2021年10月25日作成
『IT コンサルティング これからのビジネスを支えるマインドとスキル』(トーマツ コンサルティング 松下 芳生,PHP 研究所,2000年12月28日)を読了。
筆者は,コンサルタントが活躍するタイミングとして,次にあげる三つのケースがあると考えている。(p. 12)
- 問題の構造が明らかでなく,解決策もわからない
- 問題の構造は明らかだが,解決策もわからない
- 問題の構造も明らかで,解決策もわかっている
問題の構造が明らかでなければ,解決策がわからない。コンサルタントが活躍する場面は,多いということか。
軸足を置くのはビジネスであり,IT に関しては専門家ほど深い知識をもたなくてもよい。むしろ,IT によってどのようなことができるかを知り,それをビジネス(お金儲け)に生かす能力が必要とされているのだ。(p. 19)
2000 年に発行された本であるが,DX が声高に叫ばれる今日にも通ずるものがある。むしろ,2000 年から必要とされている能力が,得られていない。
コンサルティングを行った結果として,具体的に何が変わるか,つまり,ビジネスをどうしていくのか,どれだけお金を儲けるのか,あるいは誰がどう働いて実現を果たせるのかなどを明らかにすることが重要であり,これらをおろそかにすると何も結果は出ないのである。(p. 26)
コンサルティングの結果は,具体的に示す。
上司に「君がまず考えるべきことは,何をすれば儲かるかだろう。社内に資源がないのなら,社長に言って会社をひとつ買ってもらえばよい。事業部制が邪魔ならルールを変えればいいじゃないか」と言われて,目から鱗が落ちる経験をしたことがある。(p. 77)
会社を維持することではなく,儲かるためには何ができるかを考える。
余談だが,マイケル・E・ポーターは近年の著書や講演で「従来の日本企業の競争戦略はコスト・リーダーシップ戦略にあり,オペレーションの優秀性だけで競争していた」と言っている。他社と違うことで差別化してプロフィットを得るのではなく,同じことをいかにより安く,よくできるかという競争を繰り返していたということだ。(p. 108)
2021年10月現在,私が勤めている会社は,オペレーションをより良くしようと努力を続けているだけである。
要するに,各部門が単に「あれもほしい,これもほしい」と言うだけでなく,「ほしいと言った以上は,必ずもとをとる」という約束をとることが,情報システム開発では重要なのである。それができて初めて,使って効果を出せる情報システムが実現する。(p. 125)
企業のなかには当然と見なされている「暗黙の了解」がいろいろと存在する。それに対して「本当にそうなのか」という疑問をぶつけていくのも,コンサルタントの役割である。しかも,ネットワークをはじめとする IT の利用を考慮すれば,従来とは異なる新しいやり方が必ず存在する。一見非常識に見えるような考え方,ビジネスの組み方,ビジネスプロセスのあり方の可能性を,常識にとらわれずに柔軟に確かめていこうという姿勢とその実践が,IT コンサルタントに求められるのである。(位置 No. 127)
私が勤めている会社には,「暗黙の了解」が多く存在する。情報システム化により,暗黙の了解を打破していく。
通常,人間の頭には,事業も原因も施策もすべてごちゃごちゃになって入っている。それが頭のなかでぐるぐる回っていて,何から手をつけてよいかわからない状態が往々にしてある。これが実は一番困った段階である。構造化されて,カテゴリーごと,すなわち組織,人事,ルールというふうにグループ化されて達成目標や施策が具体的に決まれば,あとは粛々と社内の力を結集するだけとなる。(p. 138)
事業,原因,施策を整理することから始める必要がある。
まず質問項目リストは,作成者の頭に,事実はこうではないか,あるべき姿はこんなものではないだろうかというような仮説があれば,すんなりと作成できる。何を聞かなければいけないかは,仮説の検証のために何が必要かをチェックすることで決まってくる。(pp. 144 - 145)
仮説があれば,質問項目リストを挙げていくことは容易い。
いわゆる説得することを目的としたスピーチの組み立てには,大きく分けると次のような四つの基本型がある。(p. 168)
- Need-Plan-Advantages
必要性があって,プランがあって,どういうアドバンテージが生まれるかという構成- Goals-Criteria
ゴール設定をして,それを達成するためにはこれをやらないといけないという構成- Comparative Advantages
比較するとこっちがよいという構成- Effects Oriented
これをやればすべてよしという構成
私がよく用いているのは「Need-Plan-Advantages」と「Comparative Advantages」である。
正解,あるいはこうすればよいということを考える場合は,制約から入ってはいけない。自分の会社のことを考えるのに,今こういう従業員がいて,こういう子会社があって,何が得意でと,ついつい「あるものを生かすために何をするか」という視点から見てしまう。だが,最初の段階から制約を考える必要はない。「何をやれば,一番顧客が満足するのか」,「何をやれば,一番ビジネスとして成功するのか」という像をまず描く。これが第一歩となる。(p. 226)
制約条件は考えない。制約条件があると,発想が乏しくなる。