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現役サラリーマンのスキルアップのための読書まとめ

藤井聡太論 将棋の未来像

藤井聡太論 将棋の未来像』(谷川浩司講談社,2021年6月1日)を読了。

従って,私の過去の記録や体験と比較することも多くなるが,その差を見ることによっても彼の才能の突出ぶりがわかるのではないかと思う。もしかしたら私の持つ史上最年少名人の記録 21 歳 2 ヵ月は,藤井さんによって更新されるかもしれない。

もちろん,藤井将棋はいまも進化しつつある。現時点での私なりの藤井聡太論を展開していきたい。(位置 No. 40)

2023年,藤井聡太氏は谷川浩司氏の史上最年少名人の記録を更新すべく,名人戦に挑んでいる。

トップ棋士の真の強さが現れるのが中盤である。とくに初見の混沌とした局面でいかに本質と現状を見極め,勝つための最善手を導き出せるか。(位置 No. 103)

よくわからない局面において,本質と現状を見極める力を身につける。

その姿を見てまず私が感じたのは,藤井さんは「将棋がとてつもなく好きだ」ということだった。もちろん,将棋が好きではない棋士はいない。しかし藤井さんの場合は,その「将棋好き」が突出していて,それがそのまま「考えることが好き」ということに直結している。(位置 No. 129)

好きなことを貫き通し,頂点に立てるのは素晴らしい。

プロ棋士でも,せいぜい十手先が読めれば良いほうだろう。と言っても,一つの局面で三つの候補手があれば,二手先は九通り,三手先は二十七通りに分かれ,十手先には六万手弱に枝分かれする。細かい枝葉の部分は素早く刈り取り,どの木が一番太くてまっすぐ伸びているのかを見極める力が必要になる。いわゆる「大局観」である。(位置 No. 166)

大局観は,将棋以外にも必要な力である。

「わからないまま指してしまうと,結局考えた意味がなくなってしまうと思っているんです。時間がなくなってくると多少そういうのも仕方ないんですけど,なるべく考えたところで自分なりに判断の根拠を持って指したいと思っています」(位置 No. 191)

わからなくても,自分なりに考えて,判断したいということか。

四勝一敗(勝率八割)は,言ってみれば成績のいい人がかなり長期間続けることのできる勝敗のペースである。しかし,五勝一敗(勝率八割三分三厘),六勝一敗(勝率八割五分七厘)の成績を取り続けるという芸当は,単に能力のある棋士の好調によるだけではなく,それだけの地力が備わっていなければ絶対になし得ない。(位置 No. 325)

トップ棋士との戦いを続けているのに高い勝率を維持し続けるのは,本当に力があるからだろう。藤井聡太氏の七冠,八冠は現実的な未来なのかもしれない。

棋士は「勝負師」と「研究者」と「芸術家」の三つの顔を持つべきだ,というのが私の年来の持論である。

普段は将棋の真理を追究し,対局の準備も綿密に行う研究者の顔。対局の序中盤は,将棋の無限の可能性を追い,新しい世界を築く芸術家の顔になる。そして終盤は,勝利を求める勝負師に徹する。この三つの顔を自然に切り替えられるのが理想の棋士像である。(位置 No. 579)

棋士だけでなく,世の中のプロフェッショナルは皆,「勝負師」「研究者」「芸術家」の顔を持っているのではないか。

AI は人間の生活を便利に,そして豊かにするものではあるが,それによって私たちが考えることを放棄してしまっては,人類は退化していくばかりだ。人間ならではの思考と感性をこれまで以上に研ぎすますことによって,「AI との共存」に相乗効果が生まれるのだと思う。(位置 No. 1739)

世の中に先んじて,将棋界は「AI との共存」の世界に進んでいるように感じる。