2021年3月26日
『豊田章男』(片山 修,2020年4月23日,東洋経済新報社)を読了。
「社長は決める人,責任を取る人だ」
つまり,章男は決める人,すなわち決断の人である。彼は,決断について,こうコメントしている。
「直感は 3 秒で決めることが多いですね。ただ,その決断によって痛みを被る人,苦労する人がどれくらいいるかを理解していない限り,3 秒で決めてはいけないと思っています」(位置 No. 424)
決断の影響を知った上でしか,決断をしてはいけない。
豊田綱領(位置 No. 1047)
2021年現在も通用しそうな綱領である。
負けず嫌いではなく負け嫌いとは,もとはイチローの言葉だ。「負けたことがないのに嫌い」な負けず嫌いではなく,「負けて,その悔しさを知っているから嫌い」なのが負け嫌いだと,イチローは言う。章男はその言葉を借り,いまや,さまざまな場面で「負け嫌い」と口にする。(位置 No. 1224)
私もこれからは「負けず嫌い」ではなく「負け嫌い」と言おう。
イチローの愛は,見返りを期待しないことだ。
「練習は裏切らないという言葉には,これだけやったらこれだけ返してくれるよねという思いが入ってしまっているんですよ。でも,報われるとは限らないという思いが生まれないと,愛ではない。一方通行であるべきなのが,愛だと思いますね」(位置 No. 1293)
「努力は裏切らない」は見返りを求めてしまっている。裏切られるかもしれないが,一途に努力を続けるためには,愛が必要不可欠。
変化することはリスクだ。しかし,成長し続けるためには,つねに変化しなければならない。リスクを取ってでも,変化を続けなければならない。後退は,成長の過程の必然なのだ。(位置 No. 1331)
変化なくして成長なし。変化することに怯えてはいけない。
トヨタにはもともと,構成部品の 2 割は内製に残せというルールがある。内製すれば,品質や生産性の向上などのノウハウを積み上げられるからだが,仮に 100 % 外注すれば,コストをコントロールできなくなる。(位置 No. 2436)
私が勤めている会社のコアな技術とは,何だろうか。
それを見極めたうえで,外注するもの,しないものを仕分けていく。
章男は,管理部門がまとめた A3 用紙の報告書をあまり信じない。自らの目,耳,手を大事にする。徹底した現地現物主義だ。
「トップダウンとは,トップが現場に降りていくことだ」と,章男は,独特の言い回しをする。(位置 No. 2752)
トップダウンとは,トップが現場に降りていくことであるならば,ボトムアップとは,現場の人が役員室に入っていくことか。
最大の難関は社員の意識の転換である。ひとたび緩んだ社員の意識は,そう簡単に右から左に変えられるものではない。(位置 No. 2996)
意識の転換は最大の難関かもしれないが,意識を変えてしまえば,改革のパワーは一気に増える。
イノベーションは,イミテーションから始まり,インプルーブメント(改善)の積み重ねにより生まれる。
「イミテーションで何が悪い!インプルーブメントで何が悪いのか!結果として,イノベーションにつながっていく変化を,トヨタは起こしていきたい」と,章男は考えている。これもまた,発想の転換だ。(位置 No. 3011)
イノベーションは,起こそうと思っておきるわけではない。インプルーブメント(改善)を積み重ねていくしかない。
毎年のように,変化が続く。組織を揺さぶることで,従業員の危機意識を高める狙いもある。もっといいやり方があると考え,つねに改善を積み重ねるのは,トヨタの企業文化であり,DNA といっていい。(位置 No. 3416)
変化を受け入れないのは,危機意識がないからではないか。
トヨタは,もともと理念の強い会社だ。大義を掲げる。大義は,挑戦の起爆剤であり,困難に直面した際,粘り強く乗り越えるエネルギーのもととなる。トヨタ,いや,章男は,つねに大義名分を前面に出して経営に携わる。つまり,何を目的にするか。建前ではなく,本気で大義を背負って立つのだ。(位置 No. 3793)
大義があれば,粘り強く乗り越えていくエネルギーを生み続けられる。
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