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組織の盛衰 The Rigse and Fall of Organizations 堺屋 太一

2020年6月28日更新

『組織の盛衰 The Rigse and Fall of Organizations』(堺屋 太一,PHP研究所,1993年4月6日発行)を読了。

 今の世の中は,すべてが組織で動いているといえる。ところが,その組織に関する調査研究は,必ずしも多くはない。近代の学問体系は,あらゆる分野を細分化し専門化して,きわめて高度な知識と技術を作り上げて来た。その中で,組織に関する研究だけは,著しく立ち遅れている。(p. 3)

組織の問題は語られるが,組織に関する研究は少ない。
本書の発行から 20 年以上が経過するが,組織について理解が進んでいるといえるだろうか。

 成長志向の組織気質は,成長が続いているときには非常に大きな力になる。しかし,九州を征服し小田原の陣が完了し,九戸の乱まで平定して全国統一してしまうと,豊臣家はゼロサム社会に突入した。武士というのは,全国を征服してしまうと最早領地の拡大は望み得ない。これほど明確なゼロサム減少はない。(p. 33)

日本における天下統一は,領地拡大の望みを絶たれるということを意味する。
豊臣家は天下統一を果たした時点から,成長がストップした。

 まして大組織に属する者にとっては,給与の多寡など権限に比べれば大した問題ではない。ある中央官庁の課長が,「俺が握っている予算は三千億円,年収二億や三億の資産家とは訳が違う」といったことがある。一旦権限の愉しさを知った者なら,この心境は分かるはずだ。(p. 99)

確かに,億単位の規模のプロジェクトを行うと,大変な資産家になったと錯覚しがちである。

 組織が固定化すれば,ヒトもカネもモノも固定化して流動性がなくなる。日本政府の予算などは 72 兆円もあるのに,1  パーセントも動かせない。各省庁別各項目別に固定化されているからだ。(p. 179)

組織をスクラップ&ビルドすれば,ヒト,カネ,モノが流動化して,最適化されるのではないか。
そのためには,徹底的なスクラップが必要である。

 戦後,日本にも「シビリアン・コントロール」の制度が持ち込まれた。政府の長(首相)は文民(シビリアン)でなければならず,軍(自衛隊)は,文民内閣の指揮制御の下に置かれなければならない,という原則である。(p. 181)

シビリアン・コントロールは,戦前の反省である。

 しかし,近代工業に適した専門家細分化にも欠点がある。それは,専門家が進み,優秀な専門家が集まると,飛躍的な発想ができなくなり,社会や技術の変化に対応できないようになることだ。(p. 186)

専門家集団の欠点である。専門家といっても,専門家の常識を打ち破るような議論をしてみなければ,飛躍できない。

日本の官庁で一番出世するのは,「問題が起こって解決した者」,次は「問題が起きたが解決できなかった者」,最も損をするのは「問題が起きなかった者」という。担当する分野で問題が起これば,当然時間的にも心理的にも苦労するので,自己犠牲は大きい。ここで快刀乱麻の如くではなく,ねばり強く時間をかけて対応し,必ずその都度上司同僚と連絡を取り,一歩でも半歩でも解決に近づけば最上だ。しかし,たとえ解決への前進がなかったとしても,その苦労は高く評価される。(p. 312)

会社の出生している人物を見ても,トラブル対応に長けたヒトが目立つ。
問題が起これば,それの解決に向けて全力で取り組む姿勢が大切なのだろう。

 人間にとっても,組織にとっても,理想を知ることこそが理想を実現する第一歩である。
「経営の理念」とは,それぞれの企業の理想像,つまり「なりたい姿」のことだ。それを経済的な有利不利にも,世間での好評不評にも,将来の成長や不安にも捉われることなく探り出して見る必要がある。それを,取引相手や従業員や世間に,どのような表現で発表伝達するかは,また別の問題である。
 本当に「したいこと」「なりたい姿」を見つめる前に,経済的有利さと世間の評判と将来の安心を考えるのは本末転倒,経営の理念を見失う結果になるだろう。(p. 318)

理想を考える,それが理想を実現する第一歩である。
理想を描けない者に,理想を実現する力はない。

組織の盛衰/日本を創った12人 (堺屋太一著作集 第16巻)