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現役サラリーマンのスキルアップのための読書まとめ

商店街再生の罠――売りたいモノから,顧客がしたいコトへ

地元の商店街が活気を失って久しい。地元の商店街が活気を取り戻すことができるのか考えてみるため『商店街再生の罠――売りたいモノから,顧客がしたいコトへ』(久繁哲之介,筑摩書房,2013年8月10日)を読了。

可哀想な弱者と悪い強者に二分する幻想が既成事実になると,弱者救済は正義と化します。その結果,弱者に「能力と意欲が欠ける」とは誰も指摘できなくなり,弱者救済策は無駄なものまで正当化される罠に陥り,この罠は「3 つの弊害」をもたらします。(p. 11 - 12)

  1. 失敗(商店街が衰退)した理由が正しく認識されていないので,不適切な解決(再生)策が導かれて,いつまでたっても効果が出ない。
  2. 公務員は,まちがった商店街の救済策に,多額の補助金(税金)を投入し続ける。
  3. 商店街は,自立する意欲と能力を失い,補助金への依存度が高まる。

弱者救済の罠を知っておく。

商店街と農業の活性化を真剣に考えるならば,補助金ばらまき施策はやめて,自立を促す施策へ転換を図る勇気ある提案が出て然るべきです。商店街の場合,3 つの大きな効果が期待できます(p. 52 - 53)

  1. 商店街は行政に依存しなくなり「自立する,自分で考える」ように変わる。
  2. 自治体の仕事が「予算の審査・分配」から「利用者と商店主の双方が豊かになる提案」に変わる。
  3. 自治体の予算むだ遣いが大幅に減る。

当たり前のことであるが,行政に依存せず,自立し,自分で考えることから始める。

宇都宮市の餃子と,高岡市のコロッケは共に「家庭消費量日本一」という同じデータ値です。しかし,宇都宮市民は餃子を「自発的に喜んで食べていた」のに対して,高岡市民は「忙しいから,しかたなく家族に食べさせていた」という感情的に大きな違いがあるのです。(p. 101)

宇都宮市の餃子はポジティブなイメージだが,高岡市のコロッケはネガティブなイメージがある。やはりポジティブなものを PR していくべきか。

このように,公務員が作る計画書は「誰もが否定できない,非常に美しい理論」で作文されていますが「公務員自身が理論の通りに,行動する意欲が全くない」のです。公務員が机上で作文した理論的には美しい計画書が,全く実現しない理由がここにあります。(p. 131)

私の会社にも机上で作文した理論的には美しい計画書が散見される。

エスノグラフィ調査は,調査者が先入観を全て排除して,顧客の行動を観察して「仮説やヒントを新たに発見」するものです。視点が「顧客」側にあることに注目しましょう。

一方,アンケート調査は,調査者が「既に仮説や業務目標を所有」していて,仮説や目標の正しさを検証するものです。視点は「顧客」ではなく,自治体など「調査者」側にあります。したがって,アンケート調査結果の質は「調査者が既にもっている仮説や目標の質」で全てが決まります。つまり,調査者が掲げる目標が正しくない場合,調査者が目標を遂行したくて答えを恣意的に誘導する場合,アンケート調査の結果データは「信頼性が低い,むしろ作為的で間違っている」と判断すべきです。(p. 150 - 151)

アンケート調査の前に,エスノグラフィ調査を実施する。

要するに,日本の飲食店は「同類グループばかりが集まり,各グループ間での交流は芽生えない,同類以外は排除する」閉鎖的な店づくりが主流です。(p. 216)

屋台村はどうだろうか。

鉢植え(ガーデニング)の選択と世話など実に「些細な自己裁量の有無」の差が,人の心身状態と交流形成にこれほど大きな影響を与えるのです。

この理論からは,商店街の活性化だけでなく,地域コミュニティの形成にも重要な示唆を得ることができます。すなわち,地域コミュニティを育成する最大の鍵は,市民に「自己裁量の余地」を用意してあげることなのです。(p. 228)

「自己裁量の余地」を用意しておくことで,やらされ感を減らす。