『リーダーシップの旅 見えないものを見る』(野田智義・金井壽宏,光文社新書,2019年4月25日 19 刷)を読了。
本書は,以下のような章で構成されている。
- 序章 「リーダーシップ」はなぜ心に響かないのか
- 第一章 リーダーシップの旅
- 第二章 なぜリーダーシップが必要なのか
- 第三章 旅の一歩を阻むもの
- 第四章 旅で磨かれる力
- 第五章 返礼の旅
- エピローグ
- あとがき
リーダーシップは「見えないもの」を見る旅だ。ある人が,「見えないもの」,つまり現在,現実には存在せず,多くの人がビジョンや理想と呼ぶようなものを見る,もしくは見ようとする。そして,その人は実現に向けて行動を起こす。世の中ではよく,リーダーはついてくる人(フォロワー)を率いる,リーダシップはフォロワーを前提とするなどと言われるが,私はそうは思わない。旅はたった一人で始まる。(p. 21)
ビジョンや理想を描くことを経験し,この引用を追加(2021年8月7日)。
ビジョンや理想を描く段階は,確かに一人で始まった。
したがって,この本は,手っ取り早くリーダーシップを身につけたい,手っ取り早くリーダーを育てたいと思っている読者の方々には,あまり参考にならないかもしれない。そうではなく,自分自身が何かを実現したい,「見えないもの」を見たい,そのために行動したいと漠然とでも思っている人にとっては,何か得ていただけるところがあるのではないかと思う。(p. 28)
何かをやりたい,そう思ったときに読めばよいか。
だれかが何かを叫び,語り,権力や権限や仕組みゆえにではなく,その人の語るのを聞いて,人が一人でも二人でも喜んでついてくれば,そこにリーダーシップは存在し始めている。(p. 32)
まずは,語ることから始める必要がある。
「リーダーになろうと目指す」のではなく,「リーダーは結果としてなるものだ」という指摘は至言であり,かの碩学 W・ベニスが書名としてさりげなく On Becoming A Leader(芝山幹郎訳『リーダになる』新潮文庫,1992 年)と名づけたのはビューティフルだ。(p. 36)
リーダーは目指すものではなく,結果としてなるもの。
吹っ切れたリーダーは,フォロワーを導くのではなく,巻き込んでいく。沼を渡ろうと決断するのは自分一人だが,やがてリーダーの背中を見て,人がついてくる。この「振り返ると人がついてきていた経験」が,リード・ザ・セルフからリード・ザ・ピープルへの橋渡しとなる。(p. 56)
フォロワーを巻き込むために,ビジョンや理想を語る。
火事の時のバケツリレーはタスクが与えられているケースだが,リーダーのより大きな役割は,自らタスクをつくり出すことだ。状況に反応するのではなく,時代の流れを感じながら行動する。例えは非常に悪いが,火事を消すのではなく,場合によっては自ら火を熾すことがリーダーの役割になる。(p. 73)
わざと炎上させる,というのもリーダーの取り得る選択肢。
だが,ここで問題が発生する。組織は組織化を進めれば進めるほど,つまりマネジメントの機能を充実させればさせるほど,自己破壊の危険にさらされる。皮肉なことに,組織化そのものが,結果的に組織に自己破壊の遺伝子を埋め込んでいくプロセスでもある。(p. 111)
行政や大企業には,組織の自己破壊遺伝子が埋め込まれていそう。
リーダーシップは,実際にリーダーシップをとった人にしか教えられない。だから,「リーダーを育てるリーダー」の存在がないと,リーダーシップの連鎖は生まれない。(p. 113)
リーダーシップの旅に出る人を増やす。リーダシップの旅に出る人が増えれば,リーダーシップは連鎖していく。
現在の競争だけにとらわれていないか。忙しいふりだけをして,「見えないもの」を見ること,大きな絵を描くことを忘れていないか。リーダーシップの旅においては,立ち止まって振り返らないと,見えないものがある。(p. 178)
前に向かって進み続けるのではなく,ときに立ち止まって振り返ってみる。
その標語,そして書名は In Their Time(『時代のなかに』)であり,経営リーダーに,もしも資質めいたものがあるとしたら,それはコンテクスチュアル・インテリジェンス(contextual intelligence),つまり「生きている時代の脈絡を読み取る知性」だとニティンたちは言う。これは環境との相互作用を織り込んだ概念であり,この実践的知性は「どのように時代を意味づけ,現前する機会をつかみ取るかの理解」にかかわる気づきの能力(sensing capability)だ。(p. 186)
リーダーは,時代に敏感でなければならない。
嫌われるのを覚悟して言えば,私は,日本で最も自立していない人たちが,三十代から五十代にかけての中堅エリートサラリーマンと官僚ではないかと疑っている。受験戦争の中で努力を重ね,周囲の期待に見事応えて「よい大学」に入り,「よい企業」や「よい役所」に就職した人々。一見,日本を代表するエリートだが,明確な自分をもち,自己判断,自己責任,自己行動しているかとなると,果たしてどうだろうか。彼らは「よい学校」を出て「よい会社」に入ったというかもしれない。だけど,それは自分自身で評価した上での「よい学校」「よい会社」だろうか。それとも世間でそう言われているからだろうか。その学校を出てその会社に入ったことは,本当に自らの選択だったのだろうか。(pp. 219 - 220)
私は,明確な自分をもち,自己判断,自己責任,自己行動をしているだろうか。
人間力を磨く上で大切なことは,私なりの言葉で言うと,「人の営みに対しての理解と尊厳の念をもつこと」ではないだろうか。(p. 230)
人の営みを大切にする。
ALF (The American Leadership Forum) のプログラムの骨子(p. 248)
- アメリカのリーダーの最大の問題は,自分を知らないことだ。
- アメリカのリーダーの問題は,リーダーシップそのものの自然な姿を知らないことだ。
- アメリカのリーダーの問題は,コミュニティ,国家,研究分野,方法などいつも分断する概念にとらわれ,我々の相互のつながりを表す概念に焦点を合わせないことだ。
- アメリカのリーダーの問題は,世界とアメリカの相互依存に無知で,世界全体を意識する気持ちに乏しいことだ。
- アメリカのリーダーの問題は,価値観を問わないので,いつも「なぜ」「なんのため」を問い忘れることだ。
- アメリカのリーダーの問題は,変化を起こし,今までと違うことが起こるようなチームを創造する方法を知らないことだ。
- アメリカのリーダーの問題は,色々なステークホルダーの大切さ,多元主義の重要さを十分に意識していないことだ。
7 つの命題,問題意識を自分に向けてみよう。
モティベーションを研究した D・マクレランドによると,人間の欲求には「達成欲求」「パワー(権力)欲求」「親和欲求」の三つがある。(p. 253)
モティベーションを高めるときには,「達成欲求」「パワー(権力)欲求」「親和欲求」を意識する。
更新履歴
- 2020年1月3日 新規作成
- 2021年8月7日 加除修正
- 2021年12月18日 章構成を追加