『日本型インダストリー 4.0』(ローランド・ベルガー*1日本共同代表 長島 聡,日本経済新聞出版社,2015年10月14日 1版1刷)を読了。
産業の革新により現在の業界の秩序が破壊され,新たな秩序が生み出される過程で,自社がその新たな秩序の覇権を握り業界スタンダードとなるなかで非競争領域を創造し,自社に利益を誘導したいという,競争戦略上のしたたかな思惑も存在している。(p. 86)
スタンダードになれば,得られるものは多い。
バーチャルパワープラントの例で取り上げたシーメンスの長期ビジョンは,さらにスケールが大きい。10 年後には,世界中で運転している発電所とバーチャルパワープラントを連携させ,電力の需給を担うグリッド全体が最適化された世界を創出したいようだ。(p. 89)
電力会社は,地域内の電力需給を担ってきた。
バーチャルパワープラントにより,電力会社の需給調整はディスラプトされるか。
この「見える人には見えるが,見えない人には見えない」という状態が,企業の競争優位性の構築にとって意味するものは極めて大きい。現在は次の 10 年,20 年の勝ち組と負け組を決する分水嶺にあるといっても過言ではない。勝ち組となりうる企業は,10 年,20 年後の産業のあるべき姿を見据え,「つながる」「代替する」「創造する」というコンセプトの体言に加え,それらを長期ビジョンの中にしっかり組み込んでいる。(p. 99)
現在と同じやり方では,10 年後,20 年後は苦しくなる。
だから,長期ビジョンでありたい姿を描き,それに向かっていく。
ドイツ同様,GDP に占める製造業の割合が大きい日本が抱える問題は,ものづくりの競争力の低下だけでなく,少子高齢化に伴う働き手の減少もある。IoT やビッグデータの活用を強化し,現場の生産性をより高めることはこれからの日本の産業構造を考えると必須の取り組みといえる。(p. 128)
働き手が減るのであれば,現場の生産性を高めるしか活路はない。
生産技術開発,材料技術など,異なる専門性を持った部門の人たちが集まり,知恵を絞ることで数多くのアイディアをひねり出した。そしてひねり出したアイディアをすばやく試してみる。このサイクルを速く回す。この繰り返しが革新を生んだのだ。(pp. 197 - 198)
トライしてみなければ,分からないことは多々ある。
トライ&エラーで,確信を生み出す。
カルロス・ゴーン氏が日産自動車社長就任時からスタートさせたクロスファンクショナルチーム(CFT)も部門をまたいだ見える化を行っていた。1999 年当時,経営危機に追い込まれていた日産は,事業の発展,購買,製造,研究開発,組織と意思決定プロセス,販売・マーケティング,一般管理費,財務コスト,車種削減という 9 つの CFT を編成し,約 3 ヵ月でリバイバルプランを取りまとめた。(pp. 206 - 207)
カルロス・ゴーン氏は,紛れもなくカリスマ経営者であった。
今となっては,過去の話だが…。
マネージャーが取り組みべき活動(p. 223)
- 短期 見える範囲の広がりとともに,これまで以上のオペレーショナル・エクセレンスを追求する
- 中期 革新的な要素技術の導入により,現状のやり方を一部,変える
- 長期 バーチャルでの試行錯誤を駆使し,製品・サービス・提供方法を抜本的に変える
短期・中期・長期の目線で,活動する。
4.0 時代に現場で必要となる 6 つの資質(p. 229)
- 全体を体系的に捉える
- 強い意思をもって動く
- 失敗を糧にする
- 異なる価値観を学ぶ
- 好きなことから始めてみる
- 社会・国とオープンに向き合う
「好きなことから始めてみる」は,すごく共感できる。
さらに,異なる部署の人たちと議論し,互いの専門性から学ぶ姿勢も重要。専門性が高くなり個別化が進むと,互いの意見を聞くのが難しくなってくるが,TKM*2 社員は柔軟だったため,戸惑いながらも前に進むことができた。(p. 253)
部署の垣根を超えていかなければ,よりよい改善は生まれない。
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参考 目次
- 序章 「第4次産業革命」を読み解く 3 つのコンセプト
- 第1章 先進事例で見るインダストリー 4.0
- 第2章 これまでの「デジタル化」とは何が違うのか
- 第3章 日本にとってインダストリー 4.0 は脅威か
- 第4章 「日本の現場」で効果を発揮するために
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