『リーン・スタートアップ ムダのない起業プロセスでイノベーションを生みだす』(エリック・リース,日経 BP 社,2012年6月1日)を読了。
リーン・スタートアップでは検証による学び(validated learning)を単位として進歩を計測する。科学的な学びを基準にすれば,スタートアップの足を引っぱる無駄を発見し,源から絶つことができるのだ。(29 ページ)
成果ばかりを求めて,科学的な学びを基準にしたことはなかった。
スタートアップの目標は,できるかぎり早く,作るべきモノ――顧客が欲しがり,お金を払ってくれるモノ――を突きとめることだ。(30 ページ)
スタートアップとは,とてつもなく不確実な状態で新しい製品やサービスを創り出さなければならない人的組織である。(42 ページ)
スタートアップの経験はないのが,興奮できそう。
大企業は既存製品を少しずつ改良し,既存顧客を満足させること――クリステンセンが言う持続的イノベーション(sustaining innovation)――を得意としており,未来の成長をもたらす画期的な新製品を苦労して創り上げる破壊的イノベーション(disruptive innovation)は不得意というわけだ。(46 ページ)
持続的イノベーションだけでは,未来の成長はない。
一番のポイントは,どのような業界であれスタートアップは大きな実験だと考えることだ。「この製品を作れるか」と自問したのでは駄目。いまは,人間が思いつける製品ならまず間違いなく作れる時代だ。問うべきなのは「この製品は作るべきか」であり「このような製品やサービスを中心に持続可能な事業が構築できるか」である。このような問いに答えるためには,事業計画を体系的に構成要素へと分解し,部品ごとに実験で検証する必要がある。(77 ページ)
何を作るかよりも,持続可能な事業が構築できるかを考える。
今日のマネージャーに求められているのは,このような理論と自分を取りまく状況とを見比べ,適切な指針を適切なタイミングで採用するスキルである。(228 ページ)
マネージャーは理論を知っておく。知っていなければ,状況と見比べることもできない。
1911 年にテイラー*1はこう書いている――「いままでは人間が第一だった。今後はシステムが第一になる」。テイラーの予測は正しかった。我々は,いま,彼が思い描いた世界で生きている。
システムが第一となっているが,システムを動かしているのは人間のまま。
たしかにものを作るという面では効率が上がったが,いまの経済は相変わらず無駄が多い。無駄の原因は組織の効率が悪いからではなく,まちがった仕事をしているからだ――しかも産業規模で。ピーター・ドラッカーが指摘しているように,「やってはいけないことをすばらしい効率で行うほど無駄なことはない」のだ。(338 ページ)
経済の無駄を排除していけば,マクロの経済はよくなっていくだろう。しかし,無駄として排除されてしまう人も出てくる。
リーン・スタートアップを支える根本的な思想は,「思い込みを捨て,実験による検証という科学的な進め方をする」だろう。だから,手法を正しく学べば誰にでも使える。(367 ページ)
経験・勘・度胸に基づく思い込みは捨て去り,実験による検証を行う。
*1:フリデリック・ウィンズロー・テイラー。『科学的管理法』を提唱。