2020年11月8日更新
『ウェブ時代 5 つの定理』(梅田望夫*1,文藝春秋,2008年3月1日発行)を読了。
私は,ビジョナリーたちの言葉の探索を,砂漠での砂金探しになぞらえています。人々が発する膨大な言葉を,私自身の感性のふるいにかけ,最後まで残ったものが文字通り「金言」で,それが私の思考の核となってきました。(p. 9)
未来を見通したり,世界の成り立ちを知るヒントになる言葉が「金言」
エデンの園でイヴがかじったリンゴは,人類に「知の味」を教え,
人類と世界の関係を決定的に変えてしまった。
これが第一のリンゴ。
二つ目がニュートンのリンゴ。
そして今アップルは,
第三のリンゴ,すなわちパーソナル・コンピュータを,
私たちの机の上に置いたのである。
それによって,文化の革命が起こる。――ジャン=ルイ・ガセー(p. 29)
第三のリンゴがアップル・コンピュータ。
念には念を入れる。
念を入れることができる人だけが生き残る。
ゴードンはもう 6 年にわたり,彼が他者やマシンとの間で行ったコミュニケーションのすべて,目にした画像や映像,聞いた音,訪問したウェブサイトなど,ゴードンと世界とのインタラクションすべてを記録しているそうです。人の人生における世界との相互作用の全部を記録し,いずれセキュリティも万全な環境でそれを検索可能にすれば,人間の記憶の拡張ができると考えて研究を続けている。その発想は,5 年先,10 年先の技術の進歩がもたらす可能性空間を,彼がしっかりと把握しているから出てくる発想です。(p. 46)
あらゆるものを記録する,という発想は持つことができた。
でも,その記録したデータの活用方法は,まだ未開の地ではないか。
シリコンバレーの存在理由は「世界を変える」こと。
「世界を良い方向へ変える」ことだ。
そしてそれをやり遂げれば,
経済的にも信じられないほどの成功を手にできる。――スティーブ・ジョブズ(p. 62)
「世界を変える」という夢があれば,挑んでみたくなる場所かもしれない。
それから,とくにテクノロジー事業の場合,中核になるのはタフで優秀な技術者です。技術のことが好きで好きで仕方なく朝から晩までずっとやっていても平気な人たち,極限の状況を楽しみながら,他にない特異なものを生み出すことのできるエンジニアの存在は絶対に欠かせません。(p. 75)
朝から晩まで,技術的な検討を行っていることが幸せだろうが,それだけでは許されない世の中であるのが悲しい。
A クラスの人は,A クラスの人と一緒に仕事をしたがる。
B クラスの人は,C クラスの人を採用したがる。――シリコンバレーの格言(p. 93)
A クラスの人が,一緒に仕事して欲しいと思うような存在になる。
まさにいまのグーグルがこんな雰囲気です。時代の最先端をいく旬な企業には,トリプル A クラスの人たちが集まってきます。80 年代のアップルもそうでした。A クラスの人たちが集まって互いの力を認め合い,そういう人がまた A クラスの人材を引っ張ってきて,チームで切磋琢磨していくことで,その才能がますます磨かれていくのです。(p. 96)
私が所属する会社には, A クラスの人たちが集まっているか。
ファクト・ベースの意思決定がいちばんだ。
その素晴らしいところは階層構造をくつがえしてしまうことだ。
ファクト・ベースの意思決定であれば,いちばん若い下っ端の人間が,
いちばん上の者を議論で打ち負かしてしまうことができる。――ジェフ・ベゾス(pp. 105 - 106)
データを使いこなせる人は,これからの時代にもてはやされるだろう。
反戦の抗議活動,ウッドストック,そして長髪も忘れてしまっていい。
60 年代の真の遺産は,コンピュータ革命だ。――スチュアート・ブランド(p. 117)
抗議活動では,何の革命ももたらさない。
真正の理系人間の「原理から考えて,新しいものを自分でつくればいいだけじゃないか」と考える発想は真似できません。テクノロジーへの取り組み方,面白がり方の度合いが全然違うのです。(p. 125)
テクノロジーへの取り組み方,面白がり方ができるようにしよう。
その興味を忘れてはいけない。
今日の問題を昨日の解法で解いてはいけない(p. 138)
Don't solve today's problems with yesterday's solutions.
同じ問題を解くにしても,昨日と違うやり方をすることで,変化をもたらす。
私たちは非常に複雑な問題を,その問題がどれほど複雑かを
人々に知らせることなく,解こうと試みている。――ジョナサン・アイヴ(p. 166)
複雑な問題を複雑な方法で解くことができても,誰もその方法をとらない。
複雑なものを簡単なものに分解して,人々が複雑と感じないようにして解かせるのは大事。
私たちは,人々がより良い教育を受けて,
より賢くなれるようなものを生み出したい。
それによって,世界の知力・知性は向上するだろう。――マリッサ・メイヤー(p. 184)
教育は大事である。
どんどん広がっていくことを実感できる教育が求められる。
完璧な検索エンジンとは,ユーザが何を探しているか正確に理解し,
ユーザーが求めていることにぴったり合った答えを返すものである。――グーグルの哲学(p. 193)
理想を掲げ,それに近づくようにしていく。
才能ある人々はグーグルに惹きつけられる。なぜなら私たちは彼らに
「世界を変える」力を与えるからだ。――ラリー・ペイジ(p. 197)
「世界を変える」力というのは驕りか。
それともそれだけの手ごたえがあるのか。
羽生さんは,勝ち負け以上に,将棋というゲームがどういう成り立ちをしているのかを突き詰めて理解したいという欲求を持つ,理系の研究者のようなセンスの持ち主です。そのあたりも,ウェブ世界全体の構造を丸ごと解明し尽くしたいというグーグル創業者たちの発想とちかいところがあるかもしれません。(p. 200)
勝ち負けだけならジャンケンでいい。
将棋の世界には何があるのか,探求しようという気持ちを忘れてはいけない。
データを徹底的に集めファクトをしっかり把握したうえで行う合理的な思考,情報共有を徹底したうえでみんなの合意によって行う意思決定,質問によって運営することでつくるイノベーションを生む風土――この三つは新しい時代のマネジメントの黄金則だと私は考えています。(p. 210)
データを分析し,その意味を読み解き,イノベーションを生み出す。
日本人は,社会に対して,個としての自分を明確に提示していく習慣があまりありません。「自分が何者か」よりも,「自分の所属はどこであるか」に重きが置かれてきたからです。ビジネスにおいても,個の魅力や実力での勝負より,組織の看板で仕事をする傾向が全体的には強く,終身雇用制度がそれに拍車をかけていました。現実社会でのそういう土壌が,実名で自己表現をするのに不慣れな社会を助長してきたともいえます。(p. 227)
自分の所属以外でも勝負できる,実名だけで勝負できる人を目指す。
頭が良くって,でも経験のないアンダードッグ(負け犬:未経験なまだ何者でもない若者)が大好きだ。――マイケル・モリッツ(p. 253)
経験したくてたまらないアンダードッグを求む。
5 つの定理
- 第 1 定理 アントレプレナーシップ Entrepreneurship
- 第 2 定理 チーム力 Team Strength
- 第 3 定理 技術者の眼 Technology Mind
- 第 4 定理 グーグリネス Googliness
- 第 5 定理 大人の流儀 The Style of Maturity