プロジェクトマネジメントの参考になれば,と考えて『ここはウォーターフォール市,アジャイル町 ストーリーで学ぶアジャイルな組織のつくり方』(沢渡あまね,新井 剛,翔泳社,2020年10月14日)を読了。
チームを観察していて,真希乃は次の 4 つの問題を認識した。(24 ページ)
- 開発メンバーと顧客だけで物事(業務要件やシステムの仕様など)が決まる
- 運用メンバーが登場するには,ユーザーテスト工程から。そこで運用上の問題が次々に発覚。
- 開発チームに何を言っても「運用でカバーしてくれ」のひと言。取り合ってもらえない。
- そもそも日常的に運用やヘルプデスクの声が開発に届いていない。届ける機会やタッチポイント(接点)すらない
開発が運用のことを考慮していない。
どんなインシデントが起こっていて,どんなクレームがホットなのか?誰が何をどう
対応したのか?共有する場も仕組みもない。ともすれば対応も「気付きベース」での,個々人のボランティア精神に委ねられている。きわめて偶発的かつ属人的である。(25 ページ)
インシデント対応が個々人のボランティア精神に委ねられているのは,数年前に私が所属していたチームにも当てはまる。
チケットのメリット(69 ページ)
- 個人で抱えていたノウハウがチームに共有
- 形式知となり,伝えることが容易
- 場当たり的な対応の負のサイクルを断ち切る
チケットを書く手間以上のメリットがあるから,チケットを使う。
チケットに残されたバックグラウンド情報は,いわばその知識における「判例集」です。判例をたどることができれば,組織としての判断もブレないですし,担当者が毎回ゼロから対応を考えて頭を抱える必要もなくなります。背景が書かれていれば,当時との差分を考慮した適切な判断をすることもできます。すなわち,組織の行動のアップデートを促すツールにもなるのです。(124 ページ)
その場しのぎではなく,しっかり考え方を残すことで,組織としての力をアップする。
タスク管理ツールで実現できること(133 ページ)
全体の状況
- 何件のどんなインシデントがあるか網羅的にわかる
- インシデントごとの状況と担当チーム,順位が見える化できる
- どの担当チームが受け持っているかがわかる
時間
- 担当チームが明確になるのでムダに気を揉まなくなり,時間のムダも削減できる
優先順位
- 優先順位がわかり,後回しか最優先かなどの状況を共有できる
資産
- 更新履歴が資産として残っていく
- インシデントに対峙する際の型やパターンが蓄積される
プロジェクト・タスク管理ツールである backlog を使っているが,上記のことが実現できる。
運用業務の苦労談や体験談,「これはやってはいけない」「これはやめてくれ」のような悪い見本(いわゆるアンチパターン)をスライド資料化するなど,ストーリーとして語れるようにしておく。マンスリー勉強会で発表できるように言語化しておく。部内のナレッジマネジメントにもつながり,かつメンバーの発信力強化にも。(290 ページ)
成功談だけでなく,苦労談や体験談をアンチパターンとして残しておくことで,同じ苦労をする人を減らせる。
真希乃たちが実施しようとしているさらなるセイチョウの仕掛けは,大きく 3 つに分類することができます。それは,「ふりかえりむきなおる」,「ナレッジマネジメント」,「発信の文化」です。(297 ページ)
私自身,「ふりかえりむきなおる」「ナレッジマネジメント」「発信の文化」は,2022年に仕掛けることができたので,2023年にそれを拡大していきたい。
大切なのは,自分たちの問題や課題を言語化すること,周りの仲間たちと問題意識の景色を合わせること,そしてそれを仕組みや仕掛けで解決することなのだ。その解決方法は,ウォーターフォールの世界のやり方だろうが,アジャイルの世界のやり方だろうが,どちらでもいい。(321 ページ)
"The value is appreciated by experience."
価値はエクスペリエンス(体験)が決めてくれる。