2021年7月18日作成,2021年7月20日更新
令和三年七月場所の千秋楽,14戦全勝同士*1の一番に横綱・白鵬(36 歳,宮城野部屋)が勝ち,復活の全勝優勝を果たした。白鵬は 7 場所ぶり 45 回目の優勝である。
敗れた大関・照ノ富士(29 歳,伊勢ケ浜部屋)は14勝1敗となり三連覇を逃したが,第73代横綱に昇進する見込みとなった。
白鵬の復活優勝
「この一番に全てを賭けて臨みました」と白鵬が振り返った。立ち合いの駆け引きに荒々しい取り口。勝負に徹したときの白鵬の強さを改めて見せつけた。
白鵬の復活優勝により,新たな記録が生まれた。
- 6 場所連続休場明けからの優勝は史上初(大鵬が 5 場所連続休場明けから優勝した例がある)
- 36 歳 4 カ月での横綱の優勝は,千代の富士の 35 歳 5 カ月を超える最年長記録
- 一人横綱の優勝 19 度目(これまでは,朝青龍と並んでいた)
- 16 年連続幕内優勝
- 16 回目の全勝優勝
三月場所の 3 日目から途中休場した際,師匠の宮城野親方(元前頭・竹葉山)が「名古屋で最後を懸ける」とコメントしたように,進退をかけて今場所に臨んだ白鵬は,全勝優勝を果たし,今後も進み続けることを印象付けた。
一方,14 日目の正代戦*2,千秋楽の照ノ富士戦は,必ずしも正攻法とは言えない取り口ではあるものの,勝利への執念を感じさせられた。誰よりも勝ちたい思いが強いからこそ,全勝優勝を果たせたのだと思う。
千秋楽の解説の北の富士,舞の海の発言にもあるように,白鵬の勝利に対する執念は,凡人には推し量れぬものなのかもしれない。
北の富士「凡人にはわからない」
優勝後のインタビューでは,「右膝がボロボロで言うことを聞かなかったので,この一番に全てをかけようと思って,気合を入れてやりました」と語ったが,肉体的にも,精神的にも追い込まれていたとしても,闘志だけは衰えていないのか。
また,今後の目標を聞かれ,「横綱通算 899 勝,あと 1 勝で 900 勝なので,まずは 1 勝を目指して頑張りたい」と答えた白鵬。闘志ある限り,また勝ち続けるだろう。
2021年7月19日追記
全勝優勝した白鵬について,ネット上で色々な意見が展開された。また,横綱審議委員会の委員からも,色々な意見が述べられた。
色々な意見に対して,茂木 健一郎 氏のツイートが的を得ているように感じたので,以下に共有する。
相撲が国技かスポーツか、というのも粗い議論で、国技としての伝統や文化的意味合いはあったとしても、その中でのバリエーションはある。長い歴史の中でさまざまな個性をもった力士はいたはずで、その包絡線の中に伝統がある。杓子定規に「国技」を定義する人は単に歴史的豊穣への想像力がないだけ。
— 茂木健一郎 (@kenichiromogi) 2021年7月19日
照ノ富士,令和初の横綱へ
千秋楽の打ち出し後,審判部は八角理事長(元横綱・北勝海)に昇進を審議する臨時理事会の開催を要請した。7月19日,八角理事長は横綱審議委員会に諮問し,委員会に出席する委員の 3 分の 2 以上の賛成が得られれば,推薦が決まる。そして 7月21日に開かれる秋場所番付編成会議後に開かれる理事会で,第73代 横綱 照ノ富士が正式に誕生する見込みである。
照ノ富士が横綱昇進すれば,2017年初場所後に横綱昇進した稀勢の里以来,モンゴル出身の力士では,2014年春場所後に横綱昇進した鶴竜以来 5 人目*3となる。
千秋楽,白鵬に敗れた照ノ富士は「自分が弱かっただけ。この悔しさを来場所につなげたい」と語り,さらに力強い相撲を見せ,白鵬を破る姿を見たいものだ。