傾向はあるが,日本はその広がりが大きい。(p. 129)

潜在能力があれば,どんな職務でも無難にこなすことができる。

隣の芝生は青く見える。これは経営者も同じだ。

アメリカの経済学者サンフォード・ジャコービィは,こう指摘している。日本の経営者は,アメリカでは簡単に解雇できることをうらやましいと思う。アメリカの経営者は,日本では簡単に人事異動できることをうらやましいと思う。しかし彼らは,相手のうらやむべき点を「可能にさせている交換条件にはとんと無理解」だという。(p. 152)

解雇できること,人事異動できること,社会のしくみがあるから,それらができる。

「兵隊の給料は階級で決まるのであって,今役割を与えられているオペレーションで決まるのではないんだと。職能資格とはそういうものだ,それ(資格等級)で給料が決まるんだと」(p. 243)

階級が同じであれば,職務が違っても給料が同じ。本社と現場では,扱っている課題の大きさ,深さ,広さが全く異なるが,階級が同じであれば給料が同じ。

しかしながら,「しくみ」を変えることは,そう簡単ではない。それは歴史的な過程を経て築かれた合意であり,慣習の束であるからだ。(p. 548)