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論文の書き方 澤田 昭夫

2020年6月25日更新

『論文の書き方』(澤田 昭夫,講談社学術文庫,1977年6月10日発行)を読了。

 日本人は,余韻,余情,言外の意味を特徴とする俳句的詩文の領域では世界に誇る伝統と才能をもっています。ヨーロッパで feuilleton (草の葉)と呼ばれる,徒然草的随筆にかけては,日本人は天才的才能に恵まれているとさえ思います。ところがあまりにそのような才能に恵まれているために,われわれは学問的,理論的主張をする場合にも,それをいつのまにか俳句的,徒然草的なものにしてしまう傾向があります。(p. 5)

俳句的,徒然草的なものは,理論的な主張には不向きである。
理論的な主張をする場合には,余韻,余情,言外の意味を排除することを意識する。

『論文の書き方』という同名の本には,有名な清水幾太郎氏のもの(IA13)がありますが,これはどちらかというと高尚な理論書です。それに対し本書は,もっと低俗な実用中心のハウ・トゥーものです。(p. 15)

発行された1977年当時には,パソコン,ましてやスマートフォンは一般的ではなく,現代では,あまり役に立たない実用も多い。
しかし,かつての実用を知ることができる。

 さらに換言するなら,論文を構造的に展開するとは,「主問」 major question (s) ・主要トピックとそれに関連した「副問」 minor questions ・副トピックを手がかりに話を進めていくということです。細かい「副問」にひとつひとつ答えていくうちに,冒頭に提示した「主問」への答えが結びにおいて自然に出てくる,そういうふうに構成された論文が,まとまった,構造的に展開された――レトリックのことばでいえば「話の道筋」 via artis rhetoricae が明確な――論文です。(pp. 105 - 106)

話の道筋を明確にしてから,論文を書くようにしよう。

「読む」には「書く」と同様に一定の技術が必要で,現代の文明社会で「字の読める文盲」が増えつつあるのは,その「読む技術」 art of reading がないがしろにされ,教えられなくなっているからでしょう。(p. 167)

「読む」ことは,大変な作業である。その作業を,他の人よりも少しだけ,うまく,そして早く行うことができれば,差をつけることができる。

 資料集めの時間が足りないときにものをいうのは,平生の読書で頭に入っている資料です。よく「話す」ことのできる人は,平生からよく読み,考える,知識や思想の豊かな人です。(p. 187)

平生の「読む」「考える」は,いつかきっと役に立つ。
知識や思想の豊かな人に近づける。

 美しい論争,討論の前提は,議論の整合性,鋭さということです。よくまとまった,説得力のある議論について英語で「水もれしない」 hold water という比喩的形容があります。証拠資料データから主張命題への発展,一命題から次の命題への,前提から結論への発展がきちんとスキ間なくまとまっていて「水もれ」箇所がないということです。そして鋭い議論は,決して大胆で一般的な命題から成り立つものではなく,例外や限定条件をも考慮した,きめのこまかい命題から成り立っています。(p. 202)

説得力のある議論,「水もれしない」を目指す。
水が漏れてしまうようなスキは与えない。

論文の書き方 (講談社学術文庫)

論文の書き方 (講談社学術文庫)

  • 作者:澤田 昭夫
  • 発売日: 1977/06/08
  • メディア: 文庫