2021年1月1日作成,2021年1月2日更新
『イノベーションのジレンマ増補改訂版』(クレイトン・クリステンセン,翔泳社,2001年7月3日)を読了。
2021 年はイノベーションを生み出したいと思い,本稿を2021 年最初の記事とした。
ちなみに,1 年前の 1月1日もイノベーションをテーマにした本を題材とした記事を作成していた。
あくまでも偶然である。ただ,2 年連続で元旦にイノベーションをテーマにしたのは,2020 年を境に,私の仕事がイノベーションなものにシフトしていることを感じさせられる出来事である。
本書でとりあげるのは,業界をリードしてきた企業が,ある種の市場や技術の変化に直面したとき,図らずもその地位を守ることに失敗する話である。どこにでもある企業ではなく,優良企業の話である。多くの経営者が尊敬して手本にしようとし,革新と実行力で知られているような企業である。(位置 No. 143)
革新と実行力があっても,イノベーションを実現できず,イノベーションできた企業にディスラプトされてしまう。
実績ある企業は,いつも新しい技術を確立された市場に押し込もうとするが,成功する新規参入企業は,新しい技術が評価される新しい市場を見つける。(位置 No. 1670)
新しい技術が評価される新しい市場を探すことが,成功の秘訣。
新製品を成功させるという困難な仕事をなし遂げるには,論理,エネルギー,刺激をすべて一体化させて努力しなければならない。実績ある企業をそのニーズに縛り付けているのは,顧客だけではない。実績ある企業は,自分たちが属するバリュー・ネットワークの財務構造や組織の文化にも束縛されている。この束縛が,つぎの破壊的技術の波に迅速に投資する根拠を見えなくしているのだ。(位置 No. 1924)
組織の束縛は,新しい波に乗ることを邪魔する。
本書で検討した例では,実績ある企業が破壊的技術に直面したとき,開発における最大の課題は技術的なものであり,既存の市場に合うように破壊的技術を改良することだと考えるのが普通である。破壊的技術の商品化に成功した企業は,開発における最大の課題は,マーケティング上のものであり,製品の破壊的な特性が有利になる次元で競争が発生する市場を開拓するか,見つけることだと考える。(位置 No. 3668)
今の市場だけで考えていては,別の市場に気づくことができない。
破壊的技術に関するアイデアが失敗する確率は高いが,破壊的技術の新しい市場を開拓する事業全体をみれば,さほどリスクの高いものではない。最初のアイデアにすべてを賭けず,試行錯誤し,学習と挑戦を繰り返す余裕を残しておくマネージャーは,破壊的イノベーションの商品化に必要な顧客,市場,技術に対する理解を深めることに成功する。(位置 No. 4257)
新しい市場を一気に開拓しようとするのではなく,小さな投資で,少しずつ開拓していく。
とりわけ,破壊的技術に直面した経営者に対して,つぎのことを進めている。(位置 No. 4337)
- 破壊的技術の開発を,そのような技術を必要とする顧客がいる組織にまかせることで,プロジェクトに資源が流れるようにする。
- 独立組織は,小さな勝利にも前向きになれるように小規模にする。
- 失敗に備える。最初からうまくいくと考えてはならない。破壊的技術を商品化するための初期の努力は,学習の機会と考える。データを収集しながら修正すればよい。
- 躍進を期待してはならない。早い段階から行動し,現在の技術の特性に合った市場を見つける。それは現在の主流市場とは別の場所になるだろう。主流市場にとって魅力の薄い破壊的技術の特性が,新しい市場をつくり出す要因になる。
私が所属するチームは,小さな勝利にも前向きになれる組織かもしれない。失敗には厳しいかもしれないが。
本書を推薦する言葉
変革の時代,過去の成功体験こそが企業自己変革の足枷となる。この困難を克服するためのヒントがここにある(ソニー会長兼 CEO 出井 伸之)
過去の成功体験は,変革の時代には足枷にしかならない。
本書は,最も成功した企業が必ず直面する困難な問題に焦点を当てている。明晰で,示唆に富み,それでいて恐ろしい(インテル会長 アンドリュー・グローブ)
インテルは,何度も,そして 2020 年にもイノベーションのジレンマを経験したかもしれない。
イノベーションのジレンマ 増補改訂版 Harvard business school press
- 作者:Clayton M. Christensen
- 発売日: 2012/09/01
- メディア: Kindle版