2020年4月2日
『グーグル・アマゾン化する社会』(森健,光文社文庫,2006年9月20日発行)を読了。
そんな中,現在広く支持されているのは,スロウィッキーの意見に代表される「群衆の叡智」論だろう。多くの人が意見を述べ,集団でまとめられる意見が,およそ最適な解である――というのが,同氏の著作の主張だ。(pp. 23 - 24)
会社の中では,「群衆の叡智」はほとんど期待されていない。
日本でもそうだろう。
スケールフリー・ネットワークの特徴 by 米ノートルダム大 物理学者アルバート=ラズロ・バラバシ
- 成長がある――時間の推移に従って,結節点が増えていき,その結果ネットワークができる。
- 優先的選択が起きる――新しい結節点ができる際には,当然ながら古い結節点と結ばれる必要があるが,その際に新しい結節点はすでに多くのリンクをもっている古い結節点を優先的に選ぶ。そこで古い結節点は時間が経つごとに(成長するごとに)多くの結節点を獲得していく。(p. 164)
ネットワークが進化したのは,これらの特徴があるからか。
SNS の中のスモールワールドは,基本的に親しみを覚える人との輪によって形成される。それは社会心理学において「同類志向(ホモフィリー)」と呼ばれるもので,いわば「類は友を呼ぶ」現象だ。(p. 211)
「類は友を呼ぶ」≒「同類志向(ホモフィリー)」
現状から見るかぎり,単純に「群衆の叡智」が働くわけではないだろう。先に示した一極集中や集団分極化,沈黙の螺旋といった趨勢もあるうえ,そもそもいかに情報が豊富にストックされても,その情報を解釈する人間が飛躍的に賢明になることは考えにくいからだ。そのために,情報化が大衆には与しないという意見,いわゆる衆愚政治的な時代という意見もしばしば耳にする。だが,そんなステレオタイプな懸念は 100 年も前から言われていることでもある。(p. 245)
多くの人間が賢明にならないかぎり,「群衆の叡智」は働かない。
前出の中央大の安野助教授も「民主主義の主役たる市民が必ずしも政治に関心を持たず,知識もない」という W・ラッセル・ニューマンの「大衆政治のパラドックス」という言葉を引用したうえで,「関心や知識がない状態でどのように世論が形成され,認知されるのか,またこのパラドックスをいかにして超えることが出来るのかは検討に値する問題である」と述べている。(p. 246)
先を見通すことのできない人々の不平不満が,国の正しい歩みを阻害していると思うのは私だけだろうか。
人類社会の理想を求めた共産主義は,皮肉にも社会を不幸にしたあげく崩壊した。そんな逆説的な事態が起こる可能性は,いつどこにでも宿っている。(p. 252)
人類社会の最適な解は,「群衆の叡智」から生まれてくることを期待したい。
それは何十年先になるかわからないが。