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なぜドイツは脱原発,世界は増原発なのか。迷走する日本の原発の謎

2019年12月22日更新

『なぜドイツは脱原発,世界は増原発なのか。迷走する日本の原発の謎』(クライン孝子*1著,海竜社,2011年9月13日 第1刷)を読了。

日本共産党の吉井英勝議員が,4月27日の衆院経済産業委員会で,東電が示した資料に目を通していて,「夜の森線」という受電鉄塔一基が倒壊して全電源喪失炉心溶融に至ったのに注目し,「この鉄塔は津波の及んでいない場所にある。この鉄塔が倒壊しなければ,電源を融通しあい全電源喪失に至らなかったはずだ」と指摘したからです。(p. 72)

上記の鉄塔が倒壊していなかったとしても,原子力発電所の所内電源を供給するキュービクルが海水の及ぶ場所にあったならば,電源の供給はできなかったのではないか。

ここで,菅首相を擁護するわけではありませんが,菅首相とすれば,

「長い間,与党だった自民党にべったりの東電が,民主党,しかも市民運動なりあがりの自分に協力するはずがない。なら今回,東電を首相という権力で徹底的に苛めてやろう」

そのために,「当面,震災復興対策や原発事故解決策が遅々として進まない責任を,『東京電力』に押しつけ,全て『東電が悪いこと』にして,逃げ切る。あとは『野となれ山となれ』とシラを切り通そう」と思ったとしても決して不思議でもなんでもありません。(pp. 77 - 78)

いくら首相とは言え,一個人のしがらみだけで,こんなことになっているとは思えない。

ドイツでは,19 世紀の半ば頃から急速に国民教育の充実に着手し始めました。

その原点にあるのは,徹底した実力英才教育至上主義です。言うなれば,天才教育に力を入れたのです。頭脳優秀なる者は飛び級を,そうでない者には落第なり,コースを変え別の道を歩ませます。(p. 168)

とてつもない天才が現れなければ,この世は変わらない。日本では,足並みを揃えることばかりにとらわれてしまっているのではないか。

原子力エネルギーも,そのありがたさを知ってしまうと,「核の恐怖,人類を始め全ての生物にとって,最終的には,絶滅の恐れをもたらすことがある」と認識していても,このエネルギーの魅力には勝てません。(p. 212)

電力会社が原子力発電所を稼働することができれば,一日にして億単位の利益が得られることを知れば,原子力発電所を是が非でも稼働させたいということがわかる。

なぜドイツは脱原発、世界は増原発なのか。迷走する日本の原発の

なぜドイツは脱原発、世界は増原発なのか。迷走する日本の原発の

 

 

*1:1939年旧満州生まれ。ノンフィクション作家。ドイツ・フランクフルト在住。チューリッヒ大学,フランクフルト大学でドイツ文学と近代西洋政経史を学ぶ。EU プレスクラブ,ドイツ・ジャーナリスト連盟会員。滞独 40 年余に及び,独自の取材源をもとに海外からの視点で日本を見つめる鋭い提言に定評がある。