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現役サラリーマンのスキルアップのための読書まとめ

原発と大津波 警告を葬った人々

2019年12月22日更新

一方,科学的知見が積み重なり,設計時には想定していなかった大きな自然災害が原発を襲う可能性があることがわかってきたとき,電力会社や規制当局がどう対応すべきなのか,明確なルールは決まっていなかった。新しい知見に基づいて基準を改訂し,それに照らし合わせても安全かどうかチェックする仕組み(バックチェック)や,原発を新基準に適合するように改修させる(バックフィット)制度がなかったのだ。一定程度のリスクまでは古いままの施設で対応するのか,強制的にバックフィットさせるのか,その判断を誰がどの段階でするのか,それらの情報をどんな形で公開し,どう合意形成していくか,そんなルールも無かった。

結果論として考えると,バックチェックやバックフィットがあればよかったと思う。

しかし,可能性だけで対策をとるのか否か,判断をするのは難しいと思う。

そもそも実態のつかみにくい「安全文化」という言葉を事故や不祥事の原因として何度も持ち出していること自体,責任を曖昧にしようとする意図が見える。これまでの度重なる反省や改革の計画にもかかわらず,なぜ東電は変われなかったのか,その理由が見えない。総括が不十分なまま,「安全文化」という呪文で思考停止に陥り,むしろ組織文化を劣化させ続けたように見える。

「安全文化」という呪文は,今も唱えられている。

ただ,総括が不十分と言われても,人間の為すことの総括を,果たして人間ができるのだろうか。

原発と大津波 警告を葬った人々 (岩波新書)

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