『新装版 殺戮にいたる病』(我孫子 武丸,講談社,2017年11月1日)を読了。
今ようやく分かった。セックスとは,殺人の寓意にすぎない。犯される性はすなわち殺される性であった。男は愛するがゆえに女の身体を愛撫し,舐め,噛み,時には乱暴に痛めつけ,そして内臓深くおのれの槍を突き立てる――。男はすべて,女を殺し,貪るために生まれてきたのだ。(41 ページ)
「セックスとは,殺人の寓意に過ぎない」ということは,まだ分からない。
やはり,女は困った生き物だ。そう,生きている女は。
いい女は死んだ女だけ。
どこかで聞いたようなジョークだと思いながら,稔は笑いをこらえることができなかった。(93 ページ)
「いい女は死んだ女だけ」というジョークを覚えておこう。
殺しても殺しても死なない女がいればいいのに。そうすれば何度も何度も愛しあうことができるのに。
そんな理不尽な考えが浮かんだが,すぐに,今は目の前の魅力的な肉体に専念しようと思い,頭から追い払った。(143 ページ)
殺すことでしか愛せないのか。
『殺戮にいたる病』の基本は人物トリックである。それも父親を息子に,息子を父親に誤認させるという一点に絞って,叙述トリックが仕掛けられている。(287 ページ)
叙述トリックに,まんまと引っかかってしまった。