2021年5月24日作成,2021年5月25日更新
『未来を実装する テクノロジーで社会を変革する 4 つの原則』(馬田 隆明,英治出版,2021年1月24日発行)を読了。
今の日本に必要なのは,注目されがちな「テクノロジー」 のイノベーションではなく,むしろ「社会の変え方」のイノベーションではないか(位置 No. 5)
テクノロジーはあっても,それを使いこなせない社会そのものを変える必要がある。
テクノロジーの社会実装プロジェクトの成功者たちは,よりよい未来をつくることを目的として,社会の仕組みに目を向け,人々とともにプロジェクトを進めていたという点でした。言い換えれば,彼らはテクノロジーを社会に実装しようとしていたというより,テクノロジーが生み出す新しい社会,つまり「未来を実装」しようと努めていたのです。(位置 No. 18)
テクノロジーを実装することは,目的ではなく,手段である。テクノロジーを実装することで実現できる未来に共感してもらう。
人類の手によって生まれたテクノロジーを最大限活かすには,テクノロジーをうまく受け入れて活用できる社会が必要です。そのためには社会を理解し,ときには社会を変えていく必要があります。(位置 No. 47)
インパクト(理想)を設定し,理想と現状のギャップによって新たなイシュー(課題,問い)*1を生み出し,インパクトを提示することで人々を巻き込みながらイシューを解決していく――いわばインパクト思考が求められつつあるのです。(位置 No. 434)
理想を描くことができなければ,イシューは生まれない。
テクノロジーの社会実装のためには,新しいテクノロジーの真価が発揮されるような社会が必要であると考えます。つまり,テクノロジーの社会実装とは,テクノロジーの力によって社会を変えようとする営みであると同時に,社会の仕組みを変えることによってテクノロジーが活用される社会を作り出す営みです。(位置 No. 856)
日本という国そのものは,テクノロジーを実装しようとしているのだろうか。社会の仕組みを変えようとしているだろうか。
さらに既存の業務は,FAX や紙での効率化を最大化するために,それらの技術に最適化された形で構築されています。組織も FAX や紙を前提とした組織設計が行われています。その結果,一部の業務をデジタル化したとしてもそれほど効果は見込めません。業務全体のプロセスや組織の在り方を変えないと生産性は上がらないのです。(位置 No. 945)
業務全体のプロセスや組織の在り方を変えることを見据えたデジタル化を推進する。
成功する社会実装に必要な四つの原則(位置 No. 1660)
- 最終的なインパクトと,そこに至る道筋を示している
- 想定されるリスクに対処している
- 規則などのガバナンスを適切に変えている
- 関係者のセンスメイキングを行っている
変わることを求めていない関係者がいれば,センスメイキングは困難になるだろう。
裏を返せば,理想がなければ課題もありません。つまり課題がない,という現象が起こってしまう原因の一つは「理想がない」からです。(位置 No. 1907)
「理想がない」という人は,つまり,現状に満足している人は多い。
倫理に関わっていくうえで,一つ重要な前提があります。倫理は自分たちでアップデートしていくこともできるという視点を持つことです。決して社会のどこかで作られた倫理観や道徳観をフォローしておけばよい,というわけではないのです。(位置 No. 2883)
これまで培ってきた倫理観や道徳観は,アップデートしながら変わっていかなければならない。
ルールベースアプローチでは,あくまで規則に則っているかどうかが注目されます。一方,プリンシプルベースアプローチでは原則だけを定めて,詳細な規則などは制定しません。(位置 No. 3730)
いかなるときも,プリンシプルベースアプローチができるような個人・組織を実現したい。私が勤めている会社では,ルールだけが積み重ねられ,プリンシプルがわからりにくくなっている気がする。
私は規制の「リファクタリング(プログラムの外部から見た動作を変えずに,ソースコードの内部構造を整理する意味のプログラミング用語)」と呼んでいますが,こうした作業を国全体として進めていくことで,今の時代に合わせた信頼を再設計できるのではないでしょうか。(位置 No. 4118)
変化に強い組織にリファクタリングするというのも一案。
*1:安宅 和人氏の『イシューからはじめよ』における issue の定義によると,2 つ以上の集団の間で決着のついていない問題,根本に関わる,もしくは白黒がはっきりしていない問題である。