池井戸潤著の「下町ロケット」(小学館文庫)*1を読了しました。
宇宙科学開発機構の研究員をしていた佃が,父親の死に伴って実家の佃製作所を継いだのは七年前。製品開発で業績を伸ばしていたのですが,様々な苦難が降りかかってきます。取引先からの一方的な取引中止,商売敵の大手メーカーからの特許侵害での訴え,資金繰り,さらには国産ロケットを開発する巨大企業・帝国重工からの佃製作所の持つ特許への食指。
様々な苦難を社員や佃の人脈の協力を得て乗り越えていくストーリーはドキドキハラハラしっぱなし。大企業に敢然と立ち向かう中小企業・佃製作所を応援しながら,読み進めることができました。
社員との社長である佃の夢の対立から,あるきっかけを元に同じ夢に向かって突き進み,その夢が実現した時,私の目にも涙が一筋流れたとか流れていないとか。
私はどちらかと言えば大企業に勤めているのですが,「下町ロケット」の中で登場する帝国重工のように大企業であるが故の弊害を感じています。佃製作所のような夢を持つことができる企業で働いてみたくなりました。
夢を追っている人は,強い。 夢はあなたを動かし,日本を動かす力になる。(文芸評論家・村上貴史)
私も二十四歳まで大学・大学院で研究室に属しておりました。今は会社で技術的な仕事に携わっています。ただし,そこに夢はありません。夢を追う佃は非常に魅力的でした。夢は見るものじゃなく,追うものだということを改めて感じました。
さて,何の夢を追おうか。 佃の夢「自分で設計したエンジンでロケットを飛ばすこと」のきっかけとなった佃の恩師の言葉に佃同様,私も感銘を受けたので紹介しておきます。
私を含め,ロケット工学を志す者にとって,ロケットエンジンは,知力と想像力を 遥かに超越した製造物であり,いわば聖域だ。神の領域といっていい。
著者である池井戸氏は元銀行員であるのはよく知られた事実ですが,「下町ロケット」の中ではかなり技術的なことに踏み込んだ内容が多く見受けられます。なんと懐の深い方なのでしょうか。
解説には,池井戸氏の他の著書が紹介されていました。かなり興味を持ったので,しばらく池井戸氏の著作を読み漁ってみたいと思います。