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「強すぎる自民党」の病理 老人支配と日本型ポピュリズム

『「強すぎる自民党」の病理 老人支配と日本型ポピュリズム』(池田信夫PHP 研究所,2016年8月3日)を読了。

自民党の国会議員のうち,閣僚になって政策を論じるのは全体の一割ぐらいで,あとの政治家の活動は,こういう後援会の維持と陳情の処理がほとんどだ。政策は世間話レベルしか知らない。それでいいのだ。彼らは党議決定に従って数をそろえる「陣笠」だからである。(位置 No. 163)

国会という仕組みは必要なのか,と疑問に感じてしまう。

ニューヨーク・タイムズの記者に「日本の世代間分配は異常に不公平になっているのに,なぜ政治問題にならないのか?」と質問されたので,「そういう問題は存在しないことになっているからだ」と答えるしかなかった。厚労省の公式見解では「100 年安心」で,年金が破綻するなんて嘘だということになっているからだ。(位置 No. 262)

問題は存在しないことになっている,というのは言い得て妙。

このように国鉄民営化は政治的にも重要な事件だったが,三人組の中間管理職が内部から改革を実現したのは珍しい。普通は現場は実態がわかっていても,中間管理職が事なかれ主義で,経営陣まで的確な情報が上がらないため全体がみえず,改革に失敗する――というのが日本の経営のよくあるパターンだ。(位置 No. 748)

事なかれ主義では,改革に失敗する。事なくして,改革はなし得ない。

ちょっと景気が悪くなると「景気対策」に巨額の予算を投じ,財政出動が限界に達すると,今度は「デフレ脱却」と称して日銀がカネを配り始めた。日本の成長率が低下している最大の原因は,生産年齢人口が毎年 1 % 減っているからで,財政・金融政策で是正することはできない。成熟経済にふさわしい政府支出の縮小と負担の適正化が必要なのだ。(位置 No. 999)

日本の収入が減っていく前提で,支出するものを決めないといけない。単純なことだと思うけど,どうしてできないのか。

私がインタビューしたとき,もう一つ印象に残ったのは「オヤジ(田中角栄)も金丸さんも『足して二で割る』名人だったが,今はそれではやっていけない」という言葉だ。「昔は利益の分配をするのが政治の役割だったが,今は負担の分配をしなければならない。平等に引き算したら全員が文句をいって収拾がつかなくなるので優先順位をつけて切るしかない」という答を聞いて,この人は田中型政治の本質的な欠陥を理解しているんだなと私は感じた。(位置 No. 1026)

平等に配れるほど,利益のパイはない。優先順位をつける,すなわち一定の不平等は許容しなければ,立ち行かない。

日本型ポピュリズムの特徴は,各部門がボトムアップで合意形成するだけでなく,全体を統括する「強いリーダー」を拒否することだ。日本の歴史上も,名実ともに最高権力者だったのは,後醍醐天皇織田信長ぐらいだが,いずれも短命に終わった。これは社会の基本要素となっている「家」の自律性が高く,その内部に介入するリーダーを拒否するためだと思われる。(位置 No. 1180)

老人支配と日本型ポピュリズムの将来は,暗いと感じる。

ルフレッド・チャンドラーは「組織は戦略に従う」といったが,日本では戦略が組織に従う。特に死ぬまで役所に面倒をみてもらう霞が関では,政策は人事に従うのだ。(位置 No. 1333)

事実上の終身雇用が約束されている企業でも,人事に従うしかないか。

日本の組織では,人事がすべてである。政策も戦略も,人事権をもつ者が決める。東條は軍人としては凡庸だったが,人事に介入して政治的に利用し,ライバルや気に入らない将校は前線に送った。前例主義が強く稟議を重視したため,下剋上の圧力に弱かった。彼が首相と陸相参謀総長を兼務したのも,カリスマ的な魅力がなかったからだ。(位置 No. 1502)

カリスマ的魅力がない人が人事権を持つと,ライバルや気に入らない部下は排除される。

小選挙区制が有効なのは,ヨーロッパのように階級対立が明確な社会や,アメリカのように白人とマイノリティの勢力が拮抗している社会に限られる。日本のように有権者が均質化している社会では,圧倒的多数の高齢者が政治を乗っ取り,世代間格差が拡大する。(位置 No. 1631)

日本でも,対立を煽れば,小選挙区制が有効になるか。