『「マニュアル」をナメるな! 職場のミスの本当の原因』(中田 亨,光文社,2019年9月30日)を読了。
マニュアル作りは難しい。平凡にマニュアルを作ると,平凡な出来になるのでなく,職場を混乱させる有害な文章の寄せ集めになる。こんなマニュアルは読むだけ時間の無駄なので,誰も読まない。実際,多くの人がマニュアルを読まないという歴とした調査結果があって,これが 2018 年のイグノーベル賞の「文学賞」を受賞している。(位置 No. 3)
私はいくつもマニュアルを作ってきた。私の作ったマニュアルは,どれだけの人に読まれたか,測定してみたい。
マニュアル作成の原則 虎の巻(位置 No. 101)
- 全てを 1 ページ以内に収める。
- 手順を書く。ルール風には書かない。
- 見本で示す。
- 絵・図・写真のビジュアルを使う。
- 指示を断言する。
- 単文・肯定形・大和言葉で書く。
- 工程の途中に味見のタイミングを入れる。
- マニュアルの原稿を部外者や家族に下読みさせる。
- 執筆者の氏名と,更新履歴を明記する。
マニュアルを作成するときの拠り所としたい。
事故が起きても「マニュアルに指示されている手順とは異なる作業をした人が悪い」という言い訳や,「マニュアルには警告が書いてあった」という法的な逃げ道を作るために,マニュアルが作られることがある。(位置 No. 123)
法的な逃げ道を作るためのマニュアルは,私の身の回りに多い。
マニュアルが読者に与えるべきは,「被統制」とは全く逆の「自主的な統制」への助けである。「センス・オブ・コントロール」,つまり,状況全体を把握し,自主的に制御できているという自信がなければ,人間は責任を感じない。それでは,安全も品質も保てない。(位置 No. 145)
統制されていると思わせず,自主的な統制が必要と思わせるマニュアルを作る。
「文章は難解なほど高級だ」とか,「文章の程度とは,その中に含まれる一番難しい内容で決まる」と思い込んでいる人々がいる。こういう人は,マニュアルを「高級」にしたいがために,やたらと難しい内容を織り込みがちだ。(位置 No. 207)
文章は難解なほど高級というのは,文章を作成する人のエゴに過ぎない。
指示を断言で通すという当たり前のマニュアルを書くには,執筆者には責任を負う度胸が求められる。責任を負える地位にいる人でなければ書けない。資格も度胸もない人にマニュアルを書かせると,曖昧マニュアルが出来上がる。(位置 No. 477)
曖昧なマニュアルを書く人は,度胸がないのか。
マニュアルは,読者をできるだけ早く解放してあげるように作る。冒頭だけを読めば,自分に関係があるのかや,自分は何をすべきかが,最速で分かるように文章を組む。読了時間の短さは,マニュアルの性能のひとつである。(位置 No. 570)
マニュアルに何が書いてあるのか,即座にわかるようにしておく。
コンプライアンスとは「法律やルールを守ること」であると,単純に解釈されがちだ。しかし,ルールは守って当たり前である。コンプライアンスで言いたいことは,その効果であり,「組織のモラール(士気,相互信頼感)を守ることを目的としてルールを作り,現場に浸透させること」と捉えるべきである。(位置 No. 980)
コンプライアンスの効果をしっかりと捉える。
人間に 2 つ以上の事を頼むと,一つしかしない。(位置 No. 1575)
人間の性質をよく理解した上で,マニュアルを記載する。