2020年1月4日更新
『安倍政権の罠 単純化される政治とメディア』(清水克彦,平凡社新書,2014年5月15日発行)を読了。
しかし他方で,政治の動きに関して自分の頭で考え,理性的に判断しようとする知的な有権者よりも,考えることを面倒と感じ,目新しいことや期待できそうな人に乗っかろうとする有権者にアピールし,その支持を得ようとするポピュリズムを定着させてしまった大きなマイナス面もあると思うのである。(p. 10 - 11)
考えることを面倒と感じる有権者,ポピュリズムに傾倒しないためにはどうすればよいか。
物事に対しては,是か非かでは割り切れないものが山ほどあるものだ。
原発問題で言えば,立地自治体には,ただちに「再稼働」とも「脱原発」とも言えない現地事情があり,名護市をはじめとする沖縄県の自治体でも,普天間飛行場などアメリカ軍基地の移設問題で YES でも NO でもない意見が多数存在している。(p. 13)
是々非々の議論をしてほしい。
その議論を通じて,国民一人ひとりが意見を持つ。
また,二大政党制をとる英国には,総選挙で勝利した政党にすべての意思決定の権限が付与されるウェストミンスター型と呼ばれるシステムが存在し,内閣が成立を目指す法案をほぼ確実に可決させることができるスタイルが根づいている。(p. 24)
ねじれを防止し,政治の停滞を防ぐための紳士協定。
後藤田正晴氏の「五訓」(pp. 36 - 37)
- 省益を忘れ国益を思え
- 悪い本当の事実を報告せよ
- 勇気を持って意見具申せよ
- 自分の仕事でないと言うなかれ
- 決定が下ったら従い,命令は実行せよ
上層部にいい情報しかいかなくなることが問題。
悪い情報こそ速やかに報告する。
「日本人はまだ『成長シンドローム』から抜け切れていません。豊かになれば成長率が鈍化するのは当然です。人口が減少していく社会で 1 % 前後の成長率があれば十分。今,求められるのは,アベノミクスの『成長戦略』じゃなくて『成熟戦略』なんですよ」by 榊原英資(p. 55)
成熟度を増していく戦略を考えよう。
少しずつ豊かな生活に変えていくことが,小さな成長を維持していくことに繋がるのではないか。
第二次安倍内閣が進める経済政策は「トリクルダウン」(trickle down)と呼ばれる理論に基づいている。「トリクルダウン」とは「したたり落ちる」という意味で,大企業を優遇すれば経済活動が活発化し,やがてそれが中小企業や低所得者までしたたり落ちてくるという理論である。(p. 78)
どこかでお金をため込む人や会社が存在すれば,トリクルダウンは成り立たないか。
加えて,タレントやお笑い芸人など,その分野の専門家でもなければ取材経験も乏しいゲストが CM に入る前の短い時間でコメントする「言い放ちジャーナリズム」は,お茶の間の視聴者に考えるという暇を与えず,特定の問題について「何となく YES」「特に理由はないけど NO」といったあいまいな世論を醸成してしまう元凶になっているのではないかと考えるのである。(p. 198)
ワイドショーのコメンテータの存在意義は何だろうか。
コメンテータの言うことは,単なる一意見でしかない。